潜水事故の一因?一般ダイバーとインストラクターの認識の違い
こんにちは。高野です。
前回のダイビング事故の現状認識からの続きです。
ダイビング事故(主に国内)に関する質問として、今回は2つ目の「ダイビング事故の多くは?(不可抗力⇔過失)」(現在での意識を4段階で回答)という質問についての結果をお話しします。
結果は、ダイビング事故の多くは、「4(不可抗力)」と回答したインストラクターは5%、一般ダイバーは2%。
「3」を加えた場合、ほぼ不可抗力と考えているインストラクターは30%、一般ダイバーは18%でした。
逆に、認識することができるはずなのに、不注意により認識しないこと、いわゆる過失(「2」及び「1」)と考えているインストラクターは、全体の70%、一般ダイバーにおいては82%を占めているという結果でした。
課外活動における主な事故発生要因の分析として、以下のことがあげられています。
- 「人的要因」-人の行為が原因
- 「環境要因」-周辺環境の不備・不適切が原因
- 「活動要因」-自己の可能性を追求するといった行為自体が原因
【引用】吉田章: 課外指導における事故防止対策,日本スポーツ振興センター調査研究報告書, pp151-153,2010
DAN JAPANなどの発表による、スクーバ・ダイビングの主な事故発生の原因をみると、上記の要因を当てはめた場合、事故者本人または引率者(インストラクターやガイド)の人的要因によるものが目立っているようです。
そこには当然のことながら、「人」が活動しているからということもありますが、人的要因による事故は減らすことはできないのでしょうか?
ここからは、スクーバ・ダイビングマネジメントの研究を進めている中で、あくまでも個人的な考えですが…、組織(指導団体)、運用する者(インストラクターやガイド)、参加者(一般ダイバー)の認識の隙間が事故発生の一因になっているように思います。
例えば…、
- <組織>においては、「コース基準を設けているから大丈夫だろう」。
- <運用する者(インストラクター)>は、「通常最も多く行われている講習日数である3~4日間では、本来行うべき講習項目の全てを習熟させるのは無理だろう」。
- <運用する者(ガイド)>は、「既に認定されたダイバーだから、知識・技術は身についていて自己責任、バディシステム等は認識しているだろう」(習熟できていないと分かっていながらも、事故が起こった場合はこれを盾にすることが多い)。
- <参加者>は、「知識・技術ともに不安だけど、インストラクターやガイドが助けてくれるだろう」(インストラクターやガイドに依存)。
などが考えられます。
本来、Cカード取得後にはバディでダイビングを楽しむことができるようになるはずですが、指導団体、インストラクター、参加者ともに、バディ潜水が「できないこと」を前提に講習が行われているのが現状です。
いきなりすべてを変えることは難しいかもしれませんが、まずはそれぞれが認識の隙間を埋めるために歩み寄ることが必要です。
そのためには、運用する者は「Cカード取得後には、バディで潜ることができることをゴールとした講習を開催する」、参加者は「バディでダイビングを安全に楽しむことを目標に受講する」ことをCカード取得のゴールとして、あらためて認識することが必要ではないでしょうか(指導団体によりゴールは異なるかと思いますので、ご了承下さい)。
※次回は、3「あなたはダイビングを危険な活動だととらえていますか?(極めて危険⇔極めて安全)」 についてお話します。