共通点は「ダイバー」。伊豆半島の自然を守る環境活動団体「MORE企画」の活動に迫る

都市部からのアクセスが良いダイビングエリアとして人気の静岡県・伊豆半島。その伊豆半島をを拠点に環境活動を行う3名の女性ダイバーがいる。これまでは、個々に環境活動を取り組んでいたが、今後は環境活動団体「MORE(モア)企画」として団結し、活動していくことを発表した。団体を立ち上げた経緯、そして、活動範囲を海だけとどめず、山や川、街など幅広く活動する彼女たちの取り組みについて迫る。

海を遊び場としているダイバーだからこそできることがある

MORE企画は、代表の白井ゆみ(しらいゆみ)氏(以下、白井氏)、副代表でイラストレーターの有森南央(ありもりなお)氏(以下、有森氏)、マネージャーでダイビングインストラクターの大石彩夏(おおいしあやか)氏(以下、大石氏)のダイビングを趣味、又は仕事にしている3名によって発足された。

「MORE企画」という名前の由来は、Mountain(山)、Ocean(海)、River(川)、Earth(地球)といった自然に関連する4つの重要な要素の頭文字から取っているのに加え、英単語のMore (= もっと、更に)の意味から、「“もっと”伊豆半島を綺麗にしよう!」という思いも込められているという。

これまでは、各々が山の不法投棄回収や、陸、海岸、海中ごみの回収などを行ってきたが、伊豆半島の山・川・海の自然環境や景観をより良くする姿を団体として発信していくことで、今まで以上に発展した活動ができ、地元の方や観光客、事業者の方に環境への意識を高めてもらい、行動につなげるきっかけになるのではという思いから立ち上げる運びとなった。

道端や山、川に捨てたごみが、雨や風、川の流れによって海へと流れでていくことにより、海が「地球のごみ箱」になってしまっている現状の中、実際にその状況を目の当たりにしているダイバーとして、日常生活や海の中でできることを模索しながら実行していくなど「その海に潜っているダイバーだからこそできることがある」として、一時的な対策ではなく、安易に継続することができるような、システム作りを浸透させていくことを目指している。

海岸清掃時の様子(左:有森氏、中央:白井氏、右:大石氏)MORE企画提供

MORE企画の思いが詰まった短編ムービー『【OUR PLANET】2022.09.23』

動き出しているMORE企画2つの活動

1.ごみ回収プロジェクト

伊東市内のダイビングサービスや港へ、「海のごみ箱」を設置するごみ回収プロジェクト。すでに、ダイバーたちが回収した海中ごみを入れることができるごみ箱が設置されている箇所もあることから、まずは、一度回収したごみが再度海へ飛ばされることの防止策となる蓋や外枠、また看板の設置など、ごみ箱の強化を関係者と協議を重ねながら着々と進行しているそう。
現在は、試験的な導入として伊東市川奈のダイビングエリアのごみ箱を強化しており、イメージカラーを青と白にしてリニューアル。看板には、川奈の海で出会えるウミガメのイラストも入っている。また、このごみ箱は80%以上廃材を使用したアップサイクルごみ箱でもあり、アップサイクルの考え方はMORE企画が今後広めていきたいことの1つでもあるという。

リニューアルした川奈のごみ箱

現在は、川奈での事例を元に、伊豆のダイビングエリアへの設置を目標としており、海中ごみ専用のごみ箱が無い場所へは、ごみ箱の設置から捨てられたごみの回収をするシステムまでを関係者と話し合い、設置実現に向け検討していく予定。この活動には、海中ごみ専用のごみ箱であることをわかりやすくすることで、伊豆半島のダイビングエリアを使用するダイバーたちへの啓発や、管理しているエリアのイメージアピールに繋げたいという思いがある。

2.落書き消しプロジェクト

富戸のダイビングポイント(ヨコバマ)のエントリー口付近には、10年以上前からスヌーピーの落書きがあったそうだ。そして、落書きが放置されている街は、軽犯罪やポイ捨て、新たな落書きなどが増える傾向にあり、落書きがそのままになっている状態は、子供たちへの教育や観光客へ与えるイメージとしても良くないと提案。富戸港を管轄している伊東市産業課と富戸漁港の担当者とともに、現地調査を何度も重ね、港の美化活動の一環として、2022年春、落書きされた壁を背景の木々に合わせた深緑色に塗り替えることが実現した。

落書きを消す前

落書きを消した後

これを皮切りに、伊豆半島中の落書きを消していく計画を進行中。すでに、伊東市内の落書き箇所については下調べが終わり、持ち主がわかっている箇所から綺麗な状態に戻すため塗り替えを進め、行政が管轄している箇所については、担当の課へ連絡をして実行に向けて働きかけていく。
また、ペンキや必要道具に関しては、伊豆半島内の事業者らが協力予定。今後も、協賛企業や個人協力者を継続して募っているという。

落書き消しプロジェクトの進捗状況はこちらのページから確認することができる。
https://seaoceanbeach2086.wixsite.com/morekikaku/graffitipj

新規プロジェクトも続々と計画中。MORE企画の展望とは

「海に漂っているごみが“自分が出したものでは無い”と言い切れる人はいない。だからこそ、事実を知り、関心を持ち、自身の身近なアクションにつなげて欲しい。MORE企画は、ひとりでも多くの方に興味関心を持ってもらうきっかけになる活動をこれからも続けていきたい」。

と語るMORE企画は、遂行中のプロジェクト以外にも、新たなプロジェクトも順次取り組んでいく予定。その中には、ごみ拾いをボランティア活動ではなく、仕事にすることができるよう今までの取り組みを見直し、刷新する計画があり、今後、クラウドファンディングや寄付なども募る予定。さらには、NPO法人や一般社団法人などへの登録も検討しているという。
また、今まで白井氏が個人で開催してきた環境展示会やセミナーなども、MORE企画として継続して開催していく予定とのこと。

水中写真家の茂野優太氏も参加!過去開催の環境展示会の様子はこちら

川奈の海岸でごみ拾いをする大石氏

山の不法投棄を回収している大見川を清掃するボランティアの会や、伊東市宇佐美の美化活動を行う中学生団体などとも協力し、精力的に活動をしているMORE企画のみなさん。元々は趣味や仕事としてダイビングをしていたが、そこからダイバーの価値を見い出し、自分たちの遊び場を盛り上げることに繋げていった。ダイバーにしかない視点が、実は海の環境問題やその土地の観光など、地域活性に大きく結びついていると思うと、様々な可能性を考えさせられる取り組みではないだろうか。今後も、新たなプロジェクトを計画しているMORE企画の活動に注目していきたい。

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PROFILE
奄美在住。高校生の時にブラジル留学を経験。泳ぐのが苦手で海とは縁がない人生だと思っていたが、オーシャナとの出会いを通じてOWD(BSAC)を取得。オーシャナを通じ、環境問題や海のことについて勉強中。
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