美容室を営む「知多半島を想う小さな会社」がエシカル洗剤を作った理由

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あるニュースをきっかけに、「未来ある子どもたちへ美しい知多半島のビーチを取り戻したい」と動き出した人がいる。「知多半島を想う小さな会社」と掲げる美容室が、ごみ拾いイベントや環境に配慮したエシカル洗剤を通して伝えたいことは一体。

愛知県出身の編集部員も他人事ではなかった「愛知の海汚い問題」

今回の取材を担当した生っ粋の愛知っ子の私が、愛知県の海が汚いということを知ったのは中学生の時。夏休みに友達と初めて海水浴に行った際に、「え、この中を泳ぐの?」と濁った海を見て思った記憶がある。

それから月日は経ち去年の11月、社内研修の提出物として「小さい頃の家族との海の思い出の写真」が必要となり、実家にいる母に写真を送って欲しいと連絡をした時のことだ。「うーん、海で撮った写真ないと思う。昔から愛知の海は汚くて、足元がよく見えないせいで足を切ったり、子どもを海辺で遊ばせてもどこにいるかわからなくて気付いたら沖に流されて溺死しちゃう事故が多くて、怖くて全然連れてかんかったもん。川とかプールの写真だったらいっぱいあるよ」と言われ、25歳になってはじめて母から聞かされたそのエピソードは、海に関わる仕事をしている私にすごく印象に残った。

そんな会話を母と交わしてからは、無意識に愛知の海を気にかけることが多くなっていたせいもあったのか、知多半島でビーチのごみ拾いイベントを行っている美容室がエシカル洗剤をつくったというニュースが不意に目に飛び込んできた。

ごみ拾い活動の背景や環境に配慮したエシカル洗剤について詳しくお話を聞きたいと思い、発起人である愛知県常滑市を拠点に美容室・エステサロンを経営している株式会社ワンダフルライフ 代表取締役の今井啓敦(いまいよしのぶ)氏に取材した。

「これは何かしなあかん!」汚名返上のためスタートしたビーチのごみ拾い活動

株式会社ワンダフルライフ 代表取締役の今井啓敦氏

-まずはじめに、知多半島のごみ拾いイベント「WONDERFUL CHITA(ワンダフル チタ)」を始めたきっかけを教えてください。

今井氏

元々、「社会モテ企業になろう(=地域のみんなに愛され必要とされる企業)」が会社目標の1つだったこともあり、「WONDERFUL CHITA」を始める前から、「髪もきれい、地域もきれい」をテーマに月に1度、店舗の近隣の清掃活動はしていたんです。そんな中、たまたまネットニュースで「水が汚い海水浴場ランキング 2020年」という記事を目にし、読み続けると本社がある常滑市の海水浴場「りんくうビーチ」がワースト1位でびっくりしました。しかも、上位10位以内に常滑市にある別の海水浴場2箇所もランクインしていて、本社の近隣の海水浴場の水が汚いということを知り「これは何かしなかん!」と思ったのがきっかけです。

「水が汚い海水浴場ランキング 2020年」でワースト1になった愛知県常滑市りんくうビーチ

-そうだったのですね、私も「水が汚い海水浴場ランキング 2020年」の記事を見て、自分の出身地がランクインしているのを見て衝撃を受けました。その後、どういう経緯でごみ拾いイベントを開催する運びになったのですか?

今井氏

丁度そのころ、会社としてSDGsの17の目標のうち「4.質の高い教育をみんなに」と「5.ジェンダー平等を実現しよう」に力を入れ始めていました。そこで、海に囲まれたこの知多半島にある会社として、「14.海の豊かさを守ろう」についても美容室としてしっかり取り組んでいきたいと思い、まずは社員だけでビーチのごみ拾いを始めてみました。
遠目から見るとすごく綺麗に見える海岸だけど、ビーチに行ってみるとタバコの吸い殻、ペットボトル、マイクロプラスチックなど大量のごみで溢れていて衝撃を受けました。社員とごみ拾いをする中で、「どうせやるならもっと多くの人とやった方が、1回で綺麗にできる量も増える」ということで、私が経営している美容室に来てくださるお客様や、自分の仲間、地域のお店の方にお声がけし、知多半島のごみ拾いイベントとして「WONDERFUL CHITA」を始動しました。

-SDGsの取り組みにも力を入れていたのですね。

今井氏

はい。元々、「未来を担う子どもたちにいい知多半島を残していきたい」という思いがあり、今の自分たちが良ければいいということでなく、2030年までを目標に子ども達が育ったときにワクワクできるような持続的な街にしたかった。そこで、SDGsの考えに共感し、大きなことはできないけどやれることからやり始めたいと思ったことがきっかけでした。

紙芝居や動物との触れ合いも!子どもが楽しんで学べるコンテンツが充実

-そういった思いがあったのですね。「WONDERFUL CHITA」は、実際にどんなことを行なっているのですか?

