Mares(マレス)のリブリーザー・HORIZON(ホライゾン)使用レビュー
阿部寛主演のドラマ『DCU』でも話題になったリブリーザー。ドラマを見て、「どんなものなんだろう」、「使ってみたいなー」と思ったダイバーも少なくないはず。でもなんだかちょっと難しそうだし、どこでできるかわからないし…そんなふうに思っている方、多いんじゃないでしょうか。私も例に漏れずそう思っていました。
そんな時、「レクリエーションダイビングで活躍するリブリーザーがMaresから発売されたので、使ってみてほしい」と巣鴨のダイビングショップ「Diving Lounge aqua QUEST(以下、アクアクエスト)」の澤田淳さんからお声掛けいただいた。もちろん気になっていたため、これはチャンスと思い、オーシャナの坪根雄大カメラマンと一緒に3泊4日の講習を受けて実際に潜ってきました!
魚に寄れるとか静かとか聞きますが、実際のところどうなのよ?というのをレポートしていきます。
そもそもリブリーザーって何?
そもそもリブリーザーって何でしょう。
まず普通のダイビングでシリンダーからレギュレーターを使って息を吸って吐くと、自分の呼気って全部外に出て行きますよね。ボコボコボコっと。これが一般のダイビングで、この仕組みは「オープンサーキット」と呼ばれています。
一方リブリーザーはというと「Re Breath(リブリーズ)=再呼吸」の名のとおり、この吐いた息を無駄にせず、もう一度自分が吸う空気に再利用してくれるのです。自分の呼気をそのまま吸い続けたら、もちろん酸欠になってしまいます。しかしリブリーザーのシステムの中には二酸化炭素を吸収する「スクラバー」がセットされており、二酸化炭素を吸収してくれます。さらに吸うときには酸素を足して給気してくれるので、むしろ酸素濃いめの空気を吸うことができるのです。
また、リブリーザーの中にもCCR(クローズドサーキットリブリーザー)、SCR(セミクローズドリブリーザー)と大きく二つの種類があるのですが、HORIZONはSCR。エンリッチド・エア・ナイトロックスを定量で流して酸素を補充してくれる仕組みです。空気を再利用してくれるから当然エアも持つし、酸素濃いめの空気なので体内の窒素の蓄積も少なくて済みます。だから長時間潜れるうえ、体への負担が少ないダイビングを実現できるのです。
中でもHORIZONの特徴は、テクニカルダイバーだけでなく、一般ダイバーにも楽しんでもらえることを目指して開発されたということ。そのため重さ約12kgと従来のリブリーザーよりも軽量で、サイズもコンパクト。MaresがCCRの専門メーカーrEvo社をグループ化し実現した、安心で安全性の高いリブリーザーなのです。
衝撃!HORIZONで出会った新しい海の世界
さて、ここからは実際に私がHORIZONを使ってみた感想をお伝えしていきましょう。HORIZONを使わなければ知らなかった世界が見えてきたのです…。
えっ!? 私の呼吸、うるさすぎ…?
ダイバーにとって当たり前に聞こえる自分の呼吸音。吐く息が泡となってボコボコと聞こえるのが心地良いときもあります。しかし、リブリーザーを使うとそんな音は聞こえなくなります。リブリーザー本体の排気音が聞こえることもあるのですが、10m、20m、30mと深度を下げていくと排気が減り、ほとんど音が聞こえなくなるのです。今回は講習のため緊急時のスキル練習でオープンサーキットに切り替えることが何度もあったのですが、その度に「自分の呼吸音、うるさっ!」となっていました(笑)。
水中で静かだと何がいいかって、まず、余計な音が聞こえない海の世界が新鮮なんです。水深30mの静寂な海では、パチパチと水中でよく聞こえる自然の音がかすかに聞こえるのみ。素潜りで呼吸音のしない海を体感したことはありますが、自分が呼吸をしながら、落ち着いた状態で静かな海を感じるのは初めてでした。誰もいない山寺で川のせせらぎに包まれて静かに過ごしているような感じといったらよいのでしょうか。そのまま悟りを開けそうな時間でした。
魚が都会のハト化
都会のハト、住宅街のハト…人が多いエリアのハトほど図々しいものはありません。「そろそろ飛んでいって逃げるかなぁ」と思う距離まで近づいているのになかなか逃げないなんてことは、よくあるのではないでしょうか。そんな経験を私は海ですることになりました。
水中でも、お魚に大体これぐらい近づいたら逃げるだろうなぁという感覚、ありませんか?しかしリブリーザーを使うとその感覚が簡単に裏切られます。「そろそろ逃げるだろうなぁ」と思って群れに近づいているのに、なかなか優雅に泳ぎ続ける。なんなら突然目の前を横切る魚も。泡を出さない、排気音がしないというだけで、なんだか私も海の生き物の一員になったような気分になれました。
