【開催レポート】水中探検家パトリック・ウィドマン特別講演&サイドマウントリブリーザーデモin 沖縄

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世界中の水中洞窟をはじめ、沈船や未開の水中を開拓する水中探検家・パトリック・ウィドマン氏がメキシコから来日。5月9日(木)に沖縄で特別イベントがダイビング教育機関TDIの主催で開催された。イベントでは自身がディレクターを務めるサイドマウントリブリーザー「KISS Sidewinder(キス サイドワインダー)」のデモンストレーションと、パトリック氏の経験してきた水中探検の経験を講演。ocean+αからは編集部のスイカが参加してきたのでその様子をお伝え!

KISS Sidewinderのセッティングと解説

朝9時、沖縄県恩納村のダイビングショップ「TAKE DIVE」に集合し、器材セッティングをするところからイベントは始まった。

本イベントに集まった10名のダイバーのうち、KISS Sidewinderで潜るのはTDI代表の加藤大典氏を入れて4名のみ。そのほかは、一般的なダイビングスタイルであるシングルバックマウントが2名、ダブルタンク(背中に二本背負う)が1名、サイドマウント(タンクを体の側面に装着する)が2名、チェストマウント(胸に装着する)タイプのリブリーザーが1名と、十人十色なダイビングスタイルで参加。「テクニカルダイバーでサイドワインダーのことを知りたい」、「テクニカルダイビングをしたことはないけど興味がある」など参加理由はさまざまであった。

主催のTDIの加藤氏

KISS Sidewinderは、サイドマウント用のBCに装着し、サイドマウント用のガスシリンダーとお尻につけた酸素シリンダーを繋いで使用するタイプのリブリーザー。リブリーザーの中でもCCR(クローズドサーキットリブリーザー)と呼ばれる種類で、口から吐いたガスが水中にまったく排出されず、再利用されるタイプだ。通常の器材セッティングと違う工程や作りに、セッティングの段階から、参加者から質問が飛び交う。

リブリーザーとは?

一般的なサイドマウント

KISS SidewinderをサイドマウントBCに取り付けた様子。 ①呼気がシステムを循環して口まで運ばれる。循環の際、呼気は二酸化炭素吸収剤 を通ってくる。さらに酸素を自分で追加することで深度に合った濃度のガスに調整できる。 ②呼気の二酸化炭素を吸収 するスクラバーを入れるキャニスターや酸素センサーが搭載されている

反対側から見るとこんな感じ。①呼気が②の方向へ流れていく。②スクラバーや酸素センサー③酸素シリンダー

反対側から見るとこんな感じ。①呼気が②の方向へ流れていく。②スクラバーや酸素センサー③酸素シリンダー

セッティングをしながら仕組みを説明する加藤氏

サイドマウント用BCにKISS Sidewinderを取り付けたところ

ここに酸素シリンダーを繋いでループの中に酸素を送る

リブリーザーに酸素を送り込むと、ダイブコンピュータにシステム内のガスの酸素濃度が表示される。陸上でこの操作を行うことで、酸素センサーがきちんと反応するかあらかじめ確認をしている

いざ水中へ
KISS Sidewinderのデモンストレーション

突然だがリブリーザーのメリットといえば、何が思い浮かぶだろうか。まず一つはガスがオープンサーキット(吐いた息がそのまま水中に排出される一般的なダイビングの仕組み)に比べて大幅に長く持つことだろう。また、泡が出ないので生き物により近づくことができたり、呼吸音が聞こえないので、より自然に近い状態の海を感じられ耳でも楽しめる。吸うガスが乾燥しないというのもダイバーにとっては嬉しいだろう。

