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ダイビング後、12時間以内に飛行機搭乗しても何の問題も起きないダイバーと、もっと長く時間を空けても結局、減圧障害に苦しむダイバーがいます。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか?潜水医学専門医であり、DANアジア・パシフィックのシニア・ダイブ・メディカル・コンサルタントでもあるジョン・パーカー医師がこの問題について考察しました。

飛行機搭乗で起こる減圧障害について

※本記事はDAN JAPANが発行する会報誌「Alert Diver」2018年4月号からの転載です。

まだ不完全な搭乗後の減圧障害リスク
まずはガイドラインに従うことが大事

ガイドラインを無視してダイビングの直後に飛行機搭乗しても何ともないダイバーもいれば、その一方で、注意深くガイドラインを守っていても減圧症を発症するダイバーもいることに、不満を抱く気持ちはよく理解できます。

減圧症を発症しやすい人が存在する理由は、判明していません。何らかの遺伝的な要因が発症のしやすさに影響している可能性があります。また、各個人の発症のしやすさは、運動、水分補給、アルコール摂取、喫煙や不安などの要因によって日々変化します。免疫反応の亢進によって、減圧によって発生した気泡に対してより敏感に反応し、症状を発生させるかもしれません。このため、現在の健康状態も発症を左右する因子となる可能性があり、これが、体調が悪いときにダイビングしないよう呼びかける理由のひとつとなります。

ある1日は問題がなかったダイビングプロフィールが、次の週は減圧症を引き起こすかもしれません。医学は未だ不完全な学問であり、すべての現象を医学的に説明できるわけではありません。私が医師としてできるのは、少なくともガイドラインには従うこと、従わない場合にはすべてのリスクを自分で背負うようアドバイスすることだけです。

DANアメリカでは、ダイビング後の飛行機搭乗に関する広範な研究を行っており、現在採択されている推奨事項は表1のようになります。

表1《クリックで画像を拡大できます》

安全なインターバル時間はない
推奨は24時間

表1に加えて、DANアジア・パシフィックの創設者であり、「DCI: A Simple Guide」(減圧障害:簡易的指針)の著者であるジョン・リップマン氏は、次のようにコメントしています。

「ダイビング後の飛行機搭乗に関して、絶対に安全な魔法のインターバル時間はありません。飛行により減圧症が誘発されるリスクは時間とともに減少し、ダイビング後搭乗までのインターバル時間が長いほどそのリスクは低くなります。一般的に、私たちはダイバーに対し、ダイビング後の飛行機搭乗前には24時間空けることを推奨しています。ダイビング後に減圧症が疑われる症状を発症し、その後に飛行(または高所までのドライブ)を計画している場合は、DANが提供する緊急ホットラインに電話し、アドバイスを受けることをお勧めします。高い高度に滞在中、もしくは飛行後に症状が大幅に悪化する可能性があるためです」

ダイビング後搭乗までのインターバル時間は24時間を推奨

飛行機降機直後のダイビングの危険性
脱水状態が減圧障害を誘発する

ダイビングスポットに行くには、しばしば長い時間、もしくは複数回の飛行機搭乗が必要になり、目的地に到着する前に24時間以上かかる場合もあります。ダイバーの中には、飛行機で現地に到着した直後にダイビングを開始する人もいます。これらのダイバーは、減圧障害発症に関してより大きな危険にさらされているのでしょうか? DANの医療チームでは、この問題に対しても取り組んでいます。

長時間のフライト、特にいくつもの時間帯を越えるような場合には、軽度の脱水症状が起こることがあります。また、アルコール摂取も脱水症状の発症に寄与することがあります。一般的に言えば、脱水状態が起きていると不活性ガス(ダイビングの場合は窒素)排出があまり効果的に行われないため、脱水状態にあるダイバーは減圧障害にかかりやすくなる、と考えられています。