特に今回のロケ地、黄金崎の生き物で私が驚いたのはハナハゼ。すぐに引っ込むため写真が撮りづらいイメージがあったのですが、なかなか引っ込まない。ですが、写真を撮ろうとしたら引っ込んでしまったため、排気音だけでなく私たちの動きにも敏感なのだということを改めて感じました。もう少し修行を積めば、チンアナゴにもギリギリ近づけるのでは…と期待大。
びっくりするほどピタッと止まる中性浮力
HORIZON講習で一番苦戦したのが中性浮力。オープンサーキットで初心者の頃は悩まされたものの、今では「中性浮力はバッチリだぜ!」と自負していました。しかしリブリーザーでは今までの努力が水の泡に。息を吐いたら沈む、吸ったら浮くというのが当たり前でしたが、リブリーザーの場合は自分の肺とシステムの中を空気が循環するため、吐いても沈まないし吸っても浮きません。そのためシステムと一体型になっているBCへの給気で中性浮力をとります。この微調整がコツをつかむまで難しく、七夕にあやかって祈るほどでした。
中性浮力がうまくとれないのが悔しくて、「何くそ」と緊急事態用のスキル練習の際も絶対に着底しないように行い、講習が終わる頃にはなかなかいい感じにとれるようになりました。うまく中性浮力がとれると、これがまたクセになるんですよ…。
普通に呼吸をしているのにピタッと水中で止まるんですよ。前述した通り音も静かで水中にじっと浮いているのは、今までにない感覚。海の音と水温、景色を感じながら呼吸に集中していると、なんだろう、静かな山寺で座禅組んで瞑想している感じです(笑)。ちなみにドライスーツの場合は、スーツへの給気のみでいけるのでもっとラクらしいです。
後から気づいた「クセになる」HORIZONのすごさ
ここまでHORIZONを使ってみた感想をつらつらと書いてきましたが、使用後や後日オープンサーキットを使って感じたHORIZONのすごさを改めてお伝えしましょう。
長く潜っているのに疲れが少ない
HORIZONの講習の際は1ダイブ1時間とロングダイブだったのですが、夜全然疲れてない(笑)。いつもだったら連日ロングダイブすると夜は早めに寝てしまうのですが、それほど疲れを感じず元気に過ごせました。感覚的なものなのでお伝えしづらいのですが…。酸素40%のナイトロックスの効果でもあるのでしょうか。なんでもHORIZONを使ったファンダイビングだと、1本2時間くらい潜ることもあるそう。それだけ潜れば1ダイブでも満足できてしまいそうですね!
思ったほど重くない
見た目が結構重装備なので重いかな?と思われがちですが、オープンサーキットの装備とそんなに変わりませんでした。シリンダーは5.7リットルのものを使っているというのもあるかもしれません。
空気が全然乾燥しないので喉が渇かない
これは正直、後から一番びっくりしたことです。オープンサーキットでのダイビングがもう喉カラカラで、何度HORIZONを使いたいと思ったことか。講習の時はそれほど感じなかったのですが、喉の渇きをまったく感じなかったのは、すごくメリットだったんですね…。
海と一体化できる
オープンサーキットでのダイビング中、ふとした時に思い出すんです。ここ、HORIZONで潜ったらどんな感じなんだろう…。と。私がHORIZONを使って一番良かったと感じるのは、海という空間に一体化できたような気持ちになれるところ。これは静かで慣れてくると中性浮力がピタッととれることが要因なんじゃないかなあと思っています。キレイなサンゴや魚に囲まれている時、じっとそこで留まって海と一体化したいという気持ちになるのです。
HORIZONを使ってみたいダイビングシーン
ということで、海と一体化したい私がHORIZONを使って潜りたいというダイビングシーンをピックアップしてみました。
ダイナミックな地形ポイント
これはリブリーザーで宮古島の地形ポイントを潜ったことがある方からの受け売りなのですが、ひと言「泣くよ」と言われたのが印象的でした。確かに静寂で光が差す不思議な地形に囲まれた空間で海と一体化するのを想像してみると、感動して泣けてくるのではないでしょうか。人が少ない時を狙って行きたいものです。
クジラの声が聞こえる海
私が住んでいる沖縄・恩納村では、冬場になると海の中でクジラの声が聞こえるんです。これを余計な音なしで感じたい。ただそれだけです。
マンタやジンベエザメといった大物
マンタやジンベエザメは、ダイバーの吐く泡を嫌って逃げていくと聞いたことがあります。泡が少ないHORIZONでは、どれだけ嫌がられずに近づけるのか知りたい。そして彼らのストレスも少なく済むのではと思うのです。
ギンガメアジやバラクーダなどの回遊魚の群れ
今回小さな魚の群れには寄れましたが、ギンガメアジやバラクーダなど少し大きめの群れにはどれくらい寄れるのか。気にせず自分の周りを回ってくれるんじゃないか。そんな期待を込めて魚影の濃いシーンで潜ってみたいのです。
HORIZONを始めるには?