今井氏

ビーチのごみ拾いはもちろん、動物との触れ合いや紙芝居の読み聞かせも行っています。去年の7月に実施した際は60名、10月に実施した際は、私もびっくりしましたが100名もの方にご参加いただきました。

-2回目にして100名!すごいですね!イベントの様子の写真を拝見した際、チーター柄のゼッケンや幟(のぼり)にとてもインパクトを受けました。チーター柄を選んだ経緯をお聞きしたいです。

今井氏

「知多半島にちなんで知多=チタ=チーターでしょ」ということで、一発ですぐ決まりました。親父ギャグが好きで(笑)。ゼッケンは、表面にチーターのシルエット、裏面には数字の「39」がプリントされていて、「知多半島にサンキュー」という意味が込められています。ちゃんとイベント化してやりたかったので、他にも、ノボリやテント、景品として用意する服やトイレットペーパーもチーター柄で統一しました。

7月に開催したイベントの様子

-親父ギャグで決まったのですね(笑)。先ほど「動物との触れ合いや紙芝居も行なっている」とお聞きし、子ども向けのコンテンツが充実している印象を受けました。

今井氏

とにかく子どもに参加してほしいという思いがあったので、子どもと動物との触れ合いの場を提供するのも重要と考えました。たまたま知り合いの方でお馬さんを育てている方がいて、その方も環境問題に対して一生懸命取り組んでいて、お話ししていたら意気投合し連れてきていただきました。

また、今の環境問題や社会問題について子どもに理解してほしい、伝わるといいなという思いから、プラスチック問題に関する紙芝居の読み聞かせをやっています。紙芝居の最後には、ペアやチームになって「コンビニでおしぼりをもらいません!」「僕は水をこまめに止めます!」など「私は今日からこんなことをします」と宣言をみんなに発表する時間を作っています。そうすることで、日常生活の中でちょっとずつ環境問題を意識してほしいと思っています。

-「子どもが楽しんで学べる」ことに注力を入れているのには、何か強い思いがあるのでしょうか?

今井氏

実は今、不登校の子どもが日本全国に約20万人近くいます。また、自殺率が高く、自己重要感(=自分のことを認められない)が持てていない子どもが、先進国の中でもダントツで日本が多いんです。その背景を知っていたこともあり、「自分の住んでいる街のビーチを自分が綺麗にする」という行動を通して、自分が役立った、社会に貢献した、と実感できる機会を作り、少しでも子どもたちの自信や自己重要感が高まることに繋げたいという思いが強くあります。

-そんな経緯があったのですね。実際に「WONDERFUL CHITA」を開催してみて、周りに何か変化は感じましたか?

今井氏

1番は社内の雰囲気が変わったことでしょうか。会議で集まった時、マイタンブラー持つようになったり、お客さんに感謝を込めて開催する周年祭に用意する景品の中身も、マイハシなど環境に配慮したものにしたり、みんなの意識が変わってきているなと実感しました。
あと、「今まで気づきもしなかった道路のごみに気づいて拾うようになった」など、子どもの意識が変わってきたという声を親御さんから多くいただけたのもとても嬉しかったです。

理由を聞いて欲しくなった。地域密着型エシカル洗剤「BEAUTIFUL CHITA」とは!?

-ごみ拾いイベントだけでなく、環境に配慮したエシカル洗剤「BEAUTIFUL CHITA(ビューティフル チタ)」も販売されていますよね?すごく気になった点があるのですが、美容室がなぜ洗剤を販売しようと思ったのでしょう?勝手に、シャンプーやリンスを販売するイメージがあり…。

今井氏

使用頻度やそれを通して最終的に海に流れていく水の絶対量を考えた時、シャンプーより洗剤の方が圧倒的に多く生活にも直結していますよね。実際、美容室でも髪を乾かす際にタオルを使うので、毎日物凄い量のタオルを洗濯しています。なので、つくるのであればより多くの方が使用する頻度の高い洗剤の方がいいなと思い、洗濯用に限らずキッチン、床掃除などどこにでも使えるオールインワン洗剤をつくりました。あと、知多半島を盛り上げたいという思いから、地域通貨をパッケージにつけています。そういった点からも、シャンプーより洗剤の方が広がりができるんじゃないかと思いました。

-理由をお聞きできてすごくスッキリしました。そして、納得しました。地域通貨はどういう仕組みなのですか?

今井氏

サイトなどまだ準備中の段階ですが、知多半島の名産品と交換できたり、たとえば知多半島内では、地域通貨50CHITA分でドリンク1杯無料になるなど、地域の中でより循環するような仕組みをつくっていきたいと思っています。

-準備している真っ最中なのですね。サイトのオープンはいつ頃を予定していますか?

