OM SYSTEM OM-1ユーザーが語る② 私がガイドする串本の海のこと、水中写真のこと
コンパクトでありながらハイクオリティな水中写真が撮れることから、水中写真家やガイドなどのプロダイバーにも愛用者が多いOM SYSTEMのミラーレス一眼カメラ。日本各地のOM SYSTEMのカメラユーザーのガイドに登場していただく連載企画、第2回は和歌山県・串本の海をガイドする「ダイブステーション」の谷舞 章彦さんが登場。OM SYSTEM OM-1で撮影した作例とともに、この機材を選んだ理由や使ってみて気に入っているところなどを伺ってみた。

ダイブステーション

ガイド歴:30年
水中写真歴:30年
17歳でダイビングを始め、アメリカでのガイド経験などを経て2000年に「ダイブステーション潮岬」をオープン。現在は串本・住崎エリアをメインフィールドにガイド、水中写真教室も開催している。
OM SYSTEMと出会ったきっかけ
水中写真家・清水淳氏の誘いで、すべての機材をオリンパス製に
私はアメリカの高校に通っているときに17歳でダイビングを始め、その後フロリダ州で学生をしながらガイドやインストラクターの仕事をしていました。大学卒業後、現地に就職しましたが転勤で帰国した1994年頃に水中写真を始めました。最初はモーターマリン、ニコノス、一眼レフを使っていました。その後、サラリーマンは性に合わず、2000年に和歌山県・串本で「ダイブステーション潮岬」を開店しました。
2000年頃から一気にカメラはフィルムからデジタルへと移行していきました。デジタル一眼カメラの初期は、キヤノンを使っていました。 当時は私のしたいX接点の同調速度を超えたハイスピードシンクロ撮影が行える水中用のフラッシュがなく、対応する純正フラッシュの水中ハウジングをオーダーメイドで作る計画までしていましたが、システム構築には100万円ほどかかるというので悩んでいました。
そんな時に水中写真家の清水淳先生よりオリンパス※のカメラを紹介いただきました。最初はあまり興味がなかったのですが、調べると私のしたいX接点の同調速度を超えるハイスピードシンクロ撮影が、オリンパスでは純正水中フラッシュで可能だということを知りました。清水先生とオリンパス社からサポートをいただけることも魅力でした。
ただ、清水先生から「オリンパスのカメラが気に入ったら、一本化して効率化したほうがよい」というアドバイスがありました。とても悩みましたが、フラッシュの機能などにメリットを感じたため、オリンパス製で揃えることにしました。その後も沖縄へ何度も通って、清水先生に水中写真について一から教えていただきました。
※2021年1月よりOM デジタルソリューションズ株式会社が、オリンパスの映像部門を引き継いでいます。
【作例1】スローシャッターで撮影したオキゴンベ
使用カメラ
OM SYSTEM OM-1
使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
撮影モード
S
シャッター速度
1/4
絞り値
11
露出補正
-1.0
フラッシュ
UFL-2×2灯
ライト
RGBlue System03 PC×2灯
ISO感度
200
ホワイトバランス
水中
撮影地
串本町住崎
必ず見せたい水中シーンや生物
レアものよりも串本の普通種を見せていきたい
私がガイドしている串本の海は、マクロからワイドまでバラエティに富んだ被写体と温帯と亜熱帯が入り混じった生物相が魅力です。被写体になる生物もたくさんいますが、基本的にはレアものよりも、普段から見られる串本の豊富な普通種を紹介しています。
年1回出るかどうかという珍しい生物を探しに行くより、よく見られるダテハゼをじっくりと1時間かけて撮影するというようなガイドスタイルです。串本でめったに見られない生物も、地球の裏側では普通種なんてこともありますから。
ただ同じ魚種だとしても撮りやすい個体と撮りにくい個体がいますよね。私が力を入れているのは、撮りやすい個体を見つけてくること。そうすれば、ゲストは1時間近く、構図やライティングなどをじっくり考えて、自分が撮りたい写真をゆっくり撮ることができます。
なお、当店では安定して魚影が濃く、穏やかで流れのない、ゆっくり水中撮影が楽しめる「住崎エリア」のみをフィールドとしています。フォト派のゲストの方たちには、事前にワイド、マクロでどんな被写体を撮影したいかを伺って、希望に添えるようにしています。どんどんリクエストしていただければと思います。
【作例2】クダゴンベの超クローズアップ
使用カメラ
OM SYSTEM OM-1
使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
撮影モード
S
シャッター速度
1/25
絞り値
2.8
露出補正
-1.0
フラッシュ
UFL-2×2灯
ライト
RGBlue System03 PC×2灯
ISO感度
80
ホワイトバランス
水中
撮影地
串本町住崎
【作例3】クリーニング中のアザハタを動きを出して撮影
使用カメラ
OM SYSTEM OM-1
使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
撮影モード
S
シャッター速度
1/10
絞り値
4.0
露出補正
-1.3
フラッシュ
UFL-2×2灯
ISO感度
80
ホワイトバランス
水中
撮影地
串本町アンドの鼻
【作例4】ガンガゼをアクセントに
使用カメラ
OM SYSTEM OM-1
使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
撮影モード
S
シャッター速度
1/125
絞り値
8.0
露出補正
-1.0
フラッシュ
UFL-2×2灯
ライト
RGBlue System03 PC×2灯
ISO感度
1600
ホワイトバランス
水中
撮影地
串本町グラスワールド
OM SYSTEM OM-1の優れている機能
水中写真を撮るのに役立つ機能が充実している
OM SYSTEM OM-1は、ピクチャーモード、ホワイトバランスで「水中」の設定ができます。どんなふうにカメラをチューンアップすれば、きれいな水中写真が撮れるのか。こういったことがしっかり考えられて作られているカメラだと思います。設定さえしっかりしておけば満足がいく色で撮れるので、私はRAW現像をしなくなりましたね。
AFの性能も非常に高く、AI被写体認識機能の中にある「鳥」モードを使うと、どこかに共通点があるのか、実は動きのある魚などへのピント合わせもしやすくなります。また、ワイドではウミガメを撮影するときなどに追尾AFも重宝します。私は水中写真でマニュアルフォーカスは使わなくなり、ほぼ100%AFで撮影しています。
また「LVブースト」という機能、こちらをONにすると、液晶モニターを明るくして、被写体の確認がしやすくなります。ワイド撮影で露出補正をマイナス側に振ったり、岩陰に隠れる被写体を撮影する時などに威力を発揮します。このようにOM SYSTEM OM-1は、水中写真の撮影に役立つ機能が充実しています。
あと、OM SYSTEM OM-1はコンパクトサイズで、コストパフォーマンスも高いと思います。畳1枚分以上のサイズにプリントするならフルサイズが有利かもしれませんが(笑)。私が思うのは、OM SYSTEMという一つのカメラメーカーが、水中写真というニッチなジャンルに本気で取り組んでくださっていることがすごいといつも思っています。
なお私個人の強い願望ですが、OM SYSTEMには水中ワイドモード、水中マクロモードを復活させていただきたいと切に思います。
水中モードは基本的に「誰でも簡単にきれいな水中写真が撮れる」モードと理解しています。だから誰が撮っても同じような写真になってしまうと勘違いされている方も多かったのです。しかし、ワイド撮影では露出補正、フラッシュ補正で海の青さや被写体の色の発色をコントロールできます。また、マクロ撮影ではプログラムシフトを使い絞り値をコントロールすることで、被写界深度を自由に操れます。
水中撮影は水深や天候で環境が常に大きく変化します。短い潜水時間での撮影では、水中モードで撮影することで最小限の調整でシャッターチャンスを逃すことなく、レリーズに集中することが可能になります。
水中撮影初心者の方は、何も触らなくとも水中モードできれいな写真撮影を楽しめます。水中撮影が上達してきて、あんな写真や、こんな写真が撮りたいとなった時も水中モードを自分でチューンナップすることで対応できます。スローシャッターやハイスピードシンクロなどの特殊な撮影手法をしない限り、私もほぼ100%水中モードを愛用していました。
【作例5】手前と奥のライティングにこだわったワイド
使用カメラ
OM SYSTEM OM-1
使用レンズ
M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6
撮影モード
A
シャッター速度
1/200
絞り値
5.6
露出補正
-2.0
フラッシュ
UFL-2×2灯
ISO感度
200
ホワイトバランス
水中
撮影地
串本町備前

