RGBlue「SYSTEM02 Tricolor」「S5」の魅力に迫る〜2025年注目の最新水中ライト〜(第1回)

水中ライトのプロモ動画「RGBlue Tricolor」鼎談。動画撮影の裏側に迫る

2025年9月、RGBlueより新しい水中ライト「SYSTEM02 Tricolor(トライカラー)」が発売されました。

また、発売を記念し制作されたプロモーション動画「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」が話題になったのも記憶に新しいかと思います。この動画を作成したのは、RGBlueの水中ライトをずっと愛用してきた水中写真家 ・中村卓哉さんと自然写真家・関戸紀倫さんのお二人です。

今回、この動画制作をしたお二人に加え、RGBlueの久野義憲さんにお集まりいただき、鼎談が実現。なぜ、この二人が作ることになったのか、そして、この動画の見どころや裏話をお伝えしながら、RGBlueの水中ライトの魅力に迫ります。

久野義憲さん、中村卓哉さん、関戸紀倫さん

左から、久野義憲さん、中村卓哉さん、関戸紀倫さん

ボタンひとつで3つの色温度に切り替え可能
「SYSTEM02 Tricolor(トライカラー)」

「スーパーナチュラルカラー(5000ケルビン)」「プレミアムカラー(4200ケルビン)」に加え、「クリスタルカラー(6500ケルビン)」が追加された。最大光量4200ルーメン。一台のライトで接続した全てのライトを同時にコントロールできるマルチリンクシステム搭載。
水中ライト「SYSTEM02 Tricolor」

水中ライト「SYSTEM02 Tricolor」


RGBlueの水中ライトとの
出会いと使い続ける理由

――まずは、RGBlueとの出会いと使い続ける理由を教えてください。

中村卓哉さん(以下、中村さん)

初期の「SYSTEM 01」から使わせていただいています。
父の中村征夫と一緒にテレビの動画撮影をしていた際、色々なライトを試したところ、別格にRGBlueさんの色が良かった。

今でこそ、動画でもRAW現像のような形で色の調整ができますが、当時はフィルムもまだ残っていましたし、ほぼ撮って出しでした。そのため、色がちゃんと出るライトを求めていたんです。その点、RGBlueさんのライトは、色の再現性が高い!以来、ずっと新製品が出るたび使わせていただいています。

写真撮影においても、今まで「ワイド写真の撮影はストロボ」という考えがあったのですが、ライトを使うとすごく自然に撮れます。

RGBlueの水中ライトとの歩みを語る中村卓哉さん(写真左)

中村さん

2018年に『辺野古ー海と森がつなぐ命』という写真集を出版しました。そこには、50匹以上のハマクマノミが集まるクマノミ城を長年に渡って定点的に撮り続けた写真を並べましたが、ずっと自然な色合いで撮り続けたいじゃないですか。

中村さん

手前だけ明るくて、奥が暗いような写真よりは、少し遠くまで魚の色も含めて同じトーンを出したい。潜った時に見たままの奥行き感のある風景をそのまま残したいという思いにフィットしました。今では、マクロでも毎度使っています。

――動画から始まって、今では写真もライトで撮られているのですね。さて、関戸さんのRGBlueとの出会いを聞かせてください。

関戸紀倫さん(以下、関戸さん)

いつだったかな……駆け出しでまだ機材にそんなにお金をかけられない頃、久野さんをご紹介いただいたのがきっかけです。

最初はマクロのフォーカスライトとして使っていたのですが、だんだん映像も撮るようになって2灯に。特に、映像の撮影では、シーンによってはライトが必須になってきます。今では、ワイドの写真撮影もライトで撮影していますね。

使い続けている理由としては、卓哉さんとほぼ一緒です。自然そのものを見たままの姿で伝えたいので。……って言っても、僕、他のライト使ったことないんですよ。(笑)駆け出しの頃から久野さんにお世話になっているので、そういったご縁を大切にしたいんですよね。

一方で、未だに使い続けているのは、色味に関して不満を持ったことがないからです。どんどん新しい製品が出てきますし、今回の動画についても関われてすごくうれしいと思っています。

RGBlueの水中ライト一筋の関戸紀倫さん

――ありがとうございます。久野さんにとって、プロの写真家・カメラマンはどういった存在でしょうか?

