水中写真家・広部俊明さんの流されたカメラが発見された!?その真相に迫る!

ダイビングをしていたら、気づいたらぶら下げていた指示棒やカメラが流されていた。誰しもが経験があることではないが、SNSなどで「GoProを大瀬崎で無くしたので見つけたら教えてください!」、「富戸でカメラを拾ったので思い当たる方連絡をください」というような投稿を目にしたことを、一度くらいはあるのではないだろうか。

今回はそんなダイバーがなるべく経験したくない海での落とし物のお話。まさか見つからないと思われた一眼カメラが発見されたという奇跡のエピソードだ。

広部俊明

徳之島の海中鍾乳洞「ウンブキ」の開拓者としても知られる、水中探検家であり写真家の広部俊明さんのカメラが、実は昨年オーシャナの取材中に流されるという事件が起こり、なんとその半年後に見つかったのだ。なぜ流されたのか、そして発見されたカメラは無事だったのか!? そこで今回は、この奇跡体験をもっと知りたいという思いから広部さんへインタビューを敢行!

エキジットの一瞬の出来事
大島海峡へ消えたカメラ

大島海峡

事件が発生したのは2020年11月某日、5日間の取材の2日目、お昼どき。広部さん、水中写真家の戸村裕行さん、オーシャナのスイカの3名で奄美大島とその南部に位置する加計呂麻島との間「大島海峡」内にある離島付近で水中撮影を行っていたときのこと。

奄美大島ダイビング

エダサンゴの群生やそれに群がるオヤビッチャやスズメダイ、美しい水中景観を撮影し、各々が水中でのミッションを無事に終えてエキジット。ランチのために帰港しようと船を出してすぐ、突然広部さんが叫び出した。

「俺のカメラがない!」

いやいやまさかそんな。水中カメラマンがカメラを水中に忘れるなんて…。とみんなで船の上を見渡したが、本当に見当たらない。

カメラをなくす前日の一コマ

カメラをなくす前日の一コマ

スイカ

本当にあの時はびっくりしましたね。いつ、どういう状況でなくなったんでしょうか。

広部さん

エキジットの時ですね。首にカメラをぶら下げて、持っていた水中スクーターやタンクを船に上げていったのですが、おそらくその時に首から外れていたのでしょう。かなり流れが速かったので次々に船にあげ、最後に自分もあがったとき、当然カメラは最初に上げていると思って満足してしまったんですね。あー恥ずかしい…。

このエキジットの瞬間…!?

このエキジットの瞬間…!?

スイカ

カメラがないと気づいた時、どんな心境だったのでしょうか。

広部さん

水中カメラマンをやっていて一番恥ずかしいことをやってしまったと思いましたね。明るく振る舞っていたけど、実は相当落ち込んでました(笑)。

スイカ

ちなみに、総額いくらくらいだったんですか?

広部さん

150万円くらいです。カメラとハウジングだけでなく、ライトやポート、フロート、GoProもついていたので。

スイカ

150万円が海へ…。

広部俊明カメラ

これだけ重そうなカメラであれば、沈むはずなので、落とした場所に戻れば見つかるのでは…?と多くの方が思うだろう。ところがどっこい、ここは広部さんのプロの技術でカメラ自体が中性浮力を取れるよう、フロートなどで重さが調整されており、綺麗に中層を漂う仕様となっているのだ。

中性浮力をたもつカメラ

中性浮力が取れるように調整されている

これが仇となり、すぐにエキジット地点に戻って捜索するも、すでにカメラは大島海峡の流れに乗ってどこかへ消えたあと。しばらく船の上から付近を探すも見つけられなかったのだ。

明るく振る舞うが、カメラが見つからず実は落ち込んでいたという広部さん

明るく振る舞うが、カメラが見つからず実は落ち込んでいたという広部さん

広部さん

正直もう流されて見つからないだろうなと思っていたので、どちらかというと、この後の撮影を予備カメラでどうやってやるかっていうことで頭がいっぱいでした。

加計呂麻島で発見されたカメラ
その安否はいかに

カメラが大島海峡に消えてから約半年経った2021年の5月初旬、奄美大島から一報が入った。

「加計呂麻島で、広部さんのカメラが見つかったかもしれない」

加計呂麻島の岩の多いビーチに横たわっているカメラが発見されたと。この時も「いやいやまさか…」と思ったが広部さんに確認すると、流されたカメラで間違いないよう。カメラは大島海峡から出ることなく漂流し、半年の時を経て、加計呂麻島に流れ着いたのを発見されたのだ。

回収された撮影機材

回収された撮影機材

スイカ

発見されたと聞いた時、どんなお気持ちでしたか?

