世代によって繁殖方法が違う!ふしぎな生き物、鉢クラゲ
前回の”プランクトンの一員であるクラゲ、その生態とは“では、クラゲには様々なタイプがあることについて触れてきましたが、様々なタイプのあるクラゲの中でも、傘の直径が最も大きくなるのが鉢クラゲと呼ばれるグループです。
よく知られているものでは、ミズクラゲやエチゼンクラゲ、タコクラゲやアカクラゲなどが有名です。
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代表的な鉢クラゲの一種、ミズクラゲ
鉢クラゲとは、分類上では刺胞動物門の鉢虫綱(Scyphozoa)のクラゲを表しています。
この鉢虫綱のクラゲにはポリプ世代とクラゲ世代があり、ポリプ世代はイソギンチャクなどと同じように、主に海底などに付着して生活しています。
つまり、ポリプ世代のクラゲは、プランクトンではなくベントス(底生生物)ということになります。
鉢虫綱のクラゲのポリプ(polyp)は、イソギンチャクに似た鉢形をしています。
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鉢虫綱のミズクラゲのポリプ
ポリプの形は種によって異なりますが、最大16本の単純な触手を持っており、この触手で微小なプランクトンを捕えて摂餌します。
ポリプ世代は、そのまま分裂したり、根もとを残したまま移動(ポドシストと呼ばれている)を繰り返すことで、無性生殖で増え続けます。
ポリプは季節変化によって起こる水温の低下などに反応すると、たくさんのくびれをもったストロビラ(strobila)に変態します。
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ミズクラゲのストロビラ
ストロビラのくびれは徐々にはっきりと分かれていき、やがて、たくさんの皿が重なったような形になると、それぞれがクラゲと同じような脈動を始めます。
脈動を繰り返すうちに、先のほうから一枚ずつ離れエフィラ(ephyra)となって水中を泳ぎはじめます。
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8つの縁弁をもつミズクラゲのエフィラ
エフィラ(ephyra)はクラゲ世代の始まりです。
いずれも8つの縁弁をもった姿で生まれますが、小さなプランクトンを餌としてえるうちに、口腕や傘となる部分が発達し、稚クラゲであるメテフィラ(metephyra)に成長します。
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傘や口が成長したミズクラゲのメテフィラ
メテフィラも餌をとりながら徐々に大きくなり、やがて生殖腺が発達して成体クラゲになると、有性生殖が可能になります。
成体クラゲにはオスとメスがあり、オスは成熟すると海中に精子を放ちます。
メスの体内にあった卵はそれを受けて受精卵となり、卵割を繰り返したのち、繊毛を持つプラヌラ(planula)として海中を泳ぎはじめます。
プラヌラは数時間のうちに海底に着生し、新たなポリプが生まれます。
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メスの体内から離れたプラヌラ(顕微鏡画像)
鉢クラゲは、このようにポリプ世代では無性生殖によって増え、クラゲ世代では泳いで移動しながら有性生殖を行うことによって広範囲に子孫を残すことができます。
つまり、他の生き物にはない二通りの繁殖方法をもっているのです。
海の中には様々な生き物が棲んでいますが、このように、全く異なる二つの世代をもって繁殖が可能な生き物はクラゲくらいでしょうか。
知れば知るほど、クラゲって不思議な生き物だな~と思います。
次回は、いろいろな鉢クラゲたちについて詳しく紹介していきたいと思います。