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Cカード講習中の事故の判例に見る、ダイビングインストラクターの過失責任閲覧無制限

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セブ島の魚の群れ(撮影:越智隆治)

講習中の事故はすべてインストラクターの責任なのか

弁護士としてダイビング事故訴訟を担当している中で、「Cカード講習中の事故であれば、すべてダイビングインストラクターの責任だと思います」と言われたことがあります。

Cカードを取得するための講習を受講すれば、安全にダイビングを行うための一定の知識と技術は身に付けることができたと考えられるため、Cカードを取得したダイバーを引率するファンダイビングと、Cカードを取得するための講習では、インストラクターの監視義務の程度は大きく変わると考えられます。

裁判所も、講習中に受講生をロストした事故などについては、インストラクターに注意義務違反(過失)を認めたものが多くなっています。

しかし、司法の注意義務違反の判断も、不可能なことを強いるものではありません。

講習中の事故であっても事故発生が予見できないものであったり、事故発生を回避することが不可能であった場合には、インストラクターには過失は認められず、賠償責任も負わないことになります。

事故の判例
Cカード講習中のエアエンボリズム

講習中に受講生がエアエンボリズムに罹患した事故についての判例があります。

水深13mの地点から浮上する際に、インストラクターはダイブマスターに受講生2名の補助をするように指示をしました。

受講生はキックだけではなかなか浮上できず、水深11mないし12mの地点をうろうろしていましたが、1人の受講生がBCの給気ボタンを押して急浮上を始め、もう1人もほぼ同時に急浮上を始めてしまいました。

ダイブマスターは受講生から1mないし1.5mの場所にいましたが、急浮上を目撃すると、受講生の足をつかまえて、浮上スピードをコントロールし、海面にはダイブマスターが先に、受講生2名が遅れて浮上しました。

インストラクターは全員の浮上を確認するため、受講生らの行動を下から観察しながら最後に浮上しました。

海面に浮上したあと、ダイブマスターと受講生は言葉を交わしましたが、その後、受講生のうち1人の意識がなくなり、エアエンボリズムに罹患したと判断されました。

裁判所の判断は、「インストラクターの責任は問えない」

1.「エアエンボリズムの発症原因」、2.「急浮上によりエアエンボリズムが発症した場合、インストラクターに責任があるのか」などが争点となりました。

この点、裁判所は受講生2名が急浮上をしていること、ダイブマスターが足をつかまえて浮上速度を抑えた後は、ダイブマスターが受講生2名より先に浮上していること、受講生のうち1名だけがエアエンボリズムに罹患したことなどから、エアエンボリズムの発症原因は浮上時の息こらえと推測されるとしました。

そして、ダイビングにおいて息こらえをしないことは鉄則で、インストラクターも何度も注意をしていたことなどから、受講生が浮上時に息こらえをしてエアエンボリズムに罹患したとしても、インストラクターの責任を問うことはできないと判断しました。

また、インストラクターは、ダイブマスターに受講生の浮上を補助するように指示し、その指示の内容も不適切なところはなかったことなどから、エアエンボリズムの発症の原因が急浮上にあったとしても、インストラクターには注意義務違反は認められないとしました。

この判決に対しては、エアエンボリズムに罹患した受講生側から控訴がされましたが、高等裁判所でも同様の判断がされています。

講習中の事故は、すべてがインストラクターの過失というわけではない

「息こらえをしない」というのは、基本中の基本で、たとえ受講生であっても絶対に守らなければいけないルールです。
また、「呼吸を止めない」ということは決して難しいスキルでもありません。

講習中に発生した事故であったとしても、このような誰もができる基本的なルールを守らなかったために事故になった場合に、インストラクターに過失があったということはできないと裁判所が判断したことにポイントがあると思います。

もっとも、基本のルールを守らないために事故が発生した場合すべてにインストラクターが責任を免れるわけではないことは言うまでもありません。
そもそも十分なスキルが身に付いていない受講生に海洋実習をしたことが問題になります。

海洋実習ができるだけのスキルが身に付いているか的確に判断し、また、受講生も「絶対に守らなければいけない」と言われたことは必ず守るという、きちんとした心構えを持ってほしいと思います。

人が本来生存することができない水中世界に入るということは、時には生命すら脅かす危険が潜んでいます。

「お金を払ってツアーに参加しているのだから、インストラクターが守ってくれるだろう」という安易な気持ちは捨て、きちんとしたスキルを身につけていきたいと、自分自身でも思っています。

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