【伊東市ダイビング完全ガイド】7つの海の魅力を徹底紹介(第4回)

【伊東市ダイビング完全ガイド】富戸・溶岩地形に多くの生物が集うオールラウンダー

静岡県伊東市にある富戸(ふと)は、数多くのダイビングスポットがある伊豆半島のなかでも人気のスポット。地形や豊富な生き物が楽しめるのはもちろん、天然温泉まで満喫できる一挙両得とも言えるダイビングスポットだ。そんな富戸の魅力を深掘りしていく。

静岡県伊東市のダイビングスポット「富戸」の特徴

クマドリカエルアンコウ

南方系の季節来遊魚、クマドリカエルアンコウ

約4000年前の大室山の噴火によって生まれた地形は、今回フォーカスする富戸をはじめ城ヶ崎海岸(伊豆海洋公園)、八幡野を含む城ヶ崎エリアに今も色濃く残っている。その結果、このエリアの海の大きな特徴となっているのが、水中に広がるダイナミックな溶岩地形だ。

富戸の海も例外ではなく、巨大な柱状節理や神秘的な「富戸ホール」と呼ばれる水中ホールなどがあり、大室山の噴火が生み出した自然の歴史を体感できる。また、溶岩地形の影響があってか、潮通しも良く、海藻やソフトコーラル類も豊富。さらにカエルアンコウやニシキフウライウオといった季節来遊魚をはじめ、甲殻類、ハゼ類、ウミウシなどの人気生物も安定して見られ、多種多様な生物が観察できるのも富戸の魅力だ。

講習ダイバーからベテランまで、地形派・マクロ派・ワイド派と、幅広いダイバーを魅了するフィールドなのである。

富戸で絶対に潜るべき!おすすめダイビングポイント3選

富戸はビーチダイビングとボートダイビングの両方を楽しめる。
それではここからは、現地ガイドおすすめのダイビングポイント3ヵ所を紹介しよう。

■ 富戸を代表する王道ビーチポイント「ヨコバマ」

穏やかなビーチ

初心者でも安心の穏やかなビーチ

【最大水深】約30m
【スタイル】 ビーチダイビング
【特徴・見どころ】
富戸を代表する王道のビーチポイント。 器材セッティングエリアからエントリー・エキジット口までの距離が近く、手すり付きのスロープも整備されているため、フィンを履いたままでも歩きやすい。体験ダイビングでも安心して潜れて、講習でもよく使用されるポイントだ。

水中はなだらかな深度変化の地形が広がり、体験ダイビングや海洋講習初日のダイバーでも安心して潜れる。一方で最大水深は約30mあり、砂地や岩場など潜水範囲も広い。
とにかく生き物の種類が豊富なのが魅力。カエルアンコウの仲間やハゼ類、タツノオトシゴの仲間、ウミウシ類などのマクロ系生物や、初夏はアオリイカの産卵や冬はカスザメなどのサメの仲間といった多彩な生き物が見られるため、フォト派のベテランダイバーにも人気が高い。

また、「富戸ホール」と呼ばれる地形が楽しめるエリアもある。天井の開口部から差し込む光が青いカーテンのように広がり、幻想的な景観を生み出す。ホールの水深は約3mと浅いため、満潮に近い時間帯が狙い目だ。さらに、年に数回開催されるナイトダイビングも、このヨコバマで行われている。

ネジリンボウ

砂地を探すとネジリンボウが顔を出していることも

■ 4000年の歴史を感じる地形ポイント「ツナキリ」

大室山の溶岩が形成した柱状節理

大室山の溶岩が形成した柱状節理

【最大水深】約30m
【スタイル】 ボートダイビング(港から船で約10〜15分)
【特徴・見どころ】
大室山の噴火による柱状節理が広がる、圧巻の地形ポイント。沖には切り立ったドロップオフもあり、穏やかなビーチポイントからは想像できないような、ダイナミックな富戸の姿を堪能できる。

潮通しもよく、ハナダイ類にタカベやイサキ、キビナゴなどの魚影も濃く、絶滅危惧種といわれているアオウミガメの遭遇率も高い。さらに、運が良ければハンマーヘッドシャークと遭遇できる可能性もあるダイビングポイントだ。水深の変化が大きいため中性浮力と無減圧潜水時間を自己管理できるダイバー向け。

■ 期間限定の巨大漁礁「ヨコイソ沖(通称:ピラミッド)」

巨大な人工漁礁

水深25mに現れる、巨大な人工漁礁

【最大水深】約25m
【スタイル】 ボートダイビング(港から船で約3〜5分)
【特徴・見どころ】
9月半ばから5月半ばまでの期間限定オープンのダイビングポイント。格子状のコンクリートブロックが積み上げられ、その全景がまるでピラミッドのようなことから「ピラミッド」という名称でも親しまれている。大ぶりのソフトコーラルが多く生え、コンクリートブロックが大きな漁礁となっており、オレンジ色をしたキンギョハナダイが群れ、ソフトコーラルと共にカラフルな世界を演出する。

