「秋の叙勲」を受章したモビーディック社長・保田氏に取材を敢行!ウェットスーツ業界初の快挙

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ウェットスーツやドライスーツのメーカーでお馴染み「MOBBY’S」を手掛ける、株式会社モビーディックの代表取締役社長・保田守氏(以下、保田氏)が、令和4年秋の叙勲で「旭日単光章」を受章したというニュースが飛び込んだ。国内のウェットスーツ業界においては初の快挙となり、ダイビング業界全体にとっても嬉しい吉報だ。今回、保田氏から直接、喜びや同社が大切にするこだわりなどを伺うことができた。

”秋の叙勲”とは

叙勲(じょくん)」は、個人の功績や業績を国家が表彰し、勲章が授与されることで、長年にわたる功績や業績を対象とする側面が強く、基本的に70歳以上が対象となる。ただし、警察官や自衛官といった危険性の高い業務に永年従事し、社会に功労のあった55歳以上の方も対象になる場合も。年に2回、春と秋に行われ、今年の秋の叙勲は、旭日章及び瑞宝章を合わせて3,999名の方々が受章した。

また、勲章には、功績の内容に着目し、顕著な功績を挙げた方に授与される「旭日章(きょくじつしょう)」と公務等に長年にわたり従事し、成績を上げた方に授与される「瑞宝章(ずいほうしょう)」がある。それぞれ大綬章(だいじゅほう)・重光章(じゅうこうしょう)・中綬章(ちゅうじゅしょう)・小綬章(しょうじゅしょう)・双光章(そうこうしょう)・単光章(たんこうしょう)と6段階に区分されている。今回、保田氏が受章したのは旭日単光章。

ウェットスーツ業界初の受章について

大変名誉なことであり、とても嬉しく思っています」、と保田氏は率直に喜びの言葉を口にした。

叙勲の受章者の選考は、各省各庁の長が叙勲候補者を内閣総理大臣に推薦し、いくつかの審査を経て最終的な決定がされる。保田氏は経済産業省から推薦されていることを電話で知らされ、そのときは予想もしなかった吉報に、驚いたという。

「11月3日の文化の日の正式発表を前に、事前に新聞社からの取材を受け、実感が湧いてきました。本来であれば、国での式典(伝達式・天皇陛下の拝謁)があるようですが新型コロナウイルスの影響で今回は中止となり、勲記と勲章は郵送にて手元に届きました。社内からも祝福いただき、とても嬉しかったです」。

テレビでも取り上げられた

テレビでも取り上げられた

モビーディックのウェットスーツへのこだわり

同社の本社工場は宮城県石巻市にある。この地で事業をスタートさせたのには、石巻市が保田氏の地元であることと、漁業が盛んな地域であることが関係しているそう。

「石巻は海水温が低い太平洋側の地ということもあり、潜水漁業を行う漁業関係者からは品質の良い潜水服(ウェット・ドライスーツ)が求められていました。そこで、この地に潜水服の生産拠点を置き、提供することをきっかけに、モビーディックは歴史を刻んできました」。

石巻市から始まり、今となっては日本全国、そして世界へと製品が届けられるまでに成長したモビーディック。国内では、レジャーダイバー用はもちろん、警察や自衛隊、海上保安庁向けの特殊業務用スーツも手掛けているが、そこにあるこだわりとは。

「何より、品質を第一で考えています。これは言葉にするのは簡単ですが、実現するのはかなり難しくて。新製品の開発はトライアンドエラーの繰り返し。正直、過去にはお客様の期待に応えきれなかったこともあります。そういったさまざまな経験を経て、少しずつ、着実にいいものをつくっています」。

採寸、素材選び、デザイン、型紙、接着、縫製まで自社で一貫しており、独自の技術やノウハウに強みを持つ。お客様の体にフィットすることと、動きやすいデザインであることの両立をひたむきに追求しているのだという。

モビーディックに根付く、社会に貢献したいという姿勢

同社は、事業を営むうえで地域社会へ貢献することこそが重要であるとして、今日まで歩んできた。その取り組みや考えについて、過去にocean+αでも取材をしてきた。今回の叙勲のひとつの理由にもなっているであろう“社会貢献”という文脈について、東日本大震災と新型コロナウイルス感染拡大の時のエピソードを伺った。

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「弊社は、宮城県石巻市に本社工場と事業所を構えており、2011年、東日本大震災の津波の影響で、沿岸部にあった事業所が、3億円にも及ぶ多大な被害を受けました。多くの地域住民も職を失い、さらに家を失い、仮設住宅に住まざるを得なくなってしまい、大変苦しい状態に。そこで、失われた雇用をなんとか復活させようと、地元の大学とも連携し自宅でもできる仕事としてウェットスーツの端切れを利用した小さなアクセサリーづくりの内職をお願いすることにしたんです。また、本社工場は幸いにも大きな被害を免れたため、お客様や取引先様など多くの方々の支援もありつつ、早い段階で再稼働させ、復興に漕ぎ着けました」。

一度は失われた職をすぐに復活させたこと、産業廃棄物となるはずだった端切れを使用しごみを削減したことなどは、常に従業員や地域、環境問題への貢献を考えて事業を行ってきたからこそ、できたことではないだろうか。

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「新型コロナウイルスの感染拡大が始まったときは、マスクが不足したときがありましたよね。そこで我々は、ウェットスーツ用の表面に使っているジャージ素材を応用して、マスクを生産し、延べ20万枚を供給しました」。

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ダイビング業界以外での幅広い社会貢献。宮城県石巻市だけでなく、日本全国に貢献してきたことは疑いの余地がない。国内を代表するウェットスーツメーカーから秋の叙勲受章者が誕生したことは、ダイビングをはじめとするウォータースポーツに関わる者、皆にとって大変喜ばしいニュースとなったことだろう。

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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