「エア切れ=死の危険」ではない。スキルを経験しておくことの大切さ
「緊急スイミングアセント?やったことありません」ならまだよい方で、「緊急スイミングアセント?何それ?」とダイバーの口から聞くことがあります。
これは、講習中に何度も練習し、Cカードを取得してからも練習した自分としては、結構な驚きです。
先日、山中さんが、エア切れの際の対処法として、バディの重要性を指摘し、具体的に「“突然に空気が吸えなくなり、息を吐いた状態で辿り着ける距離”がバディと離れても良い限界移動距離です」という話をしていました。
エア切れで死なないためのバディとの「限界移動距離」とは? | オーシャナ
※付け足して言えば、やっぱり音が鳴るものは携帯しておくべきかもしれません
それでも、バディが近くにいない場合はどうすればよいのか?
とにかく浮上するしかありません。
この時、緊急スイミングアセント(以後、緊スイ)の経験がものをいいます。
もちろん、突然、エアが止まってしまったらなかなか余裕はないでしょうが、いきなりピタッと止まることは希で、いくらかの呼吸は残っている場合がほとんどです。
自分の場合、水深10mでエアが切れそうなことに気づいたら、あるいは、エア切れになるであろう事態に陥っても、驚きこそすれ、死ぬイメージはまったくありません。
なぜなら、水深10m程度からの緊スイの経験があるからです。
さらに、水深20mでエアが切れても、あまり自分が死ぬイメージはありません。
これは、昔、スキンダイビングの練習をよくしていて、水深20mに潜って帰って来る経験があるからです。
スキューバダイビングしかしていない人があまり経験することのない、“息ごらえをして浮上する”という経験があるので、20mから浮上するということが、そこまで怖いというイメージがないのです。
※もちろん、スキューバダイビングの場合は減圧症のリスクやエアエンボリズムのリスクがあって、よりリスキーですが
水深30mを超えて、見上げても水面が見えなくなったりするとドキドキするのは、「いつでも、とりあえず水面には帰ることができる」という感覚が薄れるからで、だからあまり深場は好きではないのかもしれません。
ましてや、ケーブなんて…笑。
何が言いたいかと言えば、“経験しておく”ことの重要性。
エア切れ、水中ではぐれる、などなど、緊急時と同じような状況と対処法を体験する練習ができればベストですが、漂流など、なかなか難しいようならシミュレーションしておくだけでも違います。
そういう意味では、Cカード講習でやる項目にはとても大事なことが詰まっているのですが、ここで少し思うのは、Cカード講習時の緊スイの練習って意味あるの?ということです。
いや、意味はあるのですが、ダイバーですらない初心者の時に形だけやってもあまり身になりません。
ダイバーになってから、Cカード講習時のスキルを理解したうえで練習すると、とても身になりますし、自信にもつながります。
自分も、ある程度ダイビングの経験を積んでから緊スイの練習をしたとき、「ああ、こうやって気道開けとけば勝手にエアって出るんだな」とか「そんなに難しくもないな」など、あれこれ考えながらやったので、Cカード講習の時にやった緊スイはやえったことだけしか覚えていないのに対して、この時の緊スイの感覚までよく覚えています。
ナビゲーションやスキンダイビングなど、すぐにでも生かせそうな実用的なスキルは、「あの時やっておけば」「ちゃんと身に着けたい」と気づくダイバーは結構いて、実際、オーシャナのスキンダイビング講習会も盛況です。
一方、緊急事態へ備えるスキルは現実感があまりないので、講習時以来、無視される存在になりがち。
ステップアップ講習を利用したり、信頼しているプロダイバーやバディと一緒に、今こそ復習してみるのもいいかもしれません。