ペンギンは北極にいないって知ってる?実際の生息場所、そして生態とは
ペンギンはその愛らしい姿と独特の生態で、多くの人々に愛されている動物だ。一般的に、ペンギンと言えば寒いところに住んでいると連想する方が多いでだろう。実際にペンギンは南極をはじめ、南半球に生息しているが、北極には姿を見せない。なぜ、ペンギンは南半球にいて北極にいないのか。この疑問について詳しく見ていこう。
ペンギンの生態と南半球での生活
現在、地球上には、コウテイペンギン、アデリーペンギン、キングペンギンなど18種類のペンギンが、南極とその周辺の地域、オーストラリア、ガラパゴス諸島などに生息している。ペンギンは鳥類でありながら空を飛ぶことはできないが、その代わりに海を泳ぐことを得意としている。主に魚類や甲殻類などの水中生物を捕食し、陸上で待つヒナに餌として与えている。
過酷な環境で子育てをするコウテイペンギン
ほとんどのペンギンの繁殖期は春から夏にかけてだが、コウテイペンギンだけは冬の南極大陸で繁殖する。この時期の南極大陸は極端に寒く、-60度という想像すらし難い過酷な環境。それでもペンギンはこの極地で子育てを行い、忍耐強さと適応能力を身につける。そのため、コウテイペンギンは鳥類の中で最も過酷な子育てをする鳥だと言われている。
実は温かい場所にもいる。ペンギンの生息地域について
ペンギンは主に南半球の寒冷な地域である南極周辺に生息しているが、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、南アメリカの沿岸部などの温かい地域にも生息地している。
赤道直下の最も低緯度に生息するガラパゴスペンギンが住むガラパゴス諸島は、赤道を超えて少しだけ北半球にはみ出ている。
南極大陸:コウテイペンギン、アデリーペンギン
南極周辺:ジェンツーペンギン、マカロニペンギン、ヒゲペンギン、イワトビペンギン、キングペンギン、ロイヤルペンギン
ガラパゴス諸島:ガラパゴスペンギン
南アフリカ沿岸部:ケープペンギン、マゼランペンギン、フンボルトペンギン
ニュージーランド・オーストラリア:シュレーターペンギン、スネアーズペンギン、フィヨルドランドペンギン、キガシラペンギン、ハネジロペンギン、コガタペンギン
ペンギンが南半球に生息する理由「海水の温度と餌の関係」
寒冷地でなくともペンギンが生息するこれらの地域には、ある一つの共有点がある。それはなんだろうか?
ペンギンが南半球に集中して生息する背景には、海水の温度と餌の関係が深く関わっているという。ペンギンは冷たい海水を好むのではなく、その海域に豊富な餌となる動物プランクトンが生息するために、冷たい海水域(寒流)を好んでいる。冷たい海水は塩分濃度が高く、栄養分が豊富なため、植物プランクトンが大量に発生。これがペンギンの主な餌となる魚類や甲殻類、オキアミの餌となり、ペンギンが生息する海域の栄養循環を支えているのだ。
ペンギンが北極にいない理由「餌の質と天敵動物の存在」
ペンギンの始祖はニュージーランド周辺で誕生したと言われている。そのため、熱帯の暖かい海水が流れる赤道付近の海域はプランクトンが乏しく、赤道を越え北半球に行くことができなかったと言われている。
また、ペンギンが南極やその周辺の地域に生息する主な理由は、寒流が流れ、豊富な餌が存在するからなのだが、北極の寒流は南極のものほど栄養が豊富ではない。この栄養の違いこそが、ペンギンが北極に生息しない理由の一つと考えられている。 さらに、北極にはホッキョクグマ、アザラシなどの天敵となる動物も生息している。ペンギンは陸上での移動が得意ではなく、特に繁殖期には陸上での活動が増えるため、陸上捕食者の存在は大きな脅威となるのだ。
かつて北極にペンギンがいた!? 絶滅した鳥「オオウミガラス」
過去には、ペンギンに似た鳥「オオウミガラス」が北極に生息していた。オオウミガラスはペンギンよりも短い期間でヒナが巣立つため、北極のような陸上に天敵動物がいる環境でも生存できていた。しかし、オオウミガラスは、最終的に人間の乱獲により絶滅してしまった。
寒流の栄養の違い、陸上捕食者の存在など、様々な生き物の生態活動がつながってペンギンが南半球に生息していることがわかった。現在は、地球温暖化により住む場所が縮小していると言われている。ペンギンと人間との関係がオオウミガラスのような結果にならないよう、私たちも自然環境と調和しながら、多様な生物たちが安全に生息できる世界を築いていきましょう。