オーバーホールの専門家に聞く!おすすめしたいマイ器材のメンテナンス&収納方法

この記事は約7分で読めます。

さぁ始まりました2022年。今年初めてのダイビングがお済みの方もこれからの方も、安全で楽しいダイビングに溢れた一年を過ごしてもらいたいもの。そこで本記事では、家でできるダイビング器材のメンテナンス&収納の仕方についてご紹介。オーバーホール専門店「アイバディ」の園田万伍当(そのだまこと)氏にお話を伺った。季節に関係なく年中実行してほしい内容ばかりなので、さっそくチェックしていこう。

そのお手入れで大丈夫?器材が長持ちするメンテナンスについて

器材が長持ちするメンテナンスイメージ画像

編集部(以下、—)

器材のメンテナンスについて教えてください!

園田氏

はい。そのまえに、当たり前のようなことだけど大切なことをお伺いしますね。ダイバーの皆さんは、ダイビング後は器材を真水で洗っていらっしゃると思いますが、なぜ洗う必要があるのでしょう。

海水が付いたままだと、器材に良くないからでしょうか。

園田氏

正解です。もう少し詳しくお話しすると、海水に含まれる塩化ナトリウムという成分が金属に‟いたずら”をするからなんです。

 ‟いたずら”とはどんなことですか?

園田氏

例えば、海水を落としきれていないレギュレーターには、白い塩の塊が形成されます。塩を形成するのは塩化ナトリウムなわけです。この塩の塊がはがれ、何らかの形でレギュレーター内に詰まってしまうと、フリーフローを起こす原因になることも。

それは見過ごせないですね。

園田氏

はい。メッキがはがれるのもいたずらの一つです。他にも塩化ナトリウムの影響はいろいろあります。器材は精密にできていますので、大したことないと思った破損でも、機能に影響を与えることも。部品の接続部分が上手くつながらなくなったり、変形した部分から徐々に塩化ナトリウムが浸透していくことで、劣化も早まります。器材のメンテナンスを考えるうえで、いかに塩化ナトリウムを落としきれるかが重要です。

なるほど。ダイビング直後に真水でしっかり洗うことが大切なのですね。

園田氏

実はそれだけでは不十分なんです。器材に付着した塩化ナトリウムは1回洗ったぐらいではなかなか落ちません。落ちきれなかった塩化ナトリウムは1週間くらいかけて徐々に塩に変化していきます。塩が形成されてしまうと、もう自力では落としきれないんです。

まったく知りませんでした……。次のダイビングまでに1週間以上間が空くことが多いのですが、どうお掃除すればいいでしょうか。

園田氏

自宅のお風呂に浸け置きするのがおすすめです。40度くらいのお湯で5日~1週間程度、時間の許す限り浸け置くのがベストですが、現実的ではないと感じられるかもしれませんね。その場合、残り湯でもOKです。温度もこだわらなくていいので、数時間浸けたら取り出します。塩化ナトリウムの濃度を薄めておくことが大切です。

1か月前にダイビングして、1回真水でさっと洗ったきりなんですが、今から浸け置きしても間に合いますか?

園田氏

うーん、小さな塩の塊ができていると思います。塩ができてからでは、浸け置きだけでは塩は落としきれないかな……。

うう、残念。でも塩ができても、使えるのならそのまま使いたいのが本音です。

園田氏

そういうお客さまの声も多いです。しかし、塩が形成されてしまうことで、器材が壊れ、事故につながる事例が多いのも事実です。例えば、BCDのインフレーターが壊れると空気が入り続けるようになり、急浮上してしまうことも。また、排気バルブが壊れると閉じなくなるので急潜降してしまう原因になりかねます。

事故が起きてからでは遅いということですね。

園田氏

自分の命を預ける器材ですから、日頃からしっかりメンテナンスをしておくことが大切です。

※実際に器材を掃除・メンテナンスされる際は、各メーカーの説明書・手引書に従ってください。

目からウロコ!器材に優しい保管の仕方とは?

器材に優しい保管の仕方のイメージ画像

次に、器材の保管の仕方を教えてください!