HORIZONでダイビングをするために必要な講習や金額についてまとめました。
必要な講習、受講の条件は?
HORIZONを使用するには「SCR Divingコース」を受講する必要があります。さらにレベルアップしたい方は「SCR EXTENDED RANGE」まで取得すると、減圧理論を学んだ上で、40mまで潜れるようになります。ちなみに今回私たちが受講したのは、SCR EXTENDED RANGE ダイビング・コース。
HORIZONの講習
SCRダイビング・コース | SCR EXTENDED RANGE アップグレード・コース | SCR EXTENDED RANGE ダイビング・コース | TRY SCR(Mares Horizon) | |
---|---|---|---|---|
最大潜水可能深度 | 30m | 30 → 40m | 40m | 12m(プール/限定水域の経験後 海洋にて実施可) |
最低必要日数 | 4日間(学科・プール・海洋実習4本) | 3日間(学科・プール・海洋実習2本) | 6日間(学科・プール・海洋実習6本) | 1日 |
前条件 | 18歳以上 アドバンスランク以上のCカード 24本以上のダイビング経験 エンリッチド・エア・ナイトロックス40 ダイバーSP ディープ ダイビングSP |
18歳以上 SCR ダイビング(Mares HORIZON) |
18歳以上 アドバンスランク以上のCカード 24本以上のダイビング経験 エンリッチド・エア・ナイトロックス40 ダイバーSP ディープ ダイビングSP |
16歳以上 アドバンスランク以上のCカード 経験本数12本以上 |
購入するなら金額は?
そんなHORIZONはメーカー希望小売価格で759,000円(本体価格690,000円)!
高い?安い?
これに加えてスクラバーは数ダイブに一回は交換が必要で、メンテナンスをミスって壊してしまったりすると高価なパーツ交換も必要となってきます。
ですが、通常100万円超えのリブリーザーに比べたらリーズナブル。いかがでしょう。
レンタルプランの金額は?
ちょっと高いけどやってみたいな〜どうしよう〜という方には、今回案内してくれたアクアクエストのサブスクレンタルプランがものすごくおすすめです。アクアクエストで講習を受ければ、年間6万円に、通常のツアー料金を支払えば、HORIZONダイビングができるのです。講習もレンタルの場合は「SCR Divingコース」が5万円、「SCR XRコース」が6.5万円と始めやすい金額感。
▶︎詳しくはこちら
今回HORIZONを使用してみて思ったのが、水中で感じる静かさや生物に寄れる感じが想像以上で、興味のある方は、一度は体験してみて欲しいということでした。もちろんオープンサーキットよりはセッティングや片付け、メンテナンスは手順が多くて大変だけど、そこは澤田さんが十分フォローしてくれます(笑)。
正直、学科が一番大変でした。ガス計算や理論など、理解するまで時間がかかりました。ですが澤田さんが複雑なガス計算をわかりやすく絵で教えてくれたり、なんなら簡単に計算できるエクセルまで用意してくれています。
よくよく聞くと、エクセルもアクアクエストのお客さんが作ってくれたものだったり、ガス計算をわかりやすくするためにみんなで考えたり、そんなエピソードがありました。これから新しいダイビングシーンを作っていくんだなという感じがして、とてもわくわくしますね。今始めるとそんな楽しさもあるかもしれません。ぜひHORIZONで一緒に潜ってみませんか?
▶︎HORIZON、コース、サブスクについて詳しく知りたい方はこちら
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取材協力:黄金崎ダイブセンター