水中ご遺体捜索 前編


まずは、こちらをご覧ください。
※編集長ブログ→水中ご遺体捜索の記事を掲載するにあたり

■始まりは「何かしなくては」の強い意志と行動力

日本中が「今、自分にできることは何だろう?」と自問自答している中、
「できることは潜ること」を実践しているダイバーたちがいる。

卓越したダイビング技術を駆使して水中の遺体捜索を行なっている、
NAUIのコースディレクターの方々である。

以下、今回の活動の発起人である、広島県在住のNAUIコースディレクター
大坪俊彦さんの報告をまとめさせていただき紹介する。

そもそも発端は、震災直後から、被害地域があまりにも広範囲なため、
ボランティア活動の必要性を強く感じた大坪さんの行動から始まる。

初めてのボランティア活動ということで、まずは念入りに情報収集。
ボランティアの心得から始まり、ボランティアの範囲、
ボランティア活動を行うためにはどういう準備や方法があるのか、
被害状況の把握、ボランティアの受け入れ、ニーズなどを念入りに調査。

人や車が多く流されことを報道で知った大坪さんは、
水面や水中での捜索活動とそれに伴う人的支援が必要だと考える。
そこで、海上保安庁、海上自衛隊、宮城県警、岩手県警に対し、
救助並びに捜索へのボランティア協力の打診を行なう。
あわせて、所属ダイビング団体であるNAUIに対し、
団体としてのボランティアへの参加を促した。

■水中支援は困難に直面。支援先も変更

しかし、民間団体が潜ることは責任の所在や指揮系統の問題等から難しく、
NAUIとしても、そのような活動への支援・呼びかけなどは、
団体としては一切考えていないとの返答。

そこで、大坪さんは、水中での捜索活動への若干の可能性は残しつつ、
マスコミへの露出が少なく、個人・団体とも支援が少なそうでありながら、
被害の甚大さが想定される岩手県での陸上支援活動に主眼を切り替え準備を進める。

しかし、早くからボランティアの県外受け入れも始まり、
社協(各自治体のボランテイア活動の窓口であり拠点)も機能している宮城県と違い、
岩手県に関しては、把握するどころか情報が皆無に等しい状況が続く。

いわゆる、支援格差である。

各自治体の社協とは全く連絡が取れず、岩手県社協に連絡をしても、
各地の状況はおろか、事態の把握すらできていないのか、
暖簾に腕押しの状態が続く。
支援物資に関しては、受付の窓口すらわからないと返答されてしまう。

このような状態が3週間近く続いたため、
一刻も早い支援の必要を感じた大坪さんは、方針を切り替え、
比較的情報が開示され、ボランティアの県外受け入れもしている、
宮城県石巻市入りを決断。
並行して、各団体への捜索活動への協力も打診し続ける。

石巻では、社協並びに社協から紹介を受けたNPOと連絡を取りあいながら、
現地のニーズに合った支援物資の選定、供給方法を決定。
その際、生鮮食品の不足が深刻なので、地元佐木島の物産部会に打診し、
45ケースもの柑橘類の提供を受ける。

広島県の三原社協で、ボランティア登録並びに
ボランティア保険の加入手続きを済ませ、ボランティア保険に加入。
災害ボランティアに行くのは、三原社協始まって以来とのことだった。

■岩手県の水中遺体捜索へ

出発日を4月8日に定め、後は大学時代の後輩と出発するだけとなった3日前。
たまたま岩手県山田町に派遣されていた三原社協職員が三原に戻り、
大坪さんのことを知り、山田町でのボランティア活動を要請。
そこで急遽、行き先を変更することになる。

山田町の実情は、ボランティアセンターが奇しくも出発日の4月8日
にようやく立ち上がったばかりで、マスコミへの露出も少なく、
震災復興途上地で、まだまだ手付かずの状態。

その中で、北海道のNPO法人「大雪りばぁねっと北海道河川広域救難隊」が、
震災2週間後に現地入りし、ボランティアセンター内で、
水面での遺体捜索活動をしていて、
水中捜索ができるダイバーを要望しているとの情報も含まれていた。

単独潜水の不安、現地の情報が皆無、タンク充填の問題など、
水中支援の諸問題が解決できず、しかも支援物資満載のため、
持参器材のスペースも確保がままならない中で、
なんとか必要最低限の器材とタンク2本を積み込み、
捜索に関する計画と想定をしてから出発したのだった。

(続く)
※中編は28日1:00、後編は6:00にアップします。

■大坪さんへの支援・協力(あいうえお順・敬称略)
朝日養素、イオン三原店、イオン三原店同友店会、浮城東通商栄会、
大本生生店、佐木島物産部会、下山根畳店、竹野八百屋、
ダンク ダイビングスクール、土生商船、堀江宝飾店、松尾内科病院、
水兼勇人税理士事務所、三原社会福祉協議会、山下不動産、
(有)大坪スタッフ一同、(有)カメサキ、レイダイビングスクール、
その他個人の皆様

■支援物資
佐木島物産部会のはっさく他柑橘類46箱・
義援金にて購入した長靴40足・ゴム手50枚・水100㍑・チョコレート1梱包・
軽油・テディーベアの縫いぐるみ54個・ティッシュ40箱・
トイレットペーパー96ロール・下着多数・オムツ多数・土嚢袋200枚・
インスタントラーメン1梱包・インスタントコーヒー1箱・醤油1㍑×150本・
シャンプー&コンディショナーのサンプルサイズ300セット・ブルーシート15枚・
トマト10ケース・きゅうり10ケース・ウエットティッシュ多数・焼酎2㍑×6本他

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PROFILE
法政大学アクアダイビング時にダイビングインストラクター資格を取得。
卒業後は、ダイビング誌の編集者として世界の海を行脚。
潜ったダイビングポイントは500を超え、夢は誰よりもいろんな海を潜ること。
ダイビング入門誌副編集長を経て、「ocean+α」を立ち上げ初代編集長に。

現在、フリーランスとして、ダイバーがより安全に楽しく潜るため、新しい選択肢を提供するため、
そして、ダイビング業界で働く人が幸せになれる環境を作るために、深海に潜伏して活動中。

〇詳細プロフィール/コンタクト
https://divingman.co.jp/profile/
〇NPOプロジェクトセーフダイブ
http://safedive.or.jp/
〇問い合わせ・連絡先
teraniku@gmail.com

■著書:「スキルアップ寺子屋」、「スキルアップ寺子屋NEO」
■DVD:「絶対☆ダイビングスキル10」、「奥義☆ダイビングスキル20」
■安全ダイビング提言集
http://safedive.or.jp/journal
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