久野義憲さん(以下、久野さん)

そもそも、最初のコンセプトとして道具として洗練したものを作りたいというのがあります。それはどういうことかと言いますと、プロフェッショナルに使い続けられ、愛用されるものでありたい。

一方で、プロだけのものになってしまうと、製品化というのはやっぱり難しくなってしまうため、その落としどころっていうのが今の製品です。
水中写真を趣味でやっている方々も、プロと同じ機材を使いたいと思う方が多いですよね。その点、プロだけでなく一般の方も使えるものでないといけません。

先ほど、紀倫さんがとてもありがたいことを言ってくれたのですが、それって僕らにとっては結構なプレッシャーです(笑)。人間関係で信じて使ってくれている人を、裏切れないじゃないですか。だから、下手なものは作れません。

お二人、あるいは、プロカメラマンの方々の関係性で言うと、彼らがいなかったら、これを作る意味はないんですよ。カメラとライトがあって、プロの写真家・カメラマンがいて、はじめて映像や写真が生まれていく。

水中写真や水中映像って、人が通常入れないところの作品になるわけですから、それが学術的な価値にも繋がっていく。極端な話、宇宙でやっていることと同じようなことをやっているわけです。なので、僕はプロの方を見ながらモノ作り をしたいと思っています。欠かせない存在です。

水中写真や水中映像への思いを語る久野義憲さん(写真左)

――ブランドとしてプロの信頼を裏切れないし、プロはそれを作品で返していかねばならない。シビアな関係にも見えますが、互いに信頼し合う、なくてはならない存在なのですね。

中村さん、関戸さんのお二人が
動画を作るきっかけ

――2025年4月のマリンダイビングフェアで初公開された「SYSTEM02 Tricolor」のプロモーション動画「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」。2025年9月にはYouTubeにも公開され、誰もが見られるようになっています。

そもそも、どういった経緯で制作することが決まったのでしょうか?

久野さん

僕からオファーしたんです。色々な経緯があって、この形に。

中村さん

去年、NHKのワイルドライフという番組で、長期間パプアニューギニアのロケで紀倫くんと一緒だったんです。使っている機材も同じだったし、自然をナチュラルなテイストで撮るというところも似ているなと感じていました。

ワイルドライフ以外にも、何か形に残る作品づくりをテレビ以外でやりたいね、と言っていたところに久野さんからお声がけいただきまして。紀倫くんとやりたいと申し出ました。

構成と編集は紀倫くんにお願いしました。1つの作品を2人で撮るとなると、どうしても色のトーンやコントラストなど、調子が合っていないと作品として成立しないんです。海の色が変わっていたり、生き物の色が違ったりするとおかしいので、その辺の調整もお願いしました。

久野さん

今、卓哉さんが言ってくださったとおり、2人で作って欲しいなんて依頼をしても、無理だと断られるのが普通です。でも、作ってくれた。

――関戸さん、編集や調整は大変でしたか?

関戸さん

いやいや、本当、僕もテイストが似ていると思いますし、パーフェクトな素材が集まってくる。それをどう料理するかという作業でしたが、全然大変な感じはなかったですね。結果、本当に伊豆大島でよかったとすごい思っていて。場所については、迷いましたよね。

中村さん

そうだね。マリンダイビングフェアで発表したいというタイミングもあったり、お互いのスケジュールの都合があったり。ただ、伊豆大島が一番合うなと感じていました。

この「SYSTEM02 Tricolor」の色の変化を活かすには、マクロもワイドも撮れる海がいい。伊豆大島の海は、様々な色彩が海の中にありますし、2人のナチュラルなテイストも活かせますから。ただ、タイミング的に、ライトはまだ試作品だったんですよね。マルチリンクシステムとかはなかった。

久野さん

そうですね、マリンダイビングフェアで発表した時でプロトタイプだったので、それより前ですから……、あまりクローズアップして撮影しないでねとリクエストしていました(笑)。

「また2人で作品作りがしたい」という思いがきっかけに

水中ライトの映像が
陸からはじまる理由

久野さん

あともう1つリクエストしていたのが、「2人を撮り合って欲しい」ということです。見た方が、「自分もいつか同じようなことをやってみたい」と思っていただくには、彼らが撮っている姿を見せていただくのがいいと思いました。

――お二人それぞれの撮影シーンもありましたが、二人一緒に写られている映像もありましたよね?

中村さん

そうそう、そればっかり(笑)。
あれは、誰かに頼んだのではなく、自分たちでドローンを飛ばして撮影しました。

関戸さん

卓哉さんが新しいドローンを導入されたところだったので、メインで使わせていただきました。追尾モードで撮ったりしたのですが、木の間を通ってヒヤヒヤしたり!

