日本でオススメのホエールウォッチング3エリア~イルカが休みの冬はクジラの海へ~

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トンガホエールスイムのザトウクジラ(撮影:越智隆治)

御蔵島はイルカウォッチングシーズン終了。12月に入って冬の風物詩「ニシのテッパツ(すごい西風の意)」が吹きすさんでいます。今月からガタンと客船の就航率も下がることでしょう。

もちろん、観光に来られるお客様は限りなくゼロ。誰も来ない観光案内所のオフィスで、ひたすらMacの画面とにらめっこしながら、夏にできない仕事に勤しんでいます。

風の音を聞きながら、静かなオフィスでポチポチポチポチ・・・
うーん、海に行きたい。

読者の中にも、「冬でも海に行きたい!」「イルカ・クジラみたい!」という熱心な方が多いことと思います。そこで、今回は寒い御蔵島から離れて南の海へ!ザトウクジラとウォッチングサイトについてご紹介いたします。

世界中に広く分布するザトウクジラ

ザトウクジラのブリーチング(提供:OWA)

水面を割って豪快にジャンプ!ブリーチングと呼ばれる行動です(提供:OWA)

ザトウクジラは、最大15m程になるヒゲクジラです。極域から熱帯域まで世界中の海に広く分布しています。北半球では夏場、ベーリング海や北極海など北の海で捕食します。そして冬になると、暖かい南の海へ移動して繁殖、出産を行うというサイクルで生活しています。

日本国内では、小笠原諸島周辺や大隅諸島から八重山列島までの南西諸島周辺が繁殖海域となっており、冬になると多くのクジラが集まってきます。

捕鯨時代はたくさん捕られて減少していたのですが、商業捕鯨休止以降、徐々に頭数が回復している種です。

大きな胸ビレが特徴的で、繁殖海域では豪快なペクトラルスラップ(胸ビレで海面を叩く行動)やブリーチング(巨体のほとんどを水面から飛び出させるジャンプ行動)など多彩な行動を見せてくれるので、ウォッチングの対象としては最高のクジラです。

ザトウクジラのペクトラルスラップ(提供:OWA)

長い胸びれを水面から出して叩くペクトラルスラップ(提供:OWA)

ザトウクジラはどこで見られる?

上で述べたように、暖かい南の海です。秋と春の移動時期には御蔵島周辺でも見ることができますが、ウォッチングをするなら小笠原や沖縄方面が確実。

南半球ならオーシャナの越智カメラマンが通うトンガなどが有名ですが、日本なら小笠原諸島、奄美大島、沖永良部島、沖縄本島、座間味島、久米島などが知られています。

特に最近は、ホエールスイム(!)を行っている場所もあり、海での泳力に自信のある方は、トライしてみると良いかもしれません。

時期は、どこでも12月後半から4月中頃がシーズン。ちょうど、御蔵島のイルカウォッチングお休み期間と重なっていて、競合しないので好都合!心置きなくオススメできます。

著者独断! 日本のおすすめウォッチング3エリア

■東京都 小笠原・父島

1989年、日本で初めてホエールウォッチングを始めた小笠原。国内ホエールウォッチング発祥の地です。現地には小笠原ホエールウォッチング協会があり、調査研究も盛んに行われています。国内有数の、かなり高品質なツアーが期待できます。
ザトウクジラシーズンが終わってもマッコウクジラ、ハシナガイルカ、ミナミハンドウイルカウォッチングもあり、まさに鯨類の宝庫。さすが世界遺産の海です。

■沖縄県 座間味島

小笠原に遅れることたった1年。1990年からウォッチングが始まっています。
座間味のホエールウォッチングの特徴は「見つけてから出航!」。座間味村ホエールウォッチング協会職員が毎日、高台からクジラを探しています。
見つかってから船とお客様に連絡をして出航するので、遭遇率が格段に向上。クジラを見るまでの時間も短縮されるので、船酔いが心配な方にも、比較的優しいツアーとなっています。

■鹿児島県 沖永良部島

筆者は参加したことが無いのですが、ホエールウォッチング界の新星。
なんとザトウクジラと一緒に泳ぐ「ホエールスイム」を実施しています。沖永良部島クジラスイム・ホエールウォッチング協会が、安全のためのルールを決めて、クジラの状態に沿った形でスイムを行っているようです。沖永良部は、クジラだけでなく、洞窟ケービングなど新たな陸上のアクティビティを積極的に推進していて、注目の島です。
詳しくは沖永良部島観光連盟へ。

いかがでしたか?
少し遠い場所ばかりですが、寒い本州を脱出して行く価値があると思います。

この冬は、ぜひ〜!

■参考文献

『新版 鯨とイルカのフィールドガイド』(大隅清治監修・東京大学出版会)
『クジラ・ウォッチングガイドブック』(水口博也著・TBSブリタニカ)

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PROFILE
山形大学農学部で、テントウムシの産卵生態を研究をしていたが、「もうちょっと大きな動物を研究したいなぁ」と路線変更。
三重大学大学院在学中に、御蔵島をフィールドとしてイルカの行動研究を始める。

2004年、御蔵島で観光協会設立に関わり、同大学院を中退。
現在、御蔵島観光協会勤務。

観光案内業務、エコツーリズムの普及活動、イルカの調査取りまとめを行っている。

■著書:
「イルカ・ウォッチングガイドブック」水口博也(編著)144pp. ウォッチングと生態研究の両立-御蔵島のイルカをめぐって
「クジラと日本人の物語―沿岸捕鯨再考」小島孝夫(編集) 第4章クジラと遊ぶ..
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