減圧障害発症者の約37%は旅行初日に発生
保守的なアプローチを

飛行機降機後のダイビングと減圧障害の関連があるとしたら、ダイビング旅行の初日に減圧障害が多く発症することが予想されます。実際に、複数のデータが、複数日にわたり潜水が予定されているダイビング旅行の初日に、多くの減圧障害が発症していることを示唆しています。
 
カリブ海で取得した88件の研究データでは、減圧障害発症のケースのうち33〜37.5%がダイビング旅行の初日に発生し、それ以外のケースでは2日目から7日目に発生しています。ただし、カリブ海や太平洋へのダイビング旅行をする観光客が数千人いることを考えた場合、この数字は因果関係を確立するには小さすぎるでしょう。

飛行機降機後に24時間の待機時間を強要することはできません。しかし、飛行機降機後のインターバル時間に関するこのような保守的なアプローチは、ダイバーに水分補給、気候や時間帯への順応、長い飛行時間からの休息をもたらすことができるので、合理的な判断でしょう。

ダイビングと飛行機搭乗に関するQ&A
飛行機搭乗を必要とするダイビングにまつわる素朴な疑問にお答えしました!

Q.01 民間航空機内の気圧は何気圧?

A.気圧は高度により変化します。地表(高度0m)の1気圧は、上昇と共に減少していき、通常の飛行高度である3万3,000フィート(高度約10,000m)では約0.2気圧になります。この変化に人間は耐えられないため、航空機内は約0.8気圧に与圧(乗り物内部の気圧を一定に保つこと)されています。

Q.02 1気圧から0.8気圧の気圧減少でも減圧症に気をつけないといけないの?

A.ボイルの法則により、1気圧から0.8気圧の変化で、気体は1.25倍に膨張します。そのため、体内に気泡があっても地上では無症候性であったものが、減圧症を発症するリスクが高まります。減圧に伴う気泡の発生も懸念されます。また、機内圧は0.8気圧以下となることもあります。

Q.03 搭乗中に痛みなどの症状がでたらどうすればいいの?

A.まずはキャビンアテンダントに報告してください。必要に応じて機内ドクターコールも行われるでしょう。ただし、機内に潜水医学の知識を持つ医師が偶然乗り合わせている確率は低いと考えられます。

なお、機内コールに応じた医師が、地上に待機する医師と相談できる仕組みを持つ航空会社もあります。いずれにせよ、減圧障害の危険性の高いダイビングをしない、航空機搭乗前には必ず推奨されている時間を空けてから搭乗する、減圧障害が疑われる症状が出ている場合には航空機に搭乗しない、などの注意が必要です。

Q.04 減圧障害の疑いが少しでもあった時点で搭乗は延期すべき?

A.国内の場合、まずはDAN JAPANのホットラインに電話し、相談してください。重症度により、アドバイスを行います。海外の場合、旅行先のエリアを担当するDANに電話して相談してください。現地での再圧治療が必要な場合もありますので、指示に従ってください(海外のDANは日本語が通じません。このため、英語に不安のある方は、現地サービスのスタッフに連絡を依頼してもいいでしょう)。

Q.05 飛行高度が低い路線の場合はすぐに搭乗していいの?

A.2002年の潜水後の航空機搭乗に関するワークショップ(アラートダイバー55号参照)での搭乗制限は、減圧症の症状がなく、客室与圧が高度2,000〜8,000フィート(高度約610〜2,438m)の搭乗に適用されます。つまりは、2,000フィートより低い高度で飛行する、ないしは高い機内圧で飛行する場合の制限はありません。しかし、航空機は天候等で、予定より高度を上げる場合があります。そのため、すぐの搭乗は避けることが賢明な判断でしょう。

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今回転載した記事はDAN JAPAN会員向けの会報誌「Alert Diver」に掲載されているもの。もっと詳しい内容や最新の潜水医学、安全情報を知りたい方はDAN JAPANの会員情報をチェック!会員にはダイビングに特化した保険や医療関連サービスも。
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