――水中ライトのプロモーション動画が、陸の映像から始まるというのは、新鮮ですよね。

関戸さん

そもそも、最初に久野さんから曲の候補をいくつかいただいて、そこに映像をのせる形で作ったんです。一方で、水中ライトとはいえ、海だけだと物足りなくなるなと、陸も入れたいと提案しました。久野さんなら、話を聞いてくれると思って。

久野さん

全然、違和感はなかったですよ。基本的に自然光が好きでリスペクトしていますから。

僕らは、RGBlueの水中ライト以外にも夜に雰囲気が良くなるポータブル照明、Ambientecを作成していますが、水中と夜という、いずれも自然光が当たらないところを照らすものを作っているんですね。ただ、光に関して言うと、自然光が一番好きなので(笑)。

関戸さん

僕としては、「えっ」っていう引っ掛かりが欲しかったんです。マリンダイビングフェアという場で、思わず立ち止まって見てくれるようなもの。それで、もうはじまりは海じゃないなと思い切った。

意見を交わしながら、動画の構成を詰めていった

中村さん

紀倫くんも自分も、「森から海につなぐ」というテーマを持って日々撮影しています。ドローンで俯瞰の陸上の画からはじまることで、自分たちらしさみたいなものも出るのではないかと。

そうしたら、紀倫くんが「裏砂漠を歩きませんか?」と。「それやろう!」となったんですが、いや、辛かった(笑)!

関戸さん

裏砂漠は、三原山の東側一帯に広がる、黒い火山岩が広がる場所です。片道1時間以上かかるハイキングコースにもなっています。僕、タンク背負って撮影するつもりだったんですけど。マジでやんなくてよかった(笑)。

伊豆大島の裏砂漠(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

こういった体力的な大変さもありつつ、撮影日数の少なさも課題でした。二人とも滞在していたものの、一緒に潜れるタイミングは2日程度。この朝焼けも絶対撮りたくて、人がいない時間に狙って(笑)。

朝焼けのシーン(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

中村さん

前日、とある生物のハッチアウトの瞬間を撮影するためにずっと夜まで粘って撮影していたので、寝ていないんですよ。でも、天候に恵まれて本当によかった。

3色を切り替えながら
よりナチュラルに水中映像を撮る

――次に水中撮影のことをうかがいたいのですが、「SYSTEM02 Tricolor」だからこそ撮影できたカットはありますか?

中村さん

最後の方に出てくるアカハタのアップの写真かな?撮影時、3通りの色を試しているんですよ。プレミアムカラーだと赤みがつよく出るかな、スーパーナチュラルかな、クリスタルかな、と。

アカハタの写真。プレミアムカラーを使用(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

陸上と同じく、「カメラの色温度を変えてしまえばいいじゃん」という考えの人もいます。しかしそれでは、手前の被写体だけでなく、背景の海の色も変わってしまうんですよ。

特に、ワイドマクロ的な画では顕著に出ます。手前にカエルアンコウ。うしろには、青い海。この日は、透明度が高かったので、うしろの海の色は変えず、このままにしたい。そんな時に、海の色そのままに、手前の色だけを変化させられます。

カエルアンコウ。スーパーナチュラルカラーを使用(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

関戸さん

実は僕、久野さんにもっとブルーの強いものをリクエストしていて。なぜなのかと言うと、今、卓哉さんがおっしゃっていたとおり、手前の被写体の赤みが強くなってしまう時、カメラでホワイトバランスを合わせると、やはりうしろにも影響が出てきてしまうんですね。このホウライヒメジのように、もともと赤い魚はプレミアムカラーだと赤みが強くなってしまって、奥のブルーが緑っぽい感じになってしまう。

ホウライヒメジ。新色クリスタルカラーを使用(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

中村さん

そうですよね、真っ赤になります。でも、クリスタルカラーにすることで、真ん中の白いトサカのクリア感も出ています。

久野さん

トサカは赤く写りますもんね。

関戸さん

これ、Toughシリーズとかで例を出すと、すごく納得していただけるんじゃないかと思っています。赤く出てしまっている写真を見ることが多いので。

久野さん

さらに青みの強い光か……実は、技術的には10,000ケルビンくらいまではいけるんです。う〜ん、光量が……でも、これとこれを繋げれば……ちょっとやってみようかな。

――何やら、実験がはじまりそうですね(笑)。

マルチリンクシステムをはじめとする
「SYSTEM02 Tricolor」の新機能

――ボタンひとつで、全てのライトの設定が変えられる、マルチリンクシステムが導入されるなど、色以外にも様々な点が進化しました。使用感はいかがですか?

