静かな幕開けと、北に潜むダイナミズム。シミラン諸島、北上するダイブクルーズ紀行
こんにちは! 三宅健史(たけちゃん)です。
皆様、2025年のダイビングライフはいかがでしたでしょうか。久しぶりのダイビング記事となりますが、11月末からタイのシミラン諸島クルーズへ行ってきたので、ダイブクルーズの様子や気になる海の中をご紹介します。ちなみに私自身、人生2度目のダイブクルーズとなります。ご存じの方も増えてきていると思いますが、私はよく船酔いします! そういった意味でもダイブクルーズは少し敷居が高いのですが、いざ乗ってしまえばゆったりとした時間に身を委ね、ただ海の青に包まれた幸せだけが残る時間となりました。
ここシミランでは1本1本のダイビングがまるで写真集の1ページのようでした。ダイバーにしか味わえない「特別な青」が待っているので早速紹介したいと思います。今回は、Big BlueさんのBlue Dolphin号に乗船し、ガイドの大村さんと神子元ハンマーズから研修に来ていた陽夏さんにお世話になりました。また、今回の旅のバディは鹿児島でフリーのインストラクターとして活躍する裕介さんです。

中央が大村さん、右奥が陽夏さん、右下が裕介さん
ビッグブルーのシミランクルーズツアーはこちら(DIVE NAVI)
アンダマン海に浮かぶ、9つの蒼き島々
シミラン諸島とは、タイ南部・アンダマン海に浮かぶ9つの島々からなる国立海洋公園で、毎年10月から5月の乾季のみオープンする特別なエリアとなります。「シミラン」とは、タイ語で“9つ”を意味する言葉に由来し、島ごとに異なる魅力を持ちます。白砂のビーチと透明度の高いアンダマンブルーに包まれ、ダイバーにとっては東南アジア屈指の海といわれるスポットでした。保護区域として厳しく管理されているため、陸も海も豊かな自然が残り、ダイビング中の着底はNGとなります。手つかずの自然、ゆるやかな時間、そして潜るたび違う表情を見せる海、これらすべてがシミラン諸島を「シーズンに一度は訪れたい海」として特別な存在にしていると感じました。
ダイブクルーズ日程について
今回はエス・ティー・ワールドさんの4泊14ダイブ付6日間のツアーに参加しました。
下記が旅程となります。
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1日目(11/27)
羽田(8:50発)→シンガポール (シンガポール航空)
シンガポール→プーケット(17:10着) (シンガポール航空)
プーケット空港→カオラック方面へ Blue Dolphin乗船(19:00着)
夜のうちにシミラン諸島へ移動
2日目(11/28)
・#1 DIVE @Hideaway (07:00-)
・#2 DIVE @West of Eden (10:15-)
・#3 DIVE @ThreeTrees (14:00-)
・#4 DIVE @Donald Duck Bay (17:30-)
3日目(11/29)
・#5 DIVE @North Point (07:00-)
・#6 DIVE @Koh Bon West Ridge (10:15-)
・#7 DIVE @Koh Tachai Pinnacle (14:00-)
・#8 DIVE @Koh Tachai Pinnacle (16:30-)
4日目(11/30)
・#9 DIVE @Surin Ao Pakkard (07:00-)
・#10 DIVE @Richelieu Rock (10:15-)
・#11 DIVE @Richelieu Rock (14:15-)
・#12 DIVE @ Richelieu Rock (16:30-)
5日目(12/1)
・#13 DIVE @Koh Bon West Ridge(07:00-)
・#14 DIVE @Koh Bon Pinnacle (10:00-)
Koh Bon島から港へゆっくり移動(16:00着)
モーティブコテージ @カオラック(16:30着)
6日目(12/2)
プーケット(9:10発)→シンガポール (シンガポール航空)
シンガポール→羽田(21:40着) (シンガポール航空)
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プーケット空港に到着

Blue Dolphin号移動マップ
プーケットに到着した夜にBlue Dolphin号に乗船し、寝ている間にシミラン諸島へ移動してくれました。実は今回の旅日程、事前に風を見る限りポイントまでいけるか怪しいくらい荒れる予定だったのですが、揺れたのは初日の夜移動だけでした。机に置いてあったタンブラーが夜中に落ちたり、床に置いてあった荷物が滑ったりで眠りの浅い初夜とはなりましたが。船酔いする私は、タイの酔い止め薬をいただき、それを飲んで乗り越えました。船には常備されているのは、船酔いダイバーとしては安心、感動!
それでは、Blue Dolphin号と幾つかのダイビングポイントをご紹介したいと思います。
アンダマン海を走る船Blue Dolphin号とは
2022年より新たな催行されたBlue Dolphin号は、ダイブクルーズ船では平均より少し大きめのサイズで、ゲスト定員を少なめの18名に抑えたデザインとなっています。実際に乗って4泊5日を過ごすとゲスト同士も自然と会話が増え、最後にはみんな顔見知りになって仲良くなれるというのもちょうどいい人数だからでしょうか。

