“水清いのに魚も棲む”サンゴの海

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プロフェッサー・パパもんの「我潜る。故に我あり」

すごく一般的にいえば、タイやモルディブなどの植物プランクトンの多い海では
魚影は濃いんだけど、水は緑色に濁ってしまって透明度はよくない。
他方、外洋や、ダイビング・サイトでいうとグアムやロタなどがそうなんだけど、
スコーンと抜けた透明度を誇る海には生き物が少ないのが自然の理だ。

まさに水清ければ魚棲まず。

パパもんはそういう地形ポイントで、
その複雑な地形が織りなす光と影を味わうのも決して嫌いじゃないんだけどね。
でも多くの場合、さぁ、どっちを選ぼうかというジレンマに多くのダイバーは悩まされるのだが、
その自然界の掟を帳消しにしてくれるダイバーの強い味方がいる。

サンゴ礁がそれだ。

陸上では、森林や熱帯雨林などの植物が酸素を作り出してくれているおかげで、
人間も含めたすべての生物はその酸素を吸って生きている。
よく勘違いする人がいるが、植物ですら生物だから、呼吸によって酸素を吸い、
二酸化炭素を排出しているのだ。
ただ植物は、太陽の光を浴びている日中は光合成を行う(理科で習ったよね)ので、
生み出す酸素の方がずっと多いのだ。

水中で通常、その役割を果たしているのが植物プランクトンだ。
この植物プランクトン、いわゆる「春濁り」の原因でもあるのでダイバーからは忌み嫌われがちだ。
でもこの植物プランクトンが偉いのは、
生物が生きていくために必要な酸素を生み出しているからだけではない。
植物プランクトンは海の食物連鎖の根幹にあり、これが増加する事によって、
それを餌にする動物プランクトンが増え、さらにそれを餌にする生き物が育つ。

ところで海の中で酸素を光合成しているのは植物プランクトンだけじゃない。

サンゴと共生している褐虫藻も光合成をする。
しかも奴らが作り出しているのは酸素だけではない。褐虫藻は光合成をすることで、
海水中に溶け込んだ二酸化炭素とカルシウムイオンを化学反応させ、
酸素のほかに炭酸カルシウムも作り出す。
この炭酸カルシウムがサンゴ礁という地形を形成する土台になる。

サンゴ礁の海が植物性プランクトンのいないクリアな透明度の高い水質を保ちつつも、
そのままでは栄養状態の乏しい、動物が生きていくには厳しい環境になってしまうことなく、
逆に多くの水中生物を擁し、生命力に満ちあふれているのもここにその秘密がある。

サンゴのなかに住む褐虫藻が酸素を作り出す事によって、
水中生物に生存可能な環境を与えるだけじゃない。
熱帯・亜熱帯の水域総面積1億9000万平方キロメートルの
わずかに0.3%以下の面積(62万平方キロメートル)にしか存在しないサンゴ礁だが、
それにもかかわらず、どんなに少なく見積もっても100万種以上、
多く見積もれば900万種にものぼる生物種がそこで安心して暮らせるという生活環境も形成している。
(大森信+ボイス・ソーンミラー『海の生物多様性』、築地書館69頁)

この褐虫藻も水温が30度を超えるとサンゴから逃げ出してしまい、
いわゆる「サンゴの白化」が起こって、そのままではそのサンゴは死滅してしまう。
ここ数年、地球温暖化の進行からか沖縄や八重山の海ではこの白化現象が目立つ。

BEGINの「島人ぬ宝」にも歌われているが、汚れてくサンゴや減っていく魚にたいして、
パパもんもダイバーの一人として何とかしたいとは思ってはいるのだけど、
実際にはどうしたらいいのか名案があるわけではない。
何とか皆で知恵を絞り合ってこの豊かな海を次の世代、
次の次の世代にも残して行きたいものだよね。

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