加えてサイドマウントスタイルのKISS Sidewinderにはどんなメリットがあるのか?水中で実際にそれを間近に見ることができたのが本イベントだ。

潜ったのは嘉手納町にある「水釜(みずがま)」というポイント。ブリーフィング後、各々セッティングを終え、エントリーしていく。

BCとリブリーザーのセットを装着

シリンダーを装着。かっこいい…

水面で一度集合して水中へ。沖の方に砂地があるとのことでそこへ向かって泳いでいく。

KISS Sidewinderユーザーたちはある程度落ち着いたところでさまざまなデモンストレーションを見せてくれた。

シリンダーを外して前へ。狭い洞窟や隙間を通ることができるサイドマウントの利点がそのまま生かされている

バディへのエアシェア。サイドマウントのシリンダーにはレギュレーターがつけられていて、何かあればオープンサーキットに変えられるようになっている。エアシェアの場合もサイドマウントの手順と変わらないのでもともとサイドマウントをしていたダイバーであれば新しく手順を覚える必要もない

バディへのエアシェア。サイドマウントのシリンダーにはレギュレーターがつけられていて、何かあればオープンサーキットに変えられるようになっている。エアシェアの場合もサイドマウントの手順と変わらないのでもともとサイドマウントをしていたダイバーであれば新しく手順を覚える必要もない

フィンを脱いでも水平姿勢が取りやすい

泡が出ないのでリブリーザー組はいつでもシャッターチャンス

…ここでお気づきの方もいるかもしれないが、そう、主役のパトリック氏が不在である(笑)。パトリック氏は本イベント前日までKISS Sidewinderのインストラクターコースを実施。無事に終えたものの、最終日にシリンダーを運んでいる最中に腰を痛め、病院送りとなってしまったのだ。その後、今回水中カメラマンとして参加した「ベントスダイバーズ」の大原拓氏おすすめの整体に行って、ことなきを得たようだが、さすがにダイビングは難しいとのことで、急遽デモンストレーションはパトリック氏抜きで行うこととなったというわけだ。

パトリック氏の講演

そんなパトリック氏、午前のダイビングを終えて片付けているとどこからともなく現れた。腰はまだ痛いようだが講演はできるよう。TAKE DIVEオーナー・吉村秀信氏のご子息が営む、ショップ併設の居酒屋で手作りランチをいただきそのままそこで講演という運びだ。

ランチタイム

講演ではパトリック氏の自己紹介から始まり、水中洞窟探検の様子を詳細に話していく。どのように現地と交渉し、協力を得て、開拓を行っていったのか。

4月にシンガポールで行われたアジア最大級のダイビングの展示会「ASIA DIVE EXPO 2024」ではベストスピーカーにも選ばれたというパトリック氏。水中探検をしない人にもわかりやすく、ユーモアを交えながら何から何まで話してくれる。

休憩タイムも参加者からの質問に答え続ける

気づけばあっという間に一日が終わっていた。探検のことやリブリーザーのこと、まだまだ聞きたいことだらけだったがイベントは終了。リブリーザーダイバーもそうでないダイバーも実りある一日となっただろう。

なんとなく難しそう、とかよくわからないと思っていたサイドワインダーだったが、今回イベントに参加して、そのハードルの高さがだいぶ下がったと感じた。サイドワインダーは、ケーブダイビングやレックダイビングのペネトレーションにも最適でもあるが、世界的に、レクリエーショナルのサイドマウントダイバーの間でも大人気となっている。その理由は、もともとサイドマウントダイバーであれば、既存のリブリーザーと比べてバランスがとりやすく取り扱いがしやすいからであるということもよくわかった。

実際に利用している人がこんなところが好き、便利だから使っているという言葉と使っている姿に触れることが良いのだろう。少しでも興味がある方はぜひこのようなイベントに参加して、実際の使用シーンを見てみてほしい。そして、次こそパトリック氏と潜れることを楽しみにしている。

▶︎KISS Sidewinderについてもっと知りたい人はこちら

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PROFILE
IT企業でSaaS営業、導入コンサル、マーケティングのキャリアを積む。その一方、趣味だったダイビングの楽しみ方を広げる仕組みが作れないかと、オーシャナに自己PR文を送り付けたところ、現社長と当時の編集長からお声がけいただき、2018年に異業種から華麗に転職。
営業として全国を飛び回り、現在は自身で執筆も行う。2020年6月より地域おこし企業人として沖縄県・恩納村役場へ駐在。環境に優しいダイビングの国際基準「Green Fins」の導入推進を担当している。休みの日もスキューバダイビングやスキンダイビングに時間を費やす海狂い。
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