僕とおかんと最後におとん
久々に埼玉の実家に帰省中。
不肖の息子とはいえ、腹を痛めた子の帰りとあって、
母・みどりはテンションあげあげ。
しかし、親というものは、
離れていればこそ大事だと思えるもので、
実際に接すると恥ずかしく、少々鬱陶しくもある。
帰省するとき、自由業な僕は
あまり心配させるわけにはいかないので、
小奇麗な格好をして帰る。今回はスーツ姿。
指輪や時計、サングラスなど小物類も割と高価なものを
選んで身に付けている。
80㌔オーバーの巨漢な母・みどりだってやはり女性。
そんな僕を見て、安心だけしてくれればいいのだが、
若干、目がハートになる……。
こら、モジモジするな。
それだけならいいのだが、田舎のおばちゃん特有の性分で、
おばちゃん仲間に息子を自慢したがる。
自慢されるようなもんでもないと自覚しているこっちとしては、恥ずかしいったらありゃしない。
家に帰ると、おばちゃん達がいっぱい。
田舎のおばちゃんたちは、
わかりやすい格好をした僕を見て、
「あら〜いい男〜」とか「キムタクみたい」など、
ヤイノヤイノ言っている。
そして、母・みどりはご満悦の様子。
何の会だ……。
僕も適当に愛想を振りまいていると、
母・みどりが恥ずかしい自慢を始める。
「海ばっかり行っちゃって、なかなか帰ってこないのよ。
この間もパリス? 再来月はモルジブ? 行くのよね〜」
「へ〜〜すごいわね〜」
赤面
やめてくれ〜。
そういう自慢、一番恥ずかしい。
それにパラオだから。ヒルトン姉妹か。
「雑誌のお仕事も忙しくてね〜。
いつも登場しているみたいだから」
「へ〜〜すごいわね〜」
赤面
やめてくれ〜。
それもかなり恥ずかしいキーワード。
それに俺がどんな登場の仕方しているか知ってるのか。
恥ずかしくて恥ずかしくて
だんだんイライラもしてきたのだが、
そんな母・みどりの自慢話にも、
おばちゃん達は嫌味も感じていないようで、
普通に食いついている。
それに、誰も見ているわけでもないので、
僕もとりあえず乗っておくことにした。
ネコザメとの遭遇をジョーズと戦ったくらいに、
日々自宅に篭ってデスクでパソコン叩きまくり、
たまにち○こをいじくっているだけなのに、
日々世界を股にかけ、女はすべてやり捨てるぐらい
大げさに自分のことを話し、
毒蝮三太夫のごとくおばちゃん達をイジり、
その場は、リアルなドリフ笑いの渦に。
まあ、これくらいで喜んでくれるならお安い御用か。
帰省中はずっとこんな感じ。
こっちはゆっくりしたくて帰るのに、
母・みどりは僕に絡みたくて仕方ない。
僕がビールを飲んでいると、
「私も久しぶりに飲んじゃおうかしら」
などとくる。一瞬イラッとくるが、我慢我慢。
「おう、じゃあ飲みなよ」
と言えるようになった。大人になったもんだ。
今日も「11時までにお店に来て」というので、
行ってみるとパートのおあばちゃん達がいて、
「あ!ヒデキ。ちょうどいいわ。これうちの息子」と紹介される。何がちょうどいいだ。来いって言ったくせに。
親バカもここまでくれば大したもんだ。
パートのおばちゃん達だって、
僕を見てそりゃ素敵だの何だの言うが、
母・みどりは先日友人の孫を見せられたときのことを
思い出してほしい。
「まさか不細工だって言えないから褒めておいたけどね、アッハッハッハ」と言ってたじゃないか。
勝手に話を何倍にもして僕の自慢をしているが、
こっちは会社辞めたり、会社立ち上げたりで心中ハラハラで、日々生きた心地がしていないってのに。
ただ、今のところ、母・みどりが自慢している内容は、
正しくはないが、嘘でもない。
か〜なりデフォルメされているが。
しかし、デフォルメすらできない事実しか僕になくなって、
このトドのような母がしょんぼりする姿も見たくはない。
三浦じゅんじゃないけれど、
疲れるが帰省はプレイと考えよう。
そして、母・みどりの自慢話に現実の僕が追いつけるように、
がんばるしかない。
しかし、こんな決意をしたところで、
「世界で一番カッコいいのは父・スズオ」などと
臆面もなく言いやがるからな〜(笑)