スキューバダイビング直後の飛行機搭乗はNG! なぜ? 一日空けるべき?

きっと多くの方が、沖縄や海外などの綺麗な海を潜ってみたいと思うスキューバダイビング(以下、ダイビング)。でも、実はダイビング直後には飛行機に乗ってはいけないというのはご存じでしょうか。

本記事では、なぜダイビング直後に飛行機に乗ってはいけないのか、どれだけ時間を空けるべきかなど、ダイビングにおける飛行機移動の制限について詳しく解説します。

また、飛行機以外にもダイビング後に避けるべきものや、対策についても解説。最後にダイビングをめいっぱい楽しむためのスケジュールの立て方もご紹介します。ダイビング旅行に行く前にぜひ参考にしてください。

ダイビング後、12〜24時間以上空けてから飛行機へ

ダイビングをしてから飛行機に乗るまでにどれくらい時間を空けるべきかは、ダイビングの種類や深度、回数によって異なります。一般的な目安としては、一本だけダイビングをした場合は12時間以上、二本以上や数日続けてダイビングをした場合は18時間以上、減圧停止が必要なダイビングの場合は24時間以上空けることが推奨されています。

ではなぜ、ダイビングをしてから飛行機に乗るまでに時間を空けなければならないのでしょうか。それは、重度になると日常生活や命にも関わると言われる「減圧症のリスク」が高まるからです。

ダイビング直後は飛行機に乗ってはいけない!

減圧症とは

減圧症とは、ダイビング中に体に溶け込んだ窒素が気泡になってしまい、血管や身体の組織にダメージを与える症状です。これにより、関節の痛み、息切れ、めまい、さらには麻痺や意識喪失などの深刻な症状が引き起こされることがあります。適切な処置が遅れると、命に関わる場合もあります。

減圧症のメカニズム

ダイビング中には、体や身につけているものは、圧力の影響を受けます。わかりやすい影響でいうと、鼓膜が水圧で圧迫されることによる耳の痛みが挙げられます。そのまま深く潜ってしまうと、さらに水圧が高くなり、鼓膜が破れてしまうため、耳抜きを行う必要があるのです。

圧力の影響を受けるのは耳だけではありません。ダイビング中に吸うタンク内の空気も影響を受けます。減圧症の原因になるのは、この空気の約8割を占める窒素です。陸上と違い、海の中という高い圧力下では、体に窒素が溶け込みやすくなります。深ければ深いほど、潜水時間が長ければ長いほど、窒素が蓄積されていくのです。

窒素が体にたくさん溜まった状態のまま浮上をすると、圧力が下がり、血液や身体の組織(皮膚、骨、血管など)の中で窒素が気泡になってしまい、減圧症の症状を引き起こします。一般的には関節や筋肉の痛み、めまい、疲労感が初期症状として現れますが、重度の場合は麻痺、意識喪失、呼吸困難などが生じることがあります。

減圧症を防ぐには

減圧症を防ぐには、窒素を体からきちんと排出する必要があります。体に溶け込んだ窒素は、水深が浅くなるにつれてゆっくりと排出されていくので。決して急浮上はせずに、安全停止をしっかり行うことがとても重要です。

また、ダイブコンピュータやダイブテーブルを活用し、深度や回数に応じた安全なダイビング計画を立て、それを守ることも減圧症の予防につながります。

しかし、安全なダイビング計画を守り、ゆっくり浮上し安全停止を行ったとしても、ダイビング後の行動や体調によっては減圧症を発症することもあるので、陸上での対策や体調管理をすることが大事です。

減圧症を防ぐ

ダイビングから飛行機搭乗まで時間を空けるのは体内の窒素を減らすため

ダイビング直後の飛行機搭乗が減圧症のリスクを高めるのは、約10,000m上空を飛行する機内の気圧が地上より低いことに起因します。ダイビング直後は窒素が体から抜け切っておらず、上空で急激に気圧が下がると、体内の窒素が気泡化してしまう可能性があります。そのため、体から窒素が排出されるのを待つ必要があるのです。

