マクロ撮影が劇的に見やすくなる!SEA&SEAのストレートビューファインダーVF180 1.2X本音レビュー

SEA&SEA(シーアンドシー)ストレートビューファインダーVF180 1.2X

水中撮影機材レビュー 一撮両断!

機材名&定価
SEA&SEA(シーアンドシー)
一眼レフハウジング用ストレートファインダー「VF180 1.2X」
¥65,000(税込¥68,250)

記念すべき一回目のレビューはこちら、SEA&SEA(シーアンドシー)の一眼レフハウジング用ストレートビュー式ファインダー VF180 1.2x。

前から一度使ってみたかった品であるが、それにしても贅沢なパーツだ。
なんせただのファインダーである。
それに税込みで7万円近く払おうというのだから、何ともセレブである。

公式HPの説明文を要約すると、

  • 拡大率1.2倍でファインダーの全視野を確認できる
  • 再現性に優れた8枚6群の光学ガラスを使用
  • 内部には窒素ガスを充填しレンズ内結露を防止
  • 専用ファインダープロテクターで外光をほぼ完全遮断

とある。

それでは実際に使用してみよう。
今回はSEA&SEAのニコンD700用のハウジング・MDX-D700に装着してみた。

装着時の外観

装着した感じはこうだ。

SEA&SEA VF180 1.2x

真横から見るとわかるが、勢いよく正面に突き出しておりかなりの迫力。
ハウジングとの設置部分からトップまでは約9cmある。

普段自分は標準ファインダーで撮影しており、マスクのおでこの部分をハウジングにくっつけて撮影する。
これだけ離して撮影するというのはいったいどんな使用感なのだろう?

その前に取り付けだが、「VF180 F1.2」は取り付け&取り外しを自分で行う。
メーカーに送って特別な改造をしてもらう必要はない。

自分でハウジングのファインダー部分などいじったことがないので最初はビビったが、メカが苦手な方でも説明書どおりに作業を行えば全く問題はなかった。
普通にカメラ機材のセッティングができる人なら、付属のU型専用金具を使ってものの1分で取り付けが可能であろう。

水中での使用感。その第一印象は「画像が大きい!」

さて、肝心な水中での使用感をここから説明しよう。

まずファインダー内に写る像の大きさ。
1.2Xとあるように、カメラのファインダーを1.2倍に拡大してくれるのだが、1.2という数字だけ見ると大して違いはないんでは? なんて思ってしまう。

しかし実際にのぞいてみるとその大きさ感は想像以上だった。
水中写真歴10年超の方にはわかってもらえるかもしれないが、名機ニコノスRSのファインダーをのぞいた感覚に近い(わからない方ごめんなさい)。

ファインダーの解像度も非常に高く、同じレンズを付けているのにファインダーが普段より明るく感じられるほど。
明るく大きい像を見ているだけで、何やら素晴らしい写真が撮れそうな気がしてくる。

またファインダー像が大きいのでピントの”ヤマ”もわかりやすい。
自分はマクロ撮影時は基本AF、そしてピントにこだわった撮影が必要な場合にはMFに切り替えて、構図を決めたところでピントを固定。
そこからハウジングを微妙に前後させて最終的なピントを決定している。

そういった撮影スタイルを撮っている方はもちろん、マニュアルフォーカスギアを使ってピントの微調整をしている方にも非常に使いやすいのではないだろうか。
「カクレエビの手前側の目」「ウミウシの手前側の触覚」というような厳密なピント合わせが、普段使っているファインダーに比べると段違いにしやすい。

被写体の目、それも手前の目にピントを… という厳密なピント合わせが格段にしやすくなる

被写体の目、それも手前の目にピントを… という厳密なピント合わせが格段にしやすくなる

高倍率ながらケラれないというメリット

また像の大きさに加え、ファインダー全視野をケラれなく確認できるのもポイントだ。

ハウジングメーカーによっては異なる倍率のファインダーをオプションでラインアップしている。
例えばSEA&SEAの場合は0.8倍、0.66倍、0.5倍とラインアップされており、ハウジングを購入したときには0.66倍が標準で装着されている(ちなみに各ファインダーは税込10,290円で販売されており、好みや用途により付けかえ可能)。