カメラ:OM SYSTEM OM-1/E-M1MarkⅡ
ハウジング:AOI-UH-OM1/PT-EP14
フラッシュ:UFL2
ライト:RGBlue System02 Premium Color
レンズ: M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
これから撮りたい水中写真・案内したい海
じっくり時間をかけて撮影できるようにサポートしたい
私の撮影スタイルは、じっくり時間をかけて作品を作ることをテーマにしています。移動時間を最小限にして、短い潜水時間の中で撮影時間をできる限り多くとれるようなフォトダイブを提供しています。次々と被写体を探して移動するスタイルではなく、自分の好きな被写体とじっくり向き合い撮影を楽しんでいただきたいです。
なお、私はOM SYSTEM PRO SERVICE(OMPS)のメンバーでプロカメラマンでもあります。ミラーレスからコンデジまでメーカーを問わず、水中撮影に関する相談も気軽にしていただければと思います。小さなアットホームなダイビングサービスですが、皆さんのお越しを楽しみにお待ちしています。
OM SYSTEM OM-1

2022年に発売されたマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼カメラ。
高性能の画像処理エンジンTruePic X (トゥルーピック エックス)と有効画素数約2037万画素 裏面照射積層型 Live MOS センサーが、高解像レンズ M.ZUIKO DIGITALの性能を余すことなく引き出し、圧倒的な解像感と低ノイズを実現し、フルサイズに迫る高画質を提供。
また多彩な機能を搭載しているが、中でもAI被写体認識AFの「鳥モード」は意外にも水中で魚などの動きのある生物のピント合わせにも抜群の威力を発揮する。

今回は、和歌山県串本の海でガイドをする谷舞 章彦さんが登場。OM SYSTEM OM-1の機能を駆使した、個性あふれる作品はいかがだったろうか? カメラ機材の機能をよく知っている谷舞さんのガイドで、自分が撮ってみたいと思う水中写真にぜひチャレンジしてみていただきたい。

水中写真家 茂野優太「私のフォトライフ 写真で伝えたいこと」
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