東京から近場の日帰りダイビング!千葉の館山でコブダイ撮影ボートダイブ

お住まいの地域や潜りに行くダイビングスポットによってベストシーズンは違えど、日本全国平均では4月が最もダイバーが少ないかもしれない。その裏付けとも言えるべく「ダイビング」のGoogle検索数は4月が最も少なく、5月から増えていく傾向がある。

ダイビングサービスやダイビングショップでも密になることが気になるこのご時世、平日の空いてる時に近場の海で潜るライフスタイルを提案したいと思う。ではいったい、東京周辺でのダイビングシーズンはいつがおすすめなのだろうか?
そこで今回スポットをあてるのは、日本の太平洋側でサンゴの北限と言われる房総半島。4月に千葉は館山の海で出会ったベテランダイバーとコブダイの話をしよう。

館山の波左間海中公園でコブダイを撮影

ダイバーの真上を通るコブダイ

東京都内や千葉県内のダイビングショップが日帰りや1泊2日で訪れるダイビングスポット、房総半島の館山「波左間海中公園」へコブダイを撮りに行ってきた。東京に住み始めてまだ1年しかたっていないのだが、首都圏の神奈川・千葉はダイビングスポットとしても本当に素晴らしい場所だと感じている。

リゾート感あふれるドライブも楽しめる房総半島

東京湾アクアラインを通って、のんびり走ること約1時間30分。千葉県の房総半島に入ってからは通勤の車も減り、緑豊かな道を気持ちよく進む。途中、トイレ休憩や一服のコーヒーブレイクを挟んでも2時間ほどで到着する。この余裕が平日朝イチの魅力である。

関東の海、ましてや東京湾に面する海の中を潜るなんて、沖縄や海外の海しか潜っていないダイバーには考えられないだろう。しかし、千葉県の房総半島には南国リゾートの青い海を彷彿とさせる美しい海が存在する。透き通るような透明度に白い砂浜とまではいかないが、同じ東京湾でも東京都内や千葉市内とは桁違いだ。

房総半島の波左間から対岸の三浦半島を望む

波左間海中公園のコブダイには物語があった

国内では新潟県の佐渡島がコブダイが見られるダイビングスポットとして有名だが、波左間海中公園でも大きく成熟したコブダイを見ることができる。コブダイは雌性先熟(しせいせんじゅく)という生態で、メスで生まれて50cmくらいまで育ち、グループの中で争って一番強い個体がオスに性転換し、立派なコブを持つようになる。オスは80cm〜1mにまで達する。

スキューバダイビングで大型の魚を見ることだけでも楽しいが、コブダイにはハーレムや闘争などのユニークな物語があり、彼らの水中歴史を現地のガイドに聞きながら観察することがさらに楽しい。

フォトコンの優勝作品に影響され、コブダイの正面顔を撮影

2021年にイギリスで開催された水中写真専門のフォトコンテスト「Underwater Photographer of the Year 2021」で評価された写真のモデルは波左間のコブダイ、頼子(よりこ)さん。30年以上も波