磯焼け対策の駆除ウニを育て販売、ウニノミクス社の藻場再生システムに注目

近年、日本各地で「磯焼け(いそやけ)」が問題となっている。「磯焼け」とは、‟海藻が繁茂し藻場を形成している沿岸海域で、海藻が著しく減少・消失し、海藻が繁茂しなくなる現象を指す”と定義づけられているが、一言でいうと、海藻の群落(藻場)がなくなり、海が砂漠化している状態を指す。原因の一つとして考えられるのがウニによる海藻の食害だ。この食害解決の一助として注目されているのが、さまざまな技術を用いて藻場再生システムを作り出すウニノミクス社の取り組みだ。

藻場再生のための循環型システム

ウニノミクス

ウニノミクス社では、除去したウニを育て、販売し、利益の一部をウニの駆除に還元する藻場再生のエコシステムを確立。駆除されたウニは、飢餓状態で身入りがないため、捕食者からも人間からも価値がなく放置されている状況だったが、そこにメスを入れるシステムとなっている。

ウニノミクス社のウニの畜養

左:畜養前の磯焼けしたウニ 右:2カ月程度畜養したウニ

このシステム導入により、小魚などを育む海洋生態系の基礎となる藻場の回復・造成を行い、ブルーカーボン(※)による二酸化炭素削減を目指す。なお4月より商業生産を開始する株式会社大分ウニファームに続き、日本全国ならびに海外においても、商業生産拠点を順次展開するとのこと。さらに、この藻場再生を通じたブルーカーボンの推進事業においてウニノミクス社はENEOSホールディングス株式会社と協業を発表するなどますますの発展に期待が高まるところだ。

(※)ブルーカーボンとは、海洋生態系に吸収され固定される炭素のこと。また、海藻や海草、植物プランクトンなどが主に光合成によって、大気中から炭素(二酸化炭素)を取り入れ、それを従属栄養生物が利用するという一連のプロセス機能のこと。

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最先端技術を駆使、ウニを効率よく育てるためにAI搭載ロボットを導入

ウニノミクス社のAIロボットを用いたウニ畜養システム

除去したウニを畜養するシステムの規模を拡大するうえで課題となったのが、現場作業の効率化だったとのこと。漁業・水産業界では、高齢化や人手不足が深刻化し、水産技術者の経験に基づく判断や、手作業に依存する従来の方法では、事業規模拡大や商品の品質向上・安定化に限界が見えていた。

そこでウニノミクス社では、2020年5月1日付で、AI・IoT等のICTを活用したウニ陸上畜養トータルソリューションの構築に向けて、NTT東日本との共同実験協定を締結。令和2年度中をめどに、グループ会社である大分ウニファームにて、画像認識・センシング技術を活用し、作業員の目視確認や勘に頼ることなく水槽内のウニの個数、サイズ、健康状態、外傷の認識、管理レポートの作成、 AI 搭載ロボットによる自動給餌やICTを駆使したオートマチックな出荷選別など、作業員の手作業に頼らないシステムの研究開発を進めるとしている(2020年6月時点)。

令和3年度以降は、製品化に向けた開発を継続し、大分ウニファーム現場を始め、ウニノミクス社がウニ畜養活動を行うその他の国内現場、ノルウェー、アメリカ、カナダ拠点への導入を検討しているとのこと。

低炭素化社会の実現、そして豊かな藻場が育まれ、たくさんの生物に囲まれながらのダイビングをこれからも楽しめるよう、世界中の海でこのシステムが活用されることを期待したい。

ウニノミクス社について

ウニノミクス社は、ノルウェー水産研究所の技術を基に日本国内、ノルウェー、カナダ、米国における複数拠点での実証実験を行い、磯焼け状態の海で採取した市場価値のないウニを2カ月程度で食用に適した身入りと品質のウニに畜養する効率的な技術を確立しております。また同技術を用いることにより天然ウニの旬に限らず年間を通して安定的に高品質のウニを生産出荷可能にしています。さらに、餌には持続可能な方法で収穫された食用昆布の端材を主原料に用いることでウニ本来の味を引き立て、ホルモン剤、抗生物質、保存料などを一切使用しない人と環境に配慮した安全な専用飼料を使用しています。商業生産拠点の拡大にあたっては、地域ごとに合弁事業を設立した生産に向け、国内外の磯焼け地域において水産関係者などの事業者と事業化検討を進めます。

PROFILE
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