鹿児島の海を深く知る一冊。ダイビングガイド・松田康司氏が贈る写真集『薩摩海記』
温帯種から亜熱帯種まで、1300種もの魚たちが暮らす鹿児島の海。その海に昼夜を問わず潜り続けてきた鹿児島県の「ダイビングショップSB」のオーナーでありガイドの松田康司氏(以下、松田氏)が、長年の経験と記録を一冊にまとめた写真集『薩摩海記』を発表した。この写真集は、美しい水中写真だけでなく、鹿児島の海の多様な姿を余すことなく伝えるものとなっている。発表に際し、松田氏にもコメントをいただいたので本書の内容と併せてご紹介していく。
文章にもこだわったフォトエッセイのような内容
ダイビングショップSBといえば、生態観察を得意とするダイビングを連想する方も多いかもしれない。しかし、本書を開くと、それが松田氏の見てきた海の一側面に過ぎないことがよく分かる。生き物たちの生の輝きや変化する海の色、人と海のつながりが、文章とともに表現されている。
「本書のテーマは、私が幼い頃から遊び場にしていた鹿児島湾とその周辺の海です。ダイビングをしない方を含め多くの方に伝わりやすくするために、写真だけではなく、文章を多めにして、フォトエッセイのようにもなっています。また、水中写真家ではなく、ガイドとして毎日の様に潜る海の美しさや生物の可愛らしさキャッチーなものだけに触れず、時に目を背けたくなる様なシーンや小さな変化、さらには海とそこに生きる人々の暮らしなどギュッと詰め込んだ内容になっています」と松田氏。
鹿児島の海を専門にするガイドとして、その海に対する情熱や想いは並大抵のものではないはずだ。どのような想いを込めて制作されたのだろうか。
「まずは、ダイバーだけでなく海を知らない方にも読んでいただきたいと考え制作しました。なので、ダイバーの皆さまに気に入っていただけるかは定かではありません。しかし、もちろんダイバーの皆さまにも読んでいただきたいですし、海に対する新たな視点であったり、楽しみや興味を見出していただけたと思います」。
実際に本書を手に取った他の水中写真家やダイビングガイドらからも、「彼の歴史を詰め込んだ一冊」、「写真、文章に魂がこもっている」、「鬼気迫るものを感じました」、「海が好きなら絶対読むべし」といった絶賛の声がSNS上には多数上がっている。
読者の皆さまへ
最後にocean+α読者へのメッセージをいただいた。「多くのダイバーの皆さまは、休日の楽しみの中にダイビングというものがあり、仲間との出会いや生物や海からの癒しを求めて通っていることと思います。水中写真もSNSでの交流や記録のために撮影される方も多いかと思います。もちろんそれは素晴らしいことですが、ダイビングをする際にほんの少し思考をその先へ…。なぜここにこの魚達は群れているのだろうか?なぜ、今この行動をしたのだろうか?そんな事を考えながら潜り、観察し、撮影すると今より楽しみが広がるのではないでしょうか。写真集に登場するシーンは特別なものではなく、水中での日常ばかりです。そんな日常を垣間見に手に取っていただけたら幸いです」。
鹿児島の海を潜ったことがある人も、まだその魅力を知らない人も、本書は新たな視点を与えてくれるだろう。松田氏が見続け、感じてきた鹿児島の海の物語を、ぜひ手に取って体感してほしい。
写真集詳細
•タイトル: 『薩摩海記』
•写真・文: 松田康司
•形式: A4変形型・104ページ
•出版: 南方新社
•価格: 2,750円(税込)
写真集はダイビングショップSBやAmazonで購入可能。