Blue Dolphin号:HPから画像引用
私たちが利用した部屋は2名1室でキャリーケースを広げるのに十分な空間があったのはとてもよかったです。枕元にも充電スペースがあり、細かいところまでデザインにこだわっているのを感じる空間でした。

シンプルで清潔感のある2名1室の部屋
ダイビングの休憩中は、デッキにあるビーズクッションでのんびり過ごしたり、夜はお酒やフリードリンク片手に大画面に写真を投影して談笑したりしました。

晴れた日はとても気持ちがいい船のデッキ

冷房の効いた心地いい船内
そして朝昼晩とご飯がとても充実しており、何を食べても美味しかったのも嬉しいポイントですね。ついつい食べ過ぎてしまうので、帰ったら身体絞らないといけないね、などと30代らしい会話もありました(笑)。

食べ過ぎる30代 裕介さんと私

豊富なメニュー。特にココナッツ風味のヌードルがおいしかった

整えられたダイビングデッキ。ここから小ボートに乗ってポイントへ向かう
癒しの海から命の鼓動へと向かう海
ここからは潜ったポイントを写真を交えながら一部ご紹介したいと思います。シミラン諸島から始まり、北へKoh Bon、更に北へKoh Tachai、また更に北へSurin島へと向かう道中を想像いただきながら写真の変化も楽しんでいただければと思います。
ちなみに水温は平均28度ほどありましたが、2㎜のタッパーとサーフパンツで潜っていた私は寒かったです(笑)。現地のガイドさんたちはフルのウェットスーツを着ていました。ご参考までに。また、全ダイビングでナイトロックスを使用しました。割と平均水深が深く、面白いポイントは最大水深が25m前後が多いのでゆっくり楽しみたい方にはオススメです。
・揺らぐ光と小さな影が織りなす、穏やかな時間(#3 DIVE @ThreeTrees)
シミラン諸島はシーズンインしたばかりということで、小さくキラキラした命がたくさんお出迎えしてくれました。たくさんのスカシテンジクダイがソフトコーラルを覆い、そこを餌場とするハタがゆったり泳いでいる様子がとても穏やかな時間でした。シーズンとしてはだいぶ早期のタイミングで来てしまったので海の中はどうなんだろうか?と行く前に思っていたところはあったのですが、シーズンインらしい素敵な光景を見ることができました。

カクレクマノミと根を覆うスカシテンジクダイ
ここは平均水深17m、最大水深23mのポイントで、とても大きなカイメンがあるのが特徴の一つだと大村氏は話してくれました。ダイバーを入れると更に大きさが伝わりそうですね。周りにはソフトコーラルが多いので一緒に撮るとカイメンがより異様な感じに撮れるのではないでしょうか。

巨大カイメンの周りを舞うキンギョハナダイ

俯瞰して撮影したお化けカイメンとソフトコーラル
・色鮮やかなソフトコーラルと大物の予感(#6 DIVE @Koh Bon West Ridge)
続いてはKoh Bonのポイントになります。平均水深18m、最大水深28mでした。ここではなんと! 前日!! ジンベエザメが出たそうです!!!。
抑えられない期待に胸を膨らませ潜りましたが、残念ながら遭遇することはできませんでした。落胆もありましたが、その悔しさが次の海への期待をさらに膨らませてくれますよね、ポジティブ大事です。
ただここを潜ってみた率直な感想は、ジンベエザメが出なくても魅力劣らない見どころがたくさんありました。
一つ目は滝つぼと呼んでいた浅場になります。うねりがあると海水が引き込まれたり押し出されたりして迫力ある写真が撮れます。是非ダイバーさん絡めて撮ったら楽しいのではないでしょうか。

バディの裕介さんと一気に押し出される海水
二つ目はソフトコーラルがとても綺麗でした。淡いピンクと黄色が混ざったような小さなソフトコーラルが密度濃く生い茂っており、そこをスカシテンジクダイが覆いかぶさるように共存していました。

ピンクのソフトコーラルとスカシテンジクダイ&キンメモドキ集団

黄色のソフトコーラルとダイビングボート
・魚影が濃くなり、またしても大物の予感(#7 DIVE @Koh Tachai Pinnacle)
ここKoh Tachai島のPinnacleとは離れ根という意味のポイント、平均水深16m、最大水深は28mでした。流れるときは少し泳ぐポイントのようですが、残念ながら流れはほとんどなく穏やかな海の中でした。ただ、小魚は多く、それを狙う回遊魚のロウニンアジやカスミアジが貫禄を出しながら泳いでいました。

小魚を悠々と狙う回遊魚たち
少し水深を落として25mまでいくと透明度はあまりよくなく、少し暗かったです。そんな暗い中目を凝らすと、大きな翼を羽ばたかせながら大物が現れました。マンタ!!!。しかも石垣島でよくみるナンヨウマンタではなく、ジャイアントマンタ(オニイトマキエイ)でした。私がいた方から現れ、少し観察して気づきました。
こちらではナンヨウマンタの方が逆にレアのようですが、私は見たことがないので初めての遭遇でした。予期せぬ出会いがあるのは本当に嬉しいことですね。みんなで水中ガッツポーズでしたが、あっという間に通り過ぎて行ってしまいました。

