【伊東市ダイビング完全ガイド】赤沢・温帯種と亜熱帯種が共存する、多様性豊かな海
温帯と亜熱帯、その境界が曖昧になる海がある。静岡県伊東市・赤沢だ。南向きに開けた地形の恩恵もあり、その結果、ひとつの海に多様な生き物が集まる独特の生態系が形づくられている。ビーチとボートポイントがコンパクトに凝縮され、潜るたびに異なる表情に出会えるのも、この海の奥行きだ。そんな赤沢の魅力を本特集では紹介していく。
静岡県伊東市のダイビングスポット「赤沢」の特徴

マダラハナダイ。赤沢は“ハナダイパラダイス”と形容されるほどいろいろなハナダイの仲間が見られる
赤沢の海を語るうえで外せないのが、前述にもある温帯種と亜熱帯種が同じフィールドで共存するという珍しい光景だ。東伊豆に位置しながら南向きに開かれた地形のため、南からの海流が溜まりやすい。その影響で、本来は冬に死滅してしまうはずの季節来遊魚が多く越冬し、他のエリアでもよく見るレンテンヤッコやハナミノカサゴのほか、アカボシハナゴイやときにはアサヒハナゴイ等の南方系のハナダイたちが赤沢の生態系の一部となっている。
水中は砂地・岩礁帯・ガレ場・柱状節理と異なる環境が目の前の海に集約されておりバラエティ豊か。特に、水深100mまで続くガレ場エリアでは、通常は水深40m以深の深場を好む魚が、比較的浅い水深まで上がってくることがある。そのため、ほかのエリアではあまり見られないコウリンハナダイやアカボシハナゴイが通年で観察でき、産卵も確認されている。
そして近年赤沢で人気なのが「定置網ダイビング」。日程は限定されるが、実際に漁を行っている定置網の中に入ることができ、参加したダイバーのほぼ全員が驚きの声を上げるほどのインパクトがある。深海魚・マンボウ・ハンマーヘッドシャークなど予測不能な生き物との遭遇が、ダイバーを興奮させる。これはレジャーダイビングのフィールドでは他に類を見ない体験だ。
赤沢で絶対に潜るべき!おすすめダイビングポイント3選
赤沢は、ビーチとボート、異なるスタイルのダイビングを1カ所で楽しめるのが大きな魅力だ。エントリーしてすぐに生き物と出会える遠浅のビーチ、ダイナミックな地形と魚影が広がるボートポイント。コンパクトなエリアの中に、それぞれ異なる表情を持つフィールドが凝縮されている。ここでは、そんな赤沢の海を象徴する現地ガイドおすすめの3ポイントを紹介しよう。
■ 毎晩潜れる!遠浅の生態観察フィールド「赤沢ビーチ」

ムレハタタテダイの群れ。200匹近く現れることも
【最大水深】約18m
【スタイル】 ビーチダイビング
【特徴・見どころ】
ダイビングセンター目の前に広がるビーチポイント。体験ダイビングでも安心して潜れて、講習でもよく使用されるポイントだ。遠浅の地形のため残圧や無減圧潜水時間に余裕をもってじっくり潜れるので、生態観察に最適。
エントリー直後から多くの生き物が見られて、水面に顔をつけると青色のソラスズメダイがゆらゆらと舞い、癒しの光景を見ることができる。また、サラサラの砂地が広がり、ベラギンポやテンス、ウチワザメのような砂に潜る種が多く生息しているのも特徴だ。夏には毎年200匹近くのムレハタタテダイの群れが出現し、南国さながらの光景が広がる。
また、伊豆では珍しくナイトダイビングが毎日開催可能(人数制限あり)なのも大きな魅力。昼に泳いでいた魚が寝ているシーンや、イセエビなどの夜行性の生き物が活発に動いている姿を観察できる。
■ ダイナミックな根の周りに多くの生き物が集う「3番(三角岩)」

悠々と泳ぐテングダイの群れ。ボートポイントで多く見ることができる
【最大水深】約40m
【スタイル】 ボートダイビング(港から船で約4分)
【特徴・見どころ】
マクロもワイドもお好みのスタイルで楽しめる、赤沢を代表するポイント「3番」。ハナダイ・ベラ・スズメダイ類の魚種が豊富で、深場にはソフトコーラルの群生も広がる。イサキやタカベの群れ、アオウミガメの遭遇率も高く、ネコザメも多く生息している多様性が魅力。ときにはダイバーの憧れ、ハンマーヘッドシャークの目撃例も。
ボートポイントながら水深5m程度の浅いエリアでも遊べるため、安全停止中の最後の最後まで生き物観察を楽しめるのも嬉しいポイントだ。水深の変化が大きいため中性浮力と無減圧潜水時間を自己管理できるダイバー向け。
■ サクラダイとハゼの聖地「0番(イボヤギ岩)」

サクラダイ。秋には産卵行動を観察できる
【最大水深】約35m
【スタイル】 ボートダイビング(港から船で約3分)
【特徴・見どころ】
35mまで一気に落ちる急な斜面と深場の砂地が楽しめるポイント。深場を好むサクラダイを通年観察でき、9〜11月ごろには産卵行動が観察できる。オスがメスを追いかけ体を寄せ合うシーンは、まるでダンスに誘っているかのような光景だ。
さらに砂地ではハゼの仲間が多く、マクロ派にとっても宝の山のようなフィールド。水深の変化が大きいため中性浮力と無減圧潜水時間を自己管理できるダイバー向け。
赤沢の潜り方HOW TOガイド