中層に泳ぐイサキの群れや、目の前を壁のように覆うキンメモドキやクロホシイシモチの群れもぜひ体感してほしい。クダゴンベやウミウシなどの小さい生き物も多く、マクロ派ダイバーも楽しめる。水深の変化が大きいため、中性浮力と無減圧潜水時間を自己管理できるダイバー向け。

富戸の潜り方HOW TOガイド

「ヨコバマ」を含む2ヶ所のビーチポイントは多少の波がきても耐えられるよう、手すり付きのスロープが整備され、初心者も安心してエントリー・エキジットが可能。手すり沿いからはられているロープはそのまま水中まで続いているため、耳抜きが不安なダイバーもゆっくりと耳抜きをしながらエントリーができる。また、エントリーとエキジットのスロープが分かれているため、ハイシーズンも動線がスムーズ。

ボートダイビングで使用される船は伊豆で一般的な漁船タイプ。エントリー方法は乗船した船によって異なるので、ジャイアントストライドエントリー、バックロールエントリー、両方を想定しておくと安心だ。ブイから潜降ロープがあるポイントや、ロープがなくフリー潜降・浮上するポイントがあるので、耳抜きやスキルに不安がある場合は事前にインストラクター・ガイドに相談しておくと安心。エキジットは船側面のはしごを使用し、フィンを脱いで上がるスタイルだ。

EN/EXが分かれているヨコバマ

EN/EXが分かれているヨコバマ

漁船タイプのボート

伊豆では一般的な漁船タイプのボート

富戸の四季ごとの見どころ

四季ごとに主役が変化していくのが伊豆のダイビングの魅力。
ここでは富戸の四季の見どころを紹介する。

春の富戸の特徴:生命の息吹を感じる

クチナシツノザヤウミウシ

春になると砂地に現れるクチナシツノザヤウミウシ

【平均水温】16~19℃
【平均透明度】5〜15m
春はまだ水温が低く、低水温を好むエイやサメの仲間や、ウミウシなどがよく見られる。
近年では4〜5月ごろにクチナシツノザヤウミウシが毎年観測され、ウミウシ好きやフォト派のダイバーのお目当てとなっている。

海藻類が増えてくるのもこの時期で、海藻の森を隠れ家とするマトウダイを始めとした多くの幼魚も姿を表す。

夏の富戸の特徴:南国からの贈り物も到来

アオリイカの産卵ショー

初夏の名物。アオリイカの産卵ショー

【平均水温】20〜27℃
【平均透明度】10〜15m
初夏の見どころはなんといってもアオリイカの産卵ショー。孵化してから約1年で産卵し、その生涯を閉じるアオリイカの命を燃やすかのような産卵シーンをぜひ体感して欲しい。
また、砂地や岩の影を探すと可愛らしいネコザメの赤ちゃんに出会えることも。

夏本番になり水温が上がってくると、根付きの魚のソラスズメダイが産卵期を迎え、水面に顔をつけるだけで美しい青い魚の乱舞が見られる。黒潮にのってやってくる南方種の季節来遊魚が増え出すのもこの時期。なお、夏季には数日限定でナイトダイビングも開催され、普段は見られない生き物たちの夜の様子が観察できる。

秋の富戸の特徴:ダイナミックな魚影に巻かれる

ダイナミックな魚影

魚影が濃くなる秋はベストシーズン

【平均水温】23〜27℃
【平均透明度】10〜20m
水温が一年の中で最も高くなり、気温もまだ暖かいため、気持ちよくダイビングができるベストシーズン。

夏に現れ始めた季節来遊魚はもちろん、増え出したキビナゴやイワシなどの群れを狙った回遊魚が現れ、ビーチダイビングでもボートダイビングでも回遊魚が小魚の群れにアタックをかける、迫力あるシーンを見ることができる。ワイド、マクロと見どころが多く、一年の中でもっとも海の中が賑やかだ。

冬の富戸の特徴:イベントが盛りだくさん

水中にエンジェルズラダーが現れる

冬は透明度が高く、水中にエンジェルズラダーが現れる

【平均水温】14〜17℃
【平均透明度】15〜20m

冬の富戸は、イベントが盛りだくさん。毎年12月には水中にクリスマスツリーが設置され、記念撮影を行うダイバーが多い。クリスマス付近にはナイトダイビングが開催され、水中ライトやケミカルライトで水中が幻想的な雰囲気となる。

2月中旬には「ふと(210)の日」イベントが毎年開催され、通常は乗船人数が揃わないと出航できないボートダイビングに1名からでも参加でき、透明度が高い冬の「富戸ブルー」を独り占めすることも可能だ。