広部さん

最初ね、GoProが見つかったんだと思ったんですよ。そのつもりで、連絡をくれたゼログラヴィティのガイドの栗原さんとやりとりしてたら「GoProがついてたのはどんなカメラですか?」って聞かれたので特徴を伝えたら、「発見者に直接連絡して確認して欲しい」って言われました。急いで連絡したら「確かにあなたのものですね」と返信が来ました。

スイカ

奇跡…!

大島海峡で撮影していたときの広部さん

大島海峡で撮影していたときの広部さん

広部さん

はしゃぎましたね。でも、同じもの買っちゃったなあ…とも一瞬思いました(笑)。

スイカ

買っちゃってたんですか(笑)。

広部さん

今回の反省を生かして、次の撮影の仕事の時には、流されたものとまるっきり同じ撮影機材にプラスして、流れちゃった時用の4Kカメラを用意してました。そこからはもう、必ず2台体制で撮影をおこなってますね。不幸中の幸いで、2台カメラを使用することで、開拓中のウンブキなんかではかなりいい映像が撮れてますよ。

スイカ

リカバリー力がさすがですね!手元に戻ってきたカメラとハウジングはどんな状態でしたか?

広部さん

上部が劣化して少し傷があったけど、カメラも中のデータも、ライトもすべて無事でした!

戻ってきたカメラ

戻ってきたカメラ

上部に少し傷が

上部に少し傷が

漂流中に岩などで擦ったのかハウジング下部にも傷があるものの中身のカメラは無事

漂流中に岩などで擦ったのかハウジング下部にも傷があるものの中身のカメラは無事

撮影データもばっちり残っていた

撮影データもばっちり残っていた

スイカ

半年海で放置されても無事とは…。

広部さん

実はこのハウジングを作ったのは、僕のダイビングショップ「マリンドリーム」にもともといたスタッフなんですよ。今はシーツールっていうところでハウジングを作っていて、そこで作ってもらったやつなんです。

スイカ

見つかっただけでなく、ちゃんと使えるっていうのがすごすぎますね。

広部さん

もう一生このハウジング使います。

カメラが戻ってきてご機嫌な広部さん

カメラが戻ってきてご機嫌な広部さん

広部さん

あとね、カメラが戻ってきてから撮影の仕事がバンバンと入ってきてます。なんか、運が戻ってきたみたい(笑)。

スイカ

良かったです。カメラがなくなった時、すごく落ち込んでて、誰にも言わないでとおっしゃってたのに、こうして取材を受けていただけたので、本当に見つかって嬉しかったんだなと思いました(笑)。

広部さん

しばらく立ち直れなかったし、コロナ禍で収入がない中での再購入だったので痛かったですが、こうしてカメラも戻ってきて、予備の予備があるという万全の体制ができたと思いますし、今後は初心に帰って新人カメラマンの心構えで撮影をしていきたいと思います。

スイカ

広部さん、ありがとうございました。

半年という時を経て広部さんの元へと帰ってきたカメラ。どのように漂流をしていたのか、地元の方に大島海峡内の流れについて聞くも、漂流期間が長すぎてまったく予想がつかないとのこと。一度は広部さんから離れて一人で探検がしたかったのだろうか。これからはまた広部さんとともに、水中を探検し、私たちへ新しい発見と感動を与えてくれると信じている。

広部俊明プロフィール

水中探検家&水中カメラマン
沖縄県恩納村在住。1998年に日本最大級の水中洞窟『広部ガマ』を発見。以後、日本、世界各地で水中鍾乳洞や海底遺跡らしき地形を発見している。沖縄の恩納村では100以上のダイビングスポットを開発し、フィリピンなど未開のダイビングエリアの開発にも尽力。
水中カメラマンとしては2000年からTBSビジョンの水中ライブラリーを担当。2007年から2013年までCSテレ朝チャンネルで“水中探検家広部俊明が行く海からのメッセージ”という1時間番組を114本撮影と出演。日本はもとより、東南アジア、オースートラリア、アメリカ、ガラパゴス、オーストラリア、モルディブなどいろいろな地域を取材、また同じテレ朝チャンネルにて本気釣りという番組の水中撮影とコメンテーターを担当し110本撮影出演。
他、クレイジージャーニー、夢の扉、林先生も驚く初耳学、爆報ザフライデー、報道ステーションなど、報道番組からバラエティー番組まで多数出演。
著書は“体験ダイビングをやろう”“ゆたかなる恩納村の海”“くまのみのおさんぽ”などがある。

広部さんオフィシャルブログ:「水中探検家広部俊明 海を行く!」はこちら

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。