ウミウシの思い出 (前編)

※以下、僕の記憶なので、曖昧な部分もあります。

昭和天皇がウミウシに熱心だったのは有名な話だが、
(http://diving-commu.jp/divingspirit/item_3320.html)
ダイバーの間でも今や人気の定番生物。

パラオツアーでも、ギンガメとサメの狂乱を目の前にして、
ひたすら下を見ているウミウシ好きのダイバーさんがいたくらい。
カレントフックをしながらウミウシを探すダイバーを初めて見た(笑)。
 

しかし、ウミウシは、僕がダイビングを始めたころ(14年くらい前)は
ほとんどのダイバーが見向きもしない、知る人ぞ知る的な存在だった。

僕自身がそんなウミウシの存在を初めて気にしたのが
編集部に入って少し経った’97〜’98年ごろ。

伊豆取材から帰ってきたA先輩が、
「これはおもしろいよ」と言いながら見せてくれた写真がウミウシの写真。
見たことのないきれいな色彩に「スゲーっすね」と驚いた記憶がある。

何でも、ウミウシばかりを撮っている鈴木敬宇さんというガイドさんがいて、
おもしろそうだからと写真を借りてきたという。
これをきっかけに徐々に雑誌にウミウシが登場し始める。

思えば、ウミウシは、いろんな意味で救世主だったのかもしれない。

当時、伊豆のフィッシュウオッチングでは、
夏〜秋は〝季節来遊魚(死滅回遊魚)〟というキラーコンテンツがあったが、
冬場は少しもの足りなかった。

ダイバーは寒いし、魚も少ないのでお休み期間になってしまうし、
ガイドも「マンボウとかアンコウを見たい!」と言われても困ってしまう。

雑誌の場合も、冬場の伊豆特集は「透明度がいい!」、「渋滞が少ない!」、
「ダイビング後の温泉がたまらない」ってな感じで、少々苦しい(笑)。
しかも、グラフは内容というより色の組み合わせで考えられるので、
暖色系の色がないとどうしても寒々しいグラフになってしまう。

そんなときにウミウシ。

冬場でも見られ、しかも色彩豊か。さらに、動きが遅いので、
当時、すでに一人に一台となりつつあったデジカメでも撮りやすい
(※撮り方によってはウミウシは速い生物で、逆に撮りづらいんですけどね)。

ということで、’98〜‘99年頃には、世間ではまだまだ知られていないものの、
ダイビング雑誌ではすっかりお馴染みの存在になっていった。

そして、’99年にTBSブリタニカよりウミウシガイドブックが発刊され、
ウミウシ人気は不動のものとなる。
ダイビングダイビング
       鈴木敬宇著             小野篤司著

ウミウシ人気のターニングポイントは’99年で間違いないだろう。

実際、自分の99年の記事を読み返してみると、
こんなタイトルとリードを書いている。

(’99年『マリンダイビング』7月号より)
もう脇役とは呼ばせない! 
ウミウシ・オーディション
今まで名脇役として知る人ぞ知る渋い存在だったウミウシ。
しかし、昨今のウミウシ人気でついに主役の座を狙えるまでになった。
伊豆海洋公園・富戸には、美しいものから激レアまで役者は揃っている。
ここで、未来の主役たちを一挙に公開オーディション!

ウミウシは2000年代にはダイバーにはすっかりお馴染みの人気者となり、
その後、’00〜’05年には著名人がメディアでウムウシのことを取り上げるようになると、
一般の人まで知るような生物になった。

ブームも去り、最近ではすっかり当たり前の生物になっているが、
「何だろ、あの変なグミみたいな奴」とか言っていた自分からすると、隔世の感がある(笑)。

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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