そして、この時期は富戸ホールを見るのに一番おすすめの季節。太陽の位置が低く、ホール内に差し込む光が斜めに当たり透明度も高いため、ホールの出入り口付近では息を呑むような美しい光のカーテンが出来上がり、海から癒しをもらえる。生き物はフリソデエビ、クマドリカエルアンコウ、ツノザヤウミウシなどの人気種が観察できる。

富戸の現地ダイビングサービス情報

ダイビングのあとは天然温泉で癒されよう

富戸でのダイビングでは、「いとう漁協 富戸ダイビングサービス」を利用する。ここの名物は、言わずと知れた「温泉丸」。漁船を湯船に改造した源泉100%のかけ流しの露天風呂があり、大海原を望みながら温泉を堪能できる。温泉丸に入るために富戸にダイビングしにくる温泉好きダイバーもいるほど。

また、男女ともに屋内シャワー室と更衣室があり、シャワーは各8基あるので、夏の混雑期でもスムーズに着替えを済ませることが可能。さらに「ヨコバマ」に2基、温泉丸前に4基の屋外シャワーも設置されている。女性専用のパウダールームもあり、中には化粧直しに必要な鏡やドライヤーが使用可能で、その日に電車などで帰る女性ダイバーには嬉しい設備だ。

施設はリニューアルされ充実して綺麗に

多くのダイバーが訪れる富戸だけあって、休憩スペースも多い。2025年にヨコバマに新しく設置されたウッドデッキスペースを含め、ヨコバマに2ヶ所、ダイビングサービスの隣に2ヶ所の合計4ヶ所の休憩エリアがある。

屋根がある「ヨコバマ」の休憩スペースは、冬には防風シートと薪ストーブが設置され、スーツを着たまま暖をとることができる。ドライエリアのラウンジは完全室内の休憩スペースのため、雨風を凌げるのはもちろん、夏には冷房、冬には暖房が効いていて快適に休憩することが可能だ。

休憩スペースも多く、ハイシーズンも安心
いとう漁協 富戸ダイビングサービス
〒413-0231 静岡県伊東市富戸987 
TEL:0557-51-5877

富戸のおすすめアフターダイビングスポット

「立ち寄り温泉 伊豆高原の湯」

富戸のダイビングスポットから車で10分ほどの日帰り温泉施設。室内風呂や露天風呂、サウナのほか、どろ湯もあり、泥パックをしながら入浴を楽しめる。

伊豆高原まったりダイニング 風

富戸駅から2つ隣にある伊豆高原駅から徒歩約5分の場所にある飲食店。昼はハンバーガー屋で、夜は和洋中いろいろな料理を味わうことができる。ダイバーからも人気で、潜ったあとに絶品のハンバーガーを食べに立ち寄る人も多い。

富戸のまとめ

伊東市を代表するダイビングポット、富戸。初心者でも安心のビーチ環境と、上級者を唸らせる迫力の地形ポイントまで、幅広いダイバーを満足させてくれる海だ。

そして温泉丸という唯一無二の存在が日々の疲れを癒してくれる。歴史ある地形と季節ごとに主役が変わる生き物たちをぜひ体感して欲しい。

情報・写真提供
ダイブヒーリング

伊東市ダイバーズ協議会
静岡県ダイバーズ協議会の正会員として、ダイビング事故防止やマナー向上、自然保護の啓発に取り組んでいます。船舶・漁業関係者や市民、観光客と連携し、安全で秩序ある海洋レクリエーションの普及と地域発展に寄与しています。

認定NPO法人アンダーウオータースキルアップアカデミー
水難事故や災害発生時に、訓練された民間ダイバーが水際の応急対応や海に関わる支援活動を行い、地域の安全に貢献する団体。会員約80人で、潜水士資格を持つダイビング指導者を中心に救助・捜索や漁業復興支援などに取り組んでいます。

伊豆半島ジオマリンクラブ
伊豆半島の海をフィールドに活動する、ダイビングショップのプロインストラクターによる、伊豆半島ジオパーク公認の海洋ガイド団体です。各ショップには、伊豆の海を知り尽くしたジオガイドが在籍しています。伊東市のダイビングショップにも、20名を超える会員が在籍しています。

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PROFILE

デザイナーとして多忙を極めていた最中、ダイビングに出会い人生が一変。
ダイビングの素晴らしさを広めたいという想いからインストラクターの資格をとり、デザイン会社から雑誌DIVERを出版するダイバー株式会社に転職。雑誌編集や営業、イベント運営などに携わる。
現在は独立しフリーランスデザイナー、ダイビング関連の編集者・ライター、週末は伊豆の現地ショップの非常勤インストラクターなど、多岐に渡り活動中。

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