中村さん

マルチリンクシステムはもう、絶対に必要でしたね。今回の撮影では2灯でしたが、4灯使ったりする時に、1個操作するだけで全部変えられるというのは、本当にずっと欲しかった!

マルチリンクシステム

あと、今までのものより1.6倍の光量が出る。ずっと最大出力を使うわけではないのですが、役立ちます。例えば、ハナダイの群れがサンゴの上にばーっと群れていて、太陽が逆光だったりすると、なかなか色が出にくいじゃないですか。そういうところで、最大出力を出してみると、色が全然出る。

関戸さん

僕は、シンプルなんですけど、今、どの色温度になっているのか、パッと見て分かるところ!

左から、クリスタルカラー、スーパーナチュラルカラー、プレミアムカラー

そして、色温度を変えるボタン。
僕は人差し指で電源を入れて、中指で光の強さを操作しているので、そこに色温度を変えるボタンが親指の位置にできて。基本的な操作方法を変えず、シンプルにボタンを追加したというのがいいですね。

写真右横が調光ボタン

久野さん

他社のものだとデジタルで表示したり、ダイヤルだったり色々ありますが、パーツを増やせば増やすほど、故障や水没のリスクが高くなるんですね。外部に露出しているボタンって、結局ライトの本体を貫通しているわけで、防水機能が破綻すると水が入ってしまいます。

やっぱり道具としては故障してはいけません。そのリスクを考えると色々なものを増やすには非常に慎重にならざるを得ません。そこをどうやったら最小限で、我々が実現したい機能ができるのかということは考えぬきましたね。

2人でだけの撮影に四苦八苦
ぜひ細部まで見てほしい

――最後に撮影時に大変だった点や裏話を聞かせてください。

関戸さん

いや、寝不足の卓哉さんをめちゃくちゃ歩かせてしまって……(苦笑)。

中村さん

ディレクターがいて、ドローンパイロットがいて、という撮影ではないですからね。全部、二人でやるわけです。ドローンを飛ばしっぱなしにして、カメラを回して、二人でタイミングを合わせて動く。それを何回も、ね(笑)。

関戸さん

山の上からはじまって、二人が出会って、ラストで海に行くよというストーリーなのですが、特に出会うところのタイミングが難しくて。「ちょっとずれてます!」とかって、何度も。

中村さん

あと、紀倫くんがぽつんと歩いているやつ、小さい画面だとあんまり見えないんだよね。

久野さん

本当だ、スマホだったら見えないですね(笑)。

関戸さんを探せ(「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」よりキャプチャー)

関戸さん

そうっすね。卓哉さんも(笑)。広い砂漠のところをぽつんと歩いて欲しくて。位置取りも難しかったですね。

中村さん

お互い離れた位置だったから、大声で「もうちょっとこっちへ〜〜!」「ここでいいですか〜?」ってね。

関戸さん

でも、足跡がついていないところで、ひいた画が撮れて良かったです。

久野さん

改めてじっくり見ていただきたいですね。ぜひ、大画面で!

最先端の水中ライトを用いて
これから生み出される作品に期待

鼎談を終えた3人。まだまだ話は尽きない

取材中にも、試作や実験のリクエストやアクセサリーのアイデアが飛び交い、水中ライト開発の最先端を垣間見させていただきました。

そして、お話を聞くほどに、「RGBlue Tricolor Takuya Nakamura x Kirin Sekito Izu Oshima」は、この3人でなければ生み出されなかった作品なのだなと実感。今後、「SYSTEM02 Tricolor」を使って、どんな作品が生み出されていくのか、楽しみです。

次回は、今年RGBlueから発売された2つの水中ライト 「SYSTEM02 Tricolor」とS5について、久野さんに詳しくお話をうかがいました。

お楽しみに。

お問い合わせ先
RGBlue

Sponsored by RGBlue(株式会社エーオーアイ・ジャパン)

光の三原色「RGB」と海の「Blue」から名付けた水中ライト「RGBlue / アールジーブルー」。1999年の企業設立以来その多くを水中撮影機材OEM開発に力を注ぎ、2013年にダイバーのための理想的な水中ライトを追求するブランドとして「RGBlue」が誕生。まだ見ぬ未知の景観や生物にもっとも太陽光に近い光を当て、色彩が失われる水中の色を届ける。

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

登録
writer
PROFILE
本とWEBの編集者。月刊誌やムックの編集を経て、WEB編集へ。スクーバダイビング専門メディア「オーシャナ」「スクーバモンスターズ」元編集長。現在は、児童書、写真集、WEB記事の編集など、幅広く活動中。
FOLLOW