深谷シネマ
実家が肉屋なので、極上の肉を食べに帰るのが一番だが、
もうひとつ理由がある。
それが僕の憩いの場「深谷シネマ」。
50席にも満たない「街の映画館」で料金は1000円ぽっきり。
NPO法人のもと、
映画好きの若者ボランティアや深谷市の協力で運営されている
何だか懐かしい感じの映画館。
いつもガラガラの平日16:30に
赤ら顔でやってくる自分は完全に不審者だが、
連日同じ映画を観にいったりもするので、
中には興味を持って話しかけてこようとする若者スタッフもいる。
でも、ここは人間関係を持たない憩いの場として取っておきたいので、
ニコニコはしているけど絶対に会話しない。
結果、不審者度は増すばかり(笑)。
今日はWBCを観ながら酔っ払っていると、
どうしてもキョンキョンにキュンキュンしたくなり、
「トウキョウソナタ」を観にいこうと決める。
先週すでに観た映画だが、酔っ払いながら1000円で
キョンキョンをドアップで観る以上の幸せはそんなにない。
しかし、「深谷シネマ」のスケジュールを調べると、
なんと「トウキョウソナタ」は終了し、
新しい映画「コドモのコドモ」に切りかわっている。
微妙……。
まったく興味のない映画だったが、
「流行の2番煎じなテーマと微妙なタイトルのこの映画を、
どう料理しているのだろう」といううがった見方の興味を
無理やり作り、いざ「深谷シネマ」16:30の回へ。
到着してまたまたガッカリ。
1日4回上映の1回目だけが「コドモのコドモ」で、
残りの3回はなんと「石内尋常高等小学校 花は散れども」。
もっと微妙……。
どうしよう、まったく興味がない。
まあ、せっかく千鳥足で来たのだから観てみようと入ってみると、
僕を含めて客は6人。いつもの感じ。
しかし、いつもと違って、
僕以外の客が還暦をとうに過ぎたであろうご年配の面々。
さすが、監督が90代後半。
観た感想。
この映画はぜひとも20〜30代の人に観てほしい。
きっと、激しくとまどうだろう(笑)。
何だか舞台を観ているみたい。
俳優の演技と人生の押し売りみたいで食傷気味。
「戦争」とか「教育」とか「人生」という多過ぎるテーマも、
「裏腹」とか「行間」とか深淵に見せる演出も、
すべてが薄っぺらくステレオタイプに感じてしまう。
たぶん、自分が奇抜なテクニックに慣れ過ぎ、
ちょっとインポになっちゃっているのと、
これまで接点があまりにもなかったからなんだと思う。ん〜。
監督の100歳近いという年齢、
映画界で尊敬されているってことですべてがOKで、
関わる人すべての眼差しが温かく協力的なんだろうなぁ。
なので、この映画を楽しむためにはきっと予備知識が必要。
監督の歴史や思想とか、生きてきた時代の空気とか、
何かを持って、つながりとして観ないとキツイ。
何も持たず、いきなり作品に出会ってしまった僕は、
ただただとまどうしかない。
監督は素晴らしい人格者で愛されているのはわかる。
俳優が抜群にうまいのもわかる。
きっと現場はいい雰囲気なんだろうなぁとも思う。
でも、まったく映画に入っていけずに、
寝ようかなぁと思ったときにふと気がついた。
年配の方々がとってもいい顔をして観ているのだ。
小さい映画館はスクリーンの明かりで館内が結構明るく、
観客の顔がよく見える。
笑い、泣き、感動し、完全に映画に入り込んでいる。
映画に入れずに、一人浮いてしまった僕の興味は
完全に観客の表情に移り、観客の表情が最もよく見える席に移動。
怪しまれないようにチラチラと観客の反応を見てばかり。
大杉漣の熱演に僕はただただ困るばかりなのだが、
年配の方々は涙し、ハンカチで目を拭っておられる。
そういえば年配の方々が泣いたり笑ったりしているのを
久しく見ていなかったので、ちょっと感動。
この映画、ただ自分がターゲット外だったってだけで、
年配の方々の心にはズドンと響いているようだ。
でも、キョンキョン観たかったな……。
さて、「深谷シネマ」のラインナップで今楽しみにしているのが、
「SRサイタマノラッパー」。
深谷中学校、熊谷高校出身の監督が、深谷のロケで
「地方都市に住む若者の煮え切らない悶々とした思い」を
テーマに描いた映画と聞けば、
深谷で生まれ育ち、熊谷西高校出身で、
地方都市で煮えきらずに悶々と生きていた自分としては興味津々。
「深谷シネマ」が週に3本くらい映画をやってくれれば、
深谷に住むのもちょっとありかも。