初めましてのジャイアントマンタ
・私史上最大の魚影ポイント、命の鼓動を感じました(#10 DIVE @Richelieu Rock)
ダイバーが憧れる地にようやく到着!クロワッサンの形をした地形のポイントとなります。平均水深16m、最大水深25mでした。のんびり回っても半周はできるのでそこまで広くないポイントになるのですが、ここに回遊魚が大集合しています。

Richelieu Rockのポイントマップ
口がとがった狩り上手なキツネフエフキのおこぼれをもらうことを目的に、他の種の魚(ツムブリ、ロウニンアジ、カスミアジ、アンダマンアジ、コガネシマアジ)が群れに混ざるようになり、異種混合の回遊魚連合軍が生まれたそうです。ちなみにキツネフエフキの体色が変わるのは興奮色のようです。海の中で気づいてかっこいい!!って思ったので通常バージョンと混ざっている所を狙って撮りました。

キツネフエフキを中心とした回遊魚連合軍
ハンティングされる小魚たちは、ヒメタカサゴ、バナナフュージュラー幼魚、カマスの幼魚、スカシテンジクダイなどになるのですが、ダイバーの姿を覆い隠すほどの数がいて、小魚がざわざわと動き出すとハンティングをする連合軍が押し寄せてきます。理想としては小魚の躍動感と回遊魚の存在感が両立するようなイメージで撮りたいのですが、、小魚があまりにも多すぎて視界をあっという間に覆ってしまいます。回遊魚と一緒に撮るのが非常に難しかったです。小魚、邪魔だよー!!!!って感じです(笑)。

小魚大スプラッシュ

狩る側と狩られる側。自然の厳しさも垣間見れます
透明度があまりよくなかったのですが、根にはソフトコーラルもたくさんあり、栄養が豊富な海なんだなと感じましたね。

綺麗なソフトコーラルを添えて

真ん中にいるのは固有種のトマトアネモネフィッシュ

定番のキンセンフエダイ
全ダイバーが一度は潜ってみたい海というのも本当に納得のものでした。ダイバー人生でこれ以上魚に囲まれることはないんじゃないか?と思うくらいの魚影でした。是非とも次回は青い海で透明度が良い時に連合軍を目いっぱい広く撮影したいものです。
・小さな命に出会うアンダマンブルー物語
忘れちゃいけないのがインド洋だからこそ出会える環境や固有種ですね。個人的にはマクロ撮影も大好きなので紹介させてください。
まずは個人的に大好きなカエルウオのルボックスブレニーです。イシガキカエルウオとかなり似ているのですが、真上から見ると口があって顔みたいに見えるのが特徴的でした。カエルウオは表情が豊かなのでついつい正面から撮りたくなりますが、今回は真上からも撮影しました。

珊瑚に囲まれたお家に住むルボックスブレニー

イバラカンザシの周りで遊んでいたルボックスブレニーを真上から
続いては、砂地にいたオーロラパートナーゴビーです。着底禁止のため砂地での撮影は難易度が高いですが、ミッションインポッシブルのワンシーンのような気持ちで絶対に着くものかという気持ちで向き合いました(笑)。 伝わりますかね?横にはコトブキテッポウエビもいましたが、なかなかシャイな子だったので撮りきれずでした。黄色が綺麗な子でした。

オーロラパートナーゴビーの正面とシャイなコトブキテッポウエビ

オーロラパートナーゴビーの横姿
ベニハゼ系もド派手な子がいました。鬼滅の刃に出てくる宇随天元かと思いました。顔の部分がストライプになっており、名前もストライプヘッドドワーフゴビーといいます。

ド派手なストライプヘッドドワーフゴビー
緑のきれいなダイオウサンゴの上にちょこんとセスジウミタケハゼが乗っているシーンもたくさん見れました。上から撮るか正面から撮るか?色々な構図で撮るのを楽しめるかと思います。

私は上から撮るのがアーティスティックでハマりました
シミラン諸島というとワイドの印象が非常に強かったですが、ポイントによっては穏やかな海の中でゆっくりと撮影できるポイントもあったので、よくばりにどちらも楽しんでみてください!
最後に
シミランクルーズでのダイビングは個人的にはとても相性がよかった海だと感じています。
私のような癒し系の海も好きだけど、時には大物も狙ってみたいというダイバーにはうってつけのクルーズなのではないでしょうか。シミランクルーズは他でいったクルーズよりもリーズナブルで、物価も他と比べるとまだ安いので手が届きやすいと思います。余談になりますが、物価が安いといえばタイの酔い止め薬も安かったです。100錠で5000円ほどだったので、1錠50円の計算ですね。私はここぞとばかりに100錠買ったのですが、買いすぎて店員や周りの外国人に笑われました。

これでしばらくの間のダイビングは安心
話しはそれましたが、これからシミラン諸島は11月から4月へとトップシーズンへと向かっていきますので、2026年の潜り始めにいかがでしょうか。さて、私は次はどこの海へ行こうか。

今回のクルーズメンバー

