イルカはサーフィンが得意?台風の時にイルカは何をしているのか

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御蔵島のイルカ(撮影:寺山英樹)

ファンフォンとヴォンフォン。

何やらパンダの名前みたいでカワイイ響きですが、先日の台風18号、19号のアジアンネームです。
こやつらのせいで、10月の週末、連休をやられてしまった読者も多いのではないでしょうか? 

ファンフォンは、4日、5日の週末。
ヴォンフォンは11〜13日の連休に絡んで本州を通過。
御蔵島では幸い人的被害はありませんでしたが、ファンフォン通過時は波で桟橋の街灯が折られ、灯台の土台のコンクリートがごっそり欠けるという被害が出ました。

もちろん、これら週末のお客様は全てキャンセル!
民宿さんやウォッチング船には大きな影響です。

でも「自然だから仕方ない」という感覚が色濃く残る御蔵島。
台風休みは、残念半分、ワクワク半分で過ごしている若者が多いようです。

御蔵島での台風の過ごし方(ヒト)

御蔵島に台風が最接近する時は、客船が東京竹芝を出港しません。
ということは、絶対に船が来ないということ。

船が来るかもしれない限り毎朝5時起きの桟橋や民宿で働く人も、この時ばかりは夜更かしができます。
イルカウォッチングのガイドさんや民宿手伝いのバイトさんも、お休み決定です。

良い歳をした大人が暇を持て余して、台風トランプや台風オセロ、台風ジェンガ大会はいろいろな所で開催されているようです。

また最近は、真っ昼間から体育館を借りての「台風バレーボール」や「台風フットサル」も2チームができるほど人気です。

そして夜は、ここぞ!とばかり飲み会に気合いが入ります。
毎日飲んで入るのですけどね。

御蔵島での台風の過ごし方(イルカ)

人は室内で過ごせますが、イルカはきっと大変です。
沖でも10mを超える波が崩れるようなウネリで、イルカはどのように過ごしているのでしょうか?

気になりますが、本格的に台風が近づいている時は調査に行けないため、さっぱり分かりません。

ただ、台風が近づく数日前から巨大なウネリが先に届くことがあります。
島の言葉で「土用波」と呼ばれる波です。

桟橋付近は凪ぎだけど、島の南側に大きなウネリがあるようなとき、イルカはウネリのある付近に集まっていることが多いです。

沖でゆっくり泳ぎながら、ウネリ待ち。

大きなウネリが来たら乗って岸に向かって一直線!
という「波乗り」行動が良く見られます。

小さなウネリには乗らないところなど、まさに波待ちをするサーファーのようです。

このような時は、人にあまり興味を示さず、スピードに乗って泳ぎ去ることが多いです。

大きなウネリに乗って岸近くまで行き、海岸に打ち付ける直前に波の裏からジャンプして飛び出す姿も良く見られます。
見ている方は、打ち上るのではないか?と心配になるくらい、ギリギリまで波乗りしています。

※海外のイルカも波乗りが好きなようです
20 surfing dolphins line up to catch a wave | Daily Mail Online

波乗りといえば、船の舳先にできる圧力波に乗ることも良く知られていますね。
バウライディングと呼ばれるこの行動、船が大きければ大きいほど良い波がたつのか?

大きな船が走ってくると一目散に向かって行くことが良くあります。
この時も、あまりスイマーに興味を示さない事が多い気がします。

バウライド中のイルカ(提供:小木万布)

崩れる波の裏側(沖側)から飛び出して波を回避するには、相当の泳力と波の動きに慣れていないとできないことです。
高速で進む船の舳先について、自由に泳ぐイルカを見ていると、プロペラに接触しないか? と心配になりながらも、その泳力に感心せざるを得ません。

きちんと調べていませんが、波打ち際ギリギリまで波乗りしているのは、ワカモノの群れが多いような気がします。
もしかすると、台風時の巨大なウネリや波の中でも平気で泳ぐための練習になっているのかもしれないなぁ…と思っています。

さて、久々の台風一過となったこの週末。
たくさんのお客様が来られました。
水温は約25℃、台風後のイルカたちも変わらず、元気に泳いでいるようです。

御蔵島のイルカウォッチングシーズンもあとわずか。
11月15日までとなります。
お待ちしています〜。

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writer
PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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