西伊豆・大瀬崎で「リュウグウノツカイ」と「ザトウクジラ」が同日に現る
国内有数のダイビングスポット、静岡県西伊豆の大瀬崎が、今、にわかに信じがたい生物の目撃ラッシュで沸騰している。
12月10日にリュウグウノツカイが出現したかと思えば、13日には深海性のテンガイハタに加え、昼は深海に潜むソデイカなどの大型浮遊生物が続々と登場したのだ。そして14日、その興奮をさらに上回る出来事が起きた。
大瀬崎をホームグラウンドとするネイチャーイン大瀬館の若松氏によると、14日15時頃、湾内に巨大なザトウクジラ(推定)が2頭も姿を現したのだ。クジラは15分ほど湾内を悠然と遊泳し、先端方面へ泳ぎ去ったという。大瀬崎でのクジラ目撃は2年前の10月以来となる。
陸から撮影されたクジラ(撮影:ネイチャーイン大瀬館)
さらに、同時刻に先端を潜っていた浦安のダイビングショップ・トゥルーノースのチームは水中からの撮影に成功したという。
水中から撮影されたクジラ(撮影:トゥルーノース)
トゥルーノースのガイド・鈴木氏によると「水深25mのオオウミウマをゲストに1人ずつ紹介している最中に、人数確認しようとして少し上を見たら、水深15mくらいのエリアに巨大すぎる影を見つけて、よく見たらクジラでした!」とのこと。
たまには上を見上げてみるのも良いのかもしれない。
同時多発!奇跡のトリプルフィーチャー
特筆すべきは、このクジラ出現とほぼ同じタイミングで、水面付近では再びリュウグウノツカイが目撃・撮影されたことだ。

湾内の水面近くを漂うリュウグウノツカイ(若松氏撮影)
さらに、同じ水面下では、世界的にも珍しいクサアジの撮影も行われていた。大物、深海魚、世界的珍種という「奇跡のトリプルフィーチャー」が同時に発生したのである。

同じく水面を漂うクサアジ(松嵜氏撮影)
「クジラが出たと陸で皆さんが叫んでいるとき、私のチームは水面で世界的にも珍しいヒメクサアジを撮影していました。その隣ではリュウグウノツカイを撮影しているチームもいました。何が出るか何が起こるかいつだってわからなくてワクワクします!」。
現場の興奮を伝える若松氏のコメントが、大瀬崎の海が持つ無限の可能性を物語っている。
土曜日のビッグサプライズ・テンガイハタ
土曜日に登場したテンガイハタも、今回の目撃ラッシュの主役の一つだ。この優美な深海魚は、自然写真家の関戸紀倫氏によって撮影された。

ナイトダイビングで撮影されたテンガイハタ。その日に目撃したのは関戸氏のみとのこと
なぜ奇跡は起こるのか
深海性の「浮遊系」生物から、ザトウクジラのような「大物」まで、これほど多様な生物が短期間で集結する背景には、駿河湾の特異な環境がある。駿河湾が深い海域を有し、冬になり水温が下がると、深海から栄養塩を多く含んだ海水が上昇する湧昇流が発生する。これが深海生物を連れてくる一因と考えられる。
また、大瀬崎が湾になっていることで外洋に面した場所と違い、大きく荒れることが少なく、生物が一時的に留まりやすいことも要因の一つかもしれない。過去の例から、今回目撃されたクジラも数日間にわたり沼津や伊豆地域で見られる可能性があるという。
海の神秘を全身で感じられる大瀬崎から、今後も目が離せない。
取材協力:ネイチャーイン大瀬館(Instagram)、トゥルーノース(Instagram)