倍率の高い0.8倍は画像が拡大されピントはわかりやすくなるが、画面の四隅がケラれてしまい、厳密な構図を追うことができなくなる。
逆に倍率の低い0.5倍はファインダーの全視野を確認できるものの、画像が小さくなってしまうのでピント合わせがしにくくなる。
0.66倍はその中間である。

しかし、VF180 1.2Xは、1.2倍という高倍率ながら全視野が確認できるという優れもの。

「マニュアルでピントを合わせつつ、構図も四隅まできっちり確認して撮りたい」。
そんな撮影を求めるのであれば、このファインダーを使う他にないと言える。
こだわりの上級者には、ぜひこの使用感を試してもらいたい。

「VF180 F1.2」を装着して構えているところ。ファインダーが突き出ているので、ハウジングとマスクの距離がかなり空く。カメラがブレやすくなるので注意が必要だ

「VF180 F1.2」を装着して構えているところ。ファインダーが突き出ているので、ハウジングとマスクの距離がかなり空く。カメラがブレやすくなるので注意が必要だ

VF180 1.2Xのウイークポイント・デメリット

どんな機材にも良い面もあれば悪い面もある。
「VF180 1.2X」のウィークポイントは、「見やすさと」同時に「見づらさ」を抱えているところだ。

ここまで散々見やすいと書いておきながら何のこっちゃ? と思うかもしれないが、「VF180 1.2X」を使ったときのセカンドインプレッションはこの点である。

「VF180 1.2X」はしっかりファインダー像を確認できる「アイポイント」が狭い。
「アイポイント」とはファインダーに対する目の位置のことだ。

普通のファインダーであれば、目の位置が多少ずれても(像が多少ケラれるものの)ファインダー像を確認することができる。
しかし「VF180 1.2X」は少しでもそのアイポイントを外すと、その光学構造上、ファインダー像がブラックアウトのように全体が真っ暗になって何も見えなってしまう。
使用した感覚で言うと上下左右に1cm、目の位置がずれるだけでファインダーが真っ暗になる印象だ。

体を固定して撮影するマクロ撮影だと気にならないが、例えばイルカやマンタなど何かを追いかけて泳ぎながら撮るワイド撮影だとこのデメリットは強く感じる。
フィンキックをしながらカメラを構えるとどうしても目線がブレがちだ。
アイポイントから目がずれる度にファインダー像が「見えては消え、見えては消え~」の繰り返しになってしまい、とてもストレスに感じる。

先に挙げた水中使用時の写真を見てもらえればわかるが、ファインダーが突き出ているため腕が伸びて脇が甘くなるのもアイポイントがずれる原因になろう。
ワイド撮影をメインにするシチュエーションの場合には、このファインダーはおすすめできない。

「VF180 F1.2」をおすすめしたいのはこんな人

ここまで説明して内容を整理すると、「VF180 F1.2」をおすすめしたいのは以下のような人である。

「厳密なピント」「全視野が見られる構図」にこだわって、マクロ撮影での作品作りを真剣に取り組みたい人

となる。

特に週末にクルマで近場に通いまくっているフォト派ダイバーはカメラセッティングをバラさない人がほとんどだろう。
装着した「VF180 F1.2」を付けっぱなしにできるので、その点でも有利だ。

何よりこのファインダーは目立つ。
マニアが集う近場の海では一眼レフハウジングなど珍しくもないが、このファインダーを付けていれば「こだわるヤツ」と周囲から一目置かれることは必然。
担当ガイドも気合いを入れ直して被写体を探してくれるかもしれない!?

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PROFILE
スクーバダイビングの専門誌の編集担当&カメラマンを経て2011年よりフリーランスとして活動。
旅行誌や女性誌の旅企画等に携わるほか、現在ダイビング関係では「月刊ダイバー」誌に写真と記事を寄せている。
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