野うんにょ


本人の名誉のために書かないでいたのだが、
本人はいつネタにしてくれるのか楽しみにしていたようなので書く。

強く匿名を希望するので、絶対にバレないように細心の注意を払い、
そのカメラマンのことを仮に“北さん”と呼ぼう。
(本名を省略。これならきっと特定できないはずだ)

匿名カメラマン
フィリピン取材の最終日。
ひと通り撮影も終え、最終日は街中取材。

北さんの歩き方が変だ。

まず、歩幅が異常に小さい。
さらに、両足のつま先が外側を向き、着地は極端にカカトから。
まるでペンギン。

北さんの額から吹き出る大量の汗はひどく粘着質で、
フィリピンの強烈な日射しだけが原因ではないことは明らかだ。
額には縦の棒線が走り、網が30%ぐらいかかっている。
ちびまるこちゃんのキャラクターだけの困った顔だと思っていたが、
まさか実写版があるとは。

そう。北さんはうんにょがしたいのだ。

汗をかき、目をシパシパさせて、マニラを歩く巨大なペンギン。
1歩、2歩、さ〜〜んぽっ!
3の数字で体をよじり、立ち止まり、空を仰ぎ見て大きなため息。

この珍獣を野放しにしておくわけにはいかない。


珍獣から人間に戻る旅が始まった。
といっても、トイレを探すだけだけど。

あれほどちびちび歩いていたこの珍獣。
目的が明確になった途端、ものすごい速さでついてくる。
それは理想的な競歩のフォームで、
動画で撮って日本陸連に送っていればと悔やまれる。

しかし、運悪くトイレを探すが最初のトイレは満室。
次はぼったくりの有料。

ここで黙って競歩を続けていた珍獣が初めて口を開く。

「○△×■☆◎◆△×■☆◎」

ナタデココ?
珍獣の言葉はわかりにくい。
あらためて聞いてみる。

「KOKODESURU」

こ・こ・で・す・る。ここでする!

珍獣は車の陰に身を潜め、尻をペロンとめくったのと同時、
いやめくっている途中のパンツのふちにつくかつかないかでうんにょを放出。
スロー再生で見直すと、まさに鼻差。

やっと、珍獣から人間に戻った北さん。
しかし、お約束の「紙がない!」。
手帳を破りよくもんで、紙の代わりにした北さん。
9月と10月のスケジュールがなくなってしまったが仕方ない。

人間に戻った北さんだが、何か動きがおかしい。
まだ一種の緊張感を帯びている。
その後の撮影のためかとも思い、
再び歩き始めるが、やはり動きがおかしい。

よく観察してみると、右手の指が曲がったまま固定され、
腕の振りも不自然な動き。まるで、エアーギブス。
右手に意識が集中しているのは明らかだ。

右手に意識が集中している原因……

さては、ついたな!

きったね。えんがちょ。

やたらと飲食店に入ろうとする北さんを見て自信が確信に変わる。
確実に手にうんにょがついている。

あえて指摘せずに飲食店に入ると、北さんが頼んだのは「ビール」。
え? ミネラルウオーターじゃないの?

どうするのか見ていると、
ビールをグイっと半分くらい飲んだと思ったら、
指にビールをちょろっとかける。

あ、今洗った!

ビールがかかった指をゴニョゴニョさせながら、
再びうまそうにビールを飲む。
そして、最後の1口ぐらいになったビールを再び指にかけ手をパッパと振って、
指先をクンクンして、いつもの北さんに戻ったのでした。

>北さん
「書いてくれよ〜」って言われても、
単に取材中に野グソをして手についただけの話で、
正直、「汚ねーなー」と思っただけで、これ以上、広がりませんから〜(泣・笑)
絶対にバレないように匿名で書いたのでこの辺でお許しを。

 

\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

登録
writer
PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
  • facebook
  • twitter
FOLLOW