国内トップクラスのすごい海!柏島のダイビングは、激レア個体や貴重な生態シーンのオンパレード

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こんにちは。水中カメラマンの堀口和重です。

高知県にある柏島は、黒潮と豊後水道が交錯することにより、日本列島トップクラスと言ってもいいほど豊富な種類の生き物を見ることができる海です。

珍しい生き物が次々と出てきて、まるで宝石箱のような柏島の海。昨年の春と今年の秋に撮影する機会がありましたので、今回はオーシャナ読者の皆さんにご紹介したいと思います。

柏島はこんなところ

足摺宇和海国立公園にも指定されている、高知県幡多郡大月町にある柏島。
大月半島の先端に浮かぶ島で、少し孤立したこの場所にはタイやブリなどの養殖場所があり、陸上やダイビングポイントへの移動中に船の上から見ることができます。ダイビングはボートがメイン。ほとんどのダイビングポイントは、港からボートで10分以内で到着可能。1ダイブごとに港へ帰ってくるので、船が得意でない方にも優しい場所です。

柏島大橋と柏島新大橋

島への入り口は「柏島大橋」と「柏島新大橋 」。この2本の橋で本土とつながっている

柏島

ドローンで上空から撮影した柏島の風景(撮影/堀口和重)

アクセスは直接現地に車で行ったり、電車や夜行バスで高知県の宿毛駅へ行き、そこから各ダイビングショップの送迎で移動して柏島まで行く方法をとる方が多いです。関東方面の方は「とにかく遠い!」と思われるかもしれませんが、柏島で潜ってきた人たちの感想を聞けば、とても楽しかったと口をそろえておっしゃいます。

珍しい生き物の宝庫
柏島の実力を見よ!

「柏島には何がいるの?」と聞かれると、返す言葉は「なんでもいる」。
もう、それしか言いようがない海です。

砂地を探せばネジリンボウやダンダラダテハゼなどのハゼの仲間がいたるところで見られ、他の海では確認することも難しいアケボノハゼもかなり近くまで寄って見ることができます。

アケボノハゼの顔のアップ(撮影/堀口和重)

アケボノハゼの顔のアップ(撮影/堀口和重)

また、年中確実に見れるというわけではないのですが、昨年は珍しいキツネメネジリンボウの姿も確認することができました。

キツネメネジリンボウ_柏島

昨年の4月に撮影したキツネメネジリンボウ(撮影/堀口和重)

珍しい生き物の宝庫・柏島では、ポイント「ラスベガス」の深場に行けばオシャレハナダイがいたり、昨年はゴールデンイールモレイにも出会えました。ゴールデンイールモレイは黄色いウツボの仲間で、出会えたら幸運が訪れるとも言われています。

オシャレハナダイ_柏島

少し深場だが、美しいオシャレハナダイも見られた(撮影/堀口和重)

ゴールデンイールモレイ_柏島

柏島ダイビングサービスパラディのガイドさんに紹介していただいたゴールデンイールモレイ(撮影/堀口和重)

運が良ければ激レア個体も!
ホムラハゼとナギナタハゼ

昨年と今年、2年続けて撮影に行ったときには出会うことができなかったのですが、ハゼの中でも特に人気で珍しいホムラハゼやナギナタハゼなども登場する確率が他のエリアと比べて高いのです。

国内でもこの2種を見ることができるエリアは少ないので、出ているときはぜひガイドさんにリクエストしてみてくださいね。

ホムラハゼ_柏島

ホムラハゼ(撮影/柏島ダイビングサービスパラディ 倉松孝徳さん)

ナギナタハゼ_柏島

ナギナタハゼ(撮影/柏島ダイビングサービスパラディ 倉松孝徳さん)

柏島ならではの生態シーン

秋の海では、生態行動の観察も楽しむことができます。
ポイント「後浜」で柏島ダイビングサービスAQUASのガイド・松野さんから、スジクロガラスハゼが産卵してるとブリーフィング中に教えてもらいました。スジクロガラスハゼはネジリカラマツに生息しているとのことで、確認していみると数個体が産卵していたのです。産卵シーンを見るのは難しいと思っていたのですが、至る所でスジクロユリハゼがペアとなり産卵をしていたので、ばっちり撮影することができました。

スジグロガラスハゼ_柏島

スジグロガラスハゼのペアと卵(撮影/堀口和重)

ポイント「ラスベガス」では浅い場所で安全停止中に、タテガミカエルウオが卵を保護している姿も見られます。

タテガミカエルウオ_柏島

卵を保護するタテガミカエルウオ(撮影/堀口和重)

卵もかなり育って目がしっかり見ることができ、ハッチアウトが近い状態でした。柏島の秋の生態シーンにも胸を躍らされます。

タテガミカエルウオの卵_柏島

拡大したタテガミカエルウオの卵(撮影/堀口和重)

レアものの、レアな行動も必見

柏島には珍しい生き物が多いので、貴重なシーンにも出会う機会が増えます。取材時、ハダカハオコゼがペアでいるところに遭遇しました。私自身、ペアでいるところを観察したのは初めてです。

ハダカハオコゼのペア_柏島

ハダカハオコゼがペアで観察できた(撮影/堀口和重)

また、普段なら暗い岩の隙間などにいるフリソデエビが、青く抜けている写真映えの良い場所にいたりと、レア物のレアな行動や瞬間に遭遇できるのも楽しみの一つです。

フリソデエビのペア_柏島

フリソデエビのペア。後ろが青く抜けることは中々珍しい(撮影/堀口和重)

サンゴや群れもすごい
ワイドシーンにも注目

生物が多いということは、プランクトンも多く流れ込んできているということです。潮が流れれば、プランクトンを餌にするキンギョハナダイやソラスズメダイが活性化してテーブルサンゴの上に広がり、捕食を始める光景が目に留まります。

キンギョハナダイやソラスズメダイ_柏島

テーブルサンゴの上をキンギョハナダイやソラスズメダイが泳ぎ回る(撮影/堀口和重)

その近くには、サンゴの上で堂々と休むアオウミガメの姿や、群れるカマスの姿もありました。

アオウミガメ_柏島

サンゴの上に寝ているアオウミガメ(撮影/堀口和重)

深場にはソフトコーラルが群生する場所もあり、マクロだけかと思いきやワイドもおもしろいので、フォト派の方々はサブで広角を撮れるカメラも持って行きたいところですね。

今回、お見せできた写真はこれでもほんの一部です。まだまだ多くの生き物や水中の素晴らしい光景がたくさんあります。また機会があった時にお見せできたらと思っております。

黒潮が当たる太平洋側の珍しい生き物が圧縮されたような柏島。アクセスにはちょっと時間のかかる場所ではありますが、着いたらそんなこと忘れてしまう光景が広がります。年末年始のお休みや来年の連休を狙って、ぜひ足を運んでみてください。

撮影協力/柏島ダイビングサービスAQUAS柏島ダイビングサービスパラディ

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PROFILE
日本を拠点に活動している⽔中カメラマン。カメラマンになる以前はダイビングガイドをしながら数々のフォトコンテストで⼊賞。現在はダイビング・アウトドア・アクアリストなどに関連する雑誌やウェブサイト、新聞などに記事や写真を掲載、水中生物の図鑑や教書にも写真提供している。2019年に日本政府観光局(JNTO)主催の“「⽇本の海」⽔中フォトコンテスト 2019”にて審査委員、2020年には“第28回 大瀬崎カレンダーフォトコンテスト”の特別審査員も務める。近年は訪⽇ダイビングツーリズム促進を⽬的として“NPO 法⼈ Japan Diving Experience”としての活動も⾏っている。
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