飛行機搭乗の他にダイビング直後に避けた方が良いこと

ダイビング直後には、飛行機搭乗以外にも避けた方が良いことがあります。

高所移動や高所でのアクティビティ

山登りや高所の移動は、飛行機搭乗と同じく気圧が低くなるため、体内に溶け込んでいる窒素が気泡化するリスクを高まります。西伊豆でダイビングをした後、標高800mを超える箱根峠を通って関東に帰ったところ、減圧症になったという事例もあります。ダイビング後の山登りやスカイダイビングは避け、移動がある場合は標高の高いところを避ける、もしくは十分に休息をとってから移動するようにしましょう。

熱いシャワーやサウナ

ダイビング後に冷えた体を急激に温めると、血液中の窒素が気泡化し、減圧症になるリスクが高まります。適度に身体を温め、保温する分にはリスクは大きくないですが、海から上がってすぐに熱いシャワーを浴びたり、高温のサウナに入ることは避けましょう。

関連記事:山見信夫先生に聞く!今ブームのサウナ、ダイビング後に入って大丈夫?

激しい運動

血液循環が活発になると、体内に残った窒素が気泡化しやすくなるため、激しい運動は避けた方が良いでしょう。特に、ランニングやウエイトトレーニングなどの強度の高い運動は、心拍数が上がりやすく、血液循環も促進されるため、ダイビング後すぐに行わないようにしましょう。

関連記事:ダイバーなら知っておきたい減圧症にかかりやすい条件

飛行機に乗った直後はダイビングをして良いのか

飛行機に乗った直後は、減圧症のリスクという観点からいうと、ダイビングを行うことに問題はありません。ただしフライト中、特に長距離フライトでは、体は低気圧や乾燥した環境にさらされ疲労や脱水が進みます。これらの要因が重なると、ダイビング時に体に余計な負担がかかり、事故や体調不良のリスクが高まる可能性があります。そのため、飛行機から降りた後は体をしっかり休ませ、水分補給を行い、コンディションが整ってからダイビングを始めることが推奨されます。

減圧症を防ぐにはダイビング前の体調管理も

体調によっては減圧症のリスクを高まることもあります。たとえば、脱水や体調不良は減圧症のリスクを高める要因の一つです。前日に飲酒をすることは避け、十分に睡眠を確保する、水分補給を行うなど、体調管理を行いましょう。

減圧症の疑いがある場合

これだけ気をつけていても、体調や潜り方によっては減圧症になる可能性がゼロになるわけではなりません。

ダイビング中やダイビング直後に明らかに体調がおかしい場合はすぐにガイドやインストラクターに伝え、どうすべきか相談しましょう。船の上など、すぐに病院に行けない状況だったとしても、酸素の吸入や水分補給など応急手当てを行うことで、症状を和らげられる可能性があります。

ダイビング後しばらくしてから手の痺れや関節の痛みが出ることもあります。自身で減圧症かどうかを判断することは難しいため、専門医へ受診する、もしくはダイビングの保険サービスを提供するDAN JAPANの会員であれば、DANホットラインに電話をしましょう。DANホットラインは潜水医学の知識を持つスタッフが、応急措置法のアドバイスや、受け入れ可能な医療施設の紹介を行うサービスで、24時間対応してくれます。

DAN JAPANとは

ダイビングを旅行に含めたスケジュールの考え方

ダイビング後から飛行機搭乗まで12〜24時間空ける必要があるということは、旅行の最終日はダイビングができません。その中でも、よりたくさんダイビングを旅行先で楽しみたいという方のために、スケジュールの考え方のヒントを最後にご紹介します。

到着日に潜る

朝早く目的地に到着すれば、その日にダイビングをすることができます。到着に間に合う集合時間を設定しているダイビングショップや、午後からでもツアーを行っているダイビングショップに問い合わせてみましょう。

ナイトダイビングを入れてみる

たくさん潜りたいという方は、帰る前日を避け、ナイトダイビングを入れるのも手です。通常一日あたりのダイビング回数は2〜4本。そうすると、遅くても最後のダイビングは夕方には終えていると思います。ナイトダイビングを入れることでもう一本ダイビングを増やせますし、同じポイントでも昼間とは違った光景を楽しむこともできます。

安全にダイビングを楽しむために

本記事では、ダイビング直後の飛行機搭乗のリスクと、対策について述べさせていただきました。ダイビング直後には18〜24時間あけてから搭乗するという時間を守ることはもちろん、ダイビング前の体調管理や、ダイビング中の潜水時間や深度管理をきちんと行うことがより安全につながります。みなさんのダイビング旅行が楽しいものであるよう、この記事を参考にしていただけたら幸いです。

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