今井氏

購入ページも3月頃に、地域通貨のページは今年の夏頃に展開できる予定です。現地で使用する地域通貨については、まだまだ課題も多く仕組みをどう作っていくのか構想中です。

-「BEAUTIFUL CHITA」のオススメポイントを教えてください!

今井氏

生分解性の洗剤なので、食物のカスなどが分解し最終的に水と二酸化炭素に分離するため、海に優しい洗剤だと言えます。あと、粒子が細かい洗剤なので洗濯物の毛が立ち、吸水力が上がります。柔軟剤を使わなくても柔らかく、ゴアゴアした感じがなく素材の良さを引き出してくれます。

-毛が立って洗濯物が柔らかくなるのはとても魅力的です!ちなみに、愛知県の海が汚い問題について、汚水の排出が多いだけでなく、伊勢湾・三河湾の水の循環が悪い閉鎖的な水域ということも関係していると言われていますが、それについてどう思っていますか?
参照:Q川や海の汚れの主な原因は何ですか?(東三河総局 県民環境部 環境保全課 Q&A)

今井氏

そうですね。難しい話ですが、どうしても自分の力では変えられないこともあるので、しょうがないものはしょうがないと私はわりきっています。昔から愛知はものづくりの街として工業地帯も多く、中には日本を代表する世界規模の会社もある。逆に言うと、そのおかげで愛知県は経済的に元気な県であるとも感じています。社会活動をしているとどうしても矛盾が出てきますが、今の生活に感謝しながらできることをきちんとやっていくことが大事だと思っています。

-なるほど。東京に上京してから、「愛知県って元気だよね」と言われることがよくあったので、すごく腑に落ちる意見です。今後、やっていきたいこと、新しい展望はありますか?

今井氏

2022年は、「WONDERFUL CHITA」を5回開催する予定です。去年、本当は3回開催する予定だったのですが、悪天候で1回中止になったこともあり今年は5回やりたいなと思っています。あとは、一般的に知られている観光地からまだ知られていないところまで、知多半島の魅力を満喫できるツアーができたらいいなと考えています。知多半島の良さを県外の方へ伝え、知多半島の経済がちゃんと循環していくようなイベントをいろいろやっていきたいです。

-知多半島の地域復興にも力を入れているのですね。最後に、オーシャナ読者へメッセージをお願いします!

今井氏

最近全然できていなくてブランクはありますが、私も実はダイビングをやっていました。以前、知り合いのダイバーから、太平洋の沖でもプラスチックが浮いていたという話を聞いて恐ろしいなと思いました。ダイバーの皆さんは海を愛しているので海にごみを捨てる人はいないかと思いますが、立場や住んでいる場所に関係なく海の豊かさを守るアクションの1つに、海に流れる水をできるだけ綺麗にすることもあります。一般的に販売されている洗剤を使うよりは、エシカル洗剤『BEAUTIFUL CHITA』を使っていただけた方が海にやさしいと思うので、綺麗な海を取り戻す選択を一緒に歩めたらなと思います。

-今井さん、ありがとうございました。

今回の取材を通して、今井氏の知多半島に対する熱い思いをすごく感じた。そして、知多半島だけでなく、日本全国で家庭から排出される汚水が海に流れ出ている事実は変わらない。元々は知多半島の美しい海を取り戻すことがきっかけで生まれた「BEAUTIFUL CHITA」だが、是非他の地域の方も様々な用途で使える万能洗剤をチェックしてみてはいかがだろう。

地域密着型エシカル洗剤「BEAUTIFUL CHITA」


エシカル洗剤 詰め替え1本+ボトル(初回購入時のみ)
定価4,400円(税込) 
※ボトルはガラス仕様で再生可能エネルギーを使用

【エシカル洗剤 BEAUTIFUL CHITA 生み出す恩恵】
1.キッチン・衣類・床掃除・住宅と、オールマイティ活躍する万能洗剤
2.使用後も配管が汚れない、洗濯槽の内側まできれいに。
3.アロマの香りで柔軟剤不用。
4.濃縮タイプで圧倒的に経済的。
・洗濯の場合4ヶ月分(133回分)※1日1回の場合
・食器洗いの場合 20倍に薄めて、200mlを80本分(1本¥43)
5.プラスチック容器などを使用せず、環境に配慮したボトル作り。
6.生活排水、工業排水の大幅な削減。
※今年3月に専用購入ページを展開予定。

株式会社ワンダフルライフ


愛知県 南知多で、美容室・美容ディーラー事業・エステ事業・ヘルスケア事業に取り組む「知多半島を想う小さな会社」。人々の心に幸せを創出するために『幸せのおすそわけ』で幸せの種をまき、あたたかい地域社会を創造し、業界の常識は我が社の非常識を合言葉とし、知多半島にヤバイ文化を創造している。
公式サイト:https://wonderfullife.jp/

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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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