妻帯オヤジの掟 〜それでもテックの世界へ踏み込めるのか!?〜
妻子あるオッさんが若いおネーさんに下心を抱いたら、
「私には愛する妻子がいるんだぜぇ」と、まず最初に断りを入れねばならない。
これは社会的に広く認知された”ちょいワル”の掟だ。
もちろん、私はこの手の話とは完全無欠の無縁だが、
私が良識派であることを皆様に広く認知していただくために、
ここに、この掟を引用させていだきました。
で、本題。
私は良識派であると同時にテックダイブのインストラクターでもある。
作業や調査、撮影等のお仕事もテックダイブ領域が中心。
なので、あらゆる分野において、いいおテクをお持ちね、
と言われると、お世辞でも喜ぶ。
つまり、何かにつけテックと深く関わる生活を営んでいるのだ。
よってここでも、まずしばらくは
良識派としてのテックダイブの話を展開させていただきます。
が、それは皆さんに積極的にテックダイブをお勧めするモノでは、あまり、ない。
むしろ、テックダイブにトライしたい気持ちの中折れを誘う可能性もあるかも。
もちろん、テックダイブは非常に奥が深く格別の快感や感動や感慨にふけることが可能なダイビングだがしかし、さぁ、みんなで楽しもう、というジャンルのモノでは決してない。
絶対的リスクはXL、お金もそれなりに必要、
準備だ計画だバックアップだと面倒も多く、
しかも“聞くところの”ラテンのおネーさん同様、
ハンパに関わると後悔先にEDとなりがちだ。
例えばケイブダイビングのこんなシーンを想像してみて下さい。
そこは、水底&天井が共にギリで体に迫り、ライトがなければ生粋の闇、
ヘマして巻き上げれば視界ゼロは当たり前というネイチャーラビリンス。
そこでの帰り道、先頭ダイバーが狭い隙間でスタックして身動き不能になったら…
または何らかの理由でパニックになり、暴れ⇒巻き上げ⇒視界ゼロ、
暴れついでに命綱のケイブラインを切ったら….これは、本人だけでなく、
奥の側のダイバーもろとも出口にたどり着けなくなる可能性が生まれる状況だ。
これは単なる例え話ではなく、
同様の状況が想像できるアクシデントは実際に起きている。
ディープダイビングに関しても、実例を絡めながら
ディープダイビングが秘める様々な危険について語るのはとても簡単なことだ。
つまり、テックダイブは、自らのミスはもちろん、他人のミスや、
時として自然の気まぐれでも命に危険が及ぶ可能性があることの自覚と、
そのリスクの受け入れが前提となる活動なのだ。
加えて、それを楽しみたいなら、真剣に取り組む決意もまた不可欠。
なぜなら、テックダイブは、舐めてかかると本人の危険はもちろん、
一人のミスが簡単にその場の罪もない人々全員の命をも危険にさらす可能性を持つからだ。
従って、テックダイブに関わる、イコール、
一般のレクリエーショナルダイビングとは別次元で
自他共に対する責任の痛感を強いられる世界に踏み込むことを意味している。
そんなこんなでテックダイブを正しく理解しているインストラクターは
安易な勧誘はしないし、甘い言葉も囁かない。
深い関係を迫る前に、
まず「私には愛する妻子がいるんだぜぇ」と告白するはずなのである。