園田氏

はい。ではBCDとレギュレーターから。BCDのインフレーターとレギュレーターのホース部分は樹脂やゴムでできています。この素材は乾燥に大変弱いので、いかに保湿させるかがポイント。たまにシリカゲルを入れたケースの中で保管される方がいるのですが、逆効果なのでやめましょう。

シリカゲル、やっちゃってました。マスクを保管する時にも……。

園田氏

乾燥させればさせるほど、劣化は進みます。劣化をもう少し詳しくお話しすると、水分が蒸発してパキパキになってしまうということです。輪ゴムをキッチンに長期間掛けておくと、伸縮性が失われ、ポロポロ、パキパキの状態になっているのを見たことがありませんか?あの状態が劣化です。劣化すれば、ものによっては、成型が歪んでしまったり、寸法も短くなります。

劣化が進むと、器材にどんな影響が起こりますか?

園田氏

例えば、BCDの内側(ダイバーの背中が当たる場所)にはポリウレタンシートが
張られています。これは劣化が進めば収縮速度が速くなるため、めくれて取れてしまったり、裂けて穴が開いてしまったりすることもあるんです。そうすると、BCD内にせっかく入れた空気も漏れていき、浮力調整ができなくなってしまいます。

なんとか湿気を与えて、劣化を回避したいですね。乾燥対策を教えてください!

園田氏

BCDなら、ほんの少し水を入れた状態で、たっぷり空気を入れてハンガーに吊るして保管しましょう。排気バルブから水が出ないようにだけ注意してください。

わかりました。でも、けっこう場所を取りそうですね。それにカビが生えるのもとても心配です。

園田氏

場所がなければ、少し空気を入れて、そっとたたんで保管してもOKです。カビが生えるかどうかに関して言えば、むしろカビが生えるくらいの方が良いです。というのは、あくまでもポリウレタンシートにとって一番持ちがよい環境を考えたときに、カビるくらい湿気がある状態がベストというだけで、衛生的かどうかはまた別の問題です。

なるほど。

園田氏

水道水であれば塩素が入っているので、定期的に変えるようにすれば、カビが生えにくいと思います。まだ開封していないペットボトルの水も無菌の状態だからカビは生えないですよね。BCDの中も同じことで、海水をきれいに流して清潔に保っていれば、無菌とまではいかずともカビが生えにくい環境は作れると思います。

しっかりと器材の塩抜きをした上で、水を定期的に交換すれば、清潔に長持ちさせることができるということですね。実践してみたいと思います。他の器材はどうでしょう。

園田氏

月に一度、無理のない範囲の時間でいいので、お風呂の残り湯に浸けておくのがおすすめです。わたしは、実験のために24年前のスノーケルをお風呂場に置いてあるのですが、湿気たっぷりの環境のため、いまだに使える状態を保っています。

なんだか生き物のようですね。湿気を定期的に与えてあげようと思います。

自己メンテナンスでは器材内部は確認できない!限界を感じたら…

器材のメンテナンスイメージ画像

これまで、自分でできる器材のメンテナンスをお伺いしてきましたが、すでに塩が形成されてしまっていたり、明確に器材が故障していると分かっている場合はプロが修理してくれる「オーバーホール」を利用する方法がありますよね。でも、特に壊れている箇所が見つかっていない場合は、どのタイミングで利用すればいいのでしょうか?

 

園田氏

次のダイビングまで期間が空く方なら、潜った後にオーバーホールを利用して保管するのがベターです。潜る前まで放っておくと錆の原因になります。

また、塩の影響を考えるのなら、定期的に潜らないダイバーの方が、塩が形成している確率が高いので、長期間ダイビングをしないとわかったタイミングで利用していただくのがいいでしょう。

自己メンテだけではなかなか器材の内部まで見られないですし、定期的に利用できればと思います。今日はありがとうございました。

自分の命を預ける器材だからこそ、自分でできる範囲のことならば、しっかりとした知識を身に着けておきたいもの。今回教えてもらった園田氏は、一般ダイバー向けに器材メンテナンスのセミナーも開催しているのでぜひチェックしてみてください。

詳しくはこちらから▼
http://www.i-buddy.net/school.html

【Profile】園田万伍当氏

園田万伍当さん画像

元マツダ勤務で自動車整備士資格所持。機械いじりは大の得意!好きが高じて、ダイビングショップ経営後、2006年にオーバーホール専門店「アイバディ」を設立。オーバーホール歴22年。

オーバーホールお申込みページ | オーシャナ
\メルマガ会員募集中/

週に2回、今読んで欲しいオーシャナの記事をピックアップしてお届けします♪
メールアドレスを入力して簡単登録はこちらから↓↓

PROFILE
海とスキューバダイビングの総合サイト・オーシャナ、つまりこのサイトの編集部です。

いろんなニュースや、オーシャナからのお知らせを発信しています。
  • facebook
  • twitter
  • Instagram
  • youtube
FOLLOW