ビーチエントリーエリア。整備されていて出入りがしやすい
ダイビングセンター前に広がるビーチポイントは、セッティングスペース目の前のスロープからのエントリー。歩いてわずか5秒なので、重い器材を長時間背負わなくていいのが嬉しい。スロープはコンクリートで整備され、手すりもあるのでフィンを履いてゆっくりエントリーが可能。

斜面でも器材セッティングしやすいように台が設置されている
また、海に向かって右側が岩山、左側が堤防となっているので、大きな波が入ってきにくいのも嬉しい。沖まで泳ぐとブイから潜降用のロープが斜めに降りているため、耳抜きや潜降が不安なダイバーも安心だ。

ボートダイビング用の船。施設目の前の港から出航する
ボートダイビングで使用される船は、伊豆で一般的な漁船タイプ。港でセッティングして器材を背負って乗船する。どのポイントも港から5分以内という近距離なので、揺れが少なく快適。ジャイアントストライドエントリーで入水し、エキジットはフィンを脱いでハシゴから上がるスタイル。
赤沢の四季ごとの見どころ

秋ごろにはまだ小さな体で懸命に泳ぐクマノミに出会える
季節ごとに表情を変える赤沢の海。水温や透明度の移ろいとともに、生き物の顔ぶれも大きく変化していく。そんな海のリズムを、季節ごとの特徴とあわせて紹介しよう。
春の赤沢の特徴:生命の誕生の季節
【平均水温】14〜16℃
【平均透明度】3〜20m
海藻が大きく成長しプランクトンが増え、さまざまな生態系の始まりを感じられる季節。ゴロタエリアではネコザメやナヌカザメとの出会いも期待でき、ウミウシなどのマクロ生物も豊富になる。
ギンポ類の産卵行動が活発化するため、じっくり生態観察やフォトダイビングを楽しみたいダイバーにおすすめのシーズンだ。
夏の赤沢の特徴:華やかな水中が楽しめる
【平均水温】17〜28℃
【平均透明度】5〜25m
魚影が濃くなり、水中が一気に華やかな雰囲気に包まれる。キンギョハナダイやソラスズメダイの群れが岩礁エリアを色鮮やかに彩り、活発な求愛行動も観察できる。
ネンブツダイなどイシモチの仲間による口内保育や、アオリイカの産卵シーンなど、生き物たちの神秘的な繁殖行動を間近で見られるのも、夏の海ならではの見どころだ。
秋の赤沢の特徴:魚種・量・透明度がそろったベストシーズン
【平均水温】22〜28℃
【平均透明度】5〜30m
赤沢が最高潮を迎えるベストシーズン。黒潮の影響で透明度が上がり、ダイバーに人気のクマノミ・ミツボシクロスズメダイなどの可愛らしい魚たちをイソギンチャクのまわりで観察できる。
ムレハタタテダイは200匹以上の大群を形成し、南国のような雰囲気に包まれる。「0番」ではサクラダイの産卵も観察でき、カラフルなハナダイ類が青い海に映える景観は息をのむ美しさだ。季節風で海況が安定するのもこの時期の利点。
冬の赤沢の特徴:透明度抜群の海でダイナミックな地形を楽しむ
【平均水温】14〜16℃
【平均透明度】15〜30m
1年で最も透明度が高く、コンディションが良い時には30m以上になることも。
海底には火山活動が生んだ柱状節理の岩礁地形が広がり、長い年月が作り出したダイナミックな景観を楽しめる。地形の迫力とテングダイやムツなどの魚の群れを同時に味わえるのが冬の赤沢の醍醐味だ。マンボウとの遭遇チャンスがあるのもこのシーズン。
赤沢の現地ダイビングサービス情報

ビーチポイントが目の前のダイビングセンター
赤沢でのダイビングでは、赤沢ダイビングセンターを利用する。2021年にリニューアルした施設は、白を基調としたリゾート風の癒し空間。清潔感があり広々としていて、多くのダイバーを迎え入れる。
受付では器材レンタルやグッズ販売なども行っているので、万が一忘れ物をしても安心だ。


外にはお風呂やシャワーが設置されているほか、屋内更衣室にもシャワーがある。シャンプー・リンス・ボディーソープも常備されている。脱水機やパウダールームも完備された充実した施設だ。




夏の強い日差しや雨を防げる屋外の休憩スペースのほかに、完全屋内の休憩スペースもあり、冬も寒さをしのげる。1階、3階に冷蔵庫・電子レンジ・ポットがあるほか、自由に温かい飲み物をいただけるのも嬉しい。


赤沢のおすすめアフターダイビングスポット
赤沢日帰り温泉館
ダイビングサービスのすぐ上にある温泉施設。太平洋を望む絶景の露天風呂やサウナ、40℃前後で体をじっくり温める温暖浴、約6,000冊の漫画や雑誌が読み放題のラウンジ、タイ古式マッサージ、伊豆の新鮮な海の幸を使った海鮮料理をいただけるレストランなど、至れり尽くせりの場所だ。
ダイビングサービスで割引券を配布中。
赤沢のまとめ
温帯と亜熱帯の生き物が共存する、華やかで不思議な生態系。 深さのある海だからこそ見られるサクラダイの産卵や、コウリンハナダイ、アカボシハナゴイといった他エリアではなかなか見られない希少種。さらに、定置網ダイビングというここだけの特別な体験も楽しめる。
何度潜っても新しい発見があり、潜るたびに「また来たい」と思わせてくれる海。 伊東市の7エリアの中でも、ひときわユニークな赤沢に、ぜひ足を運んでほしい。
情報・写真提供
赤沢ダイビングセンター
水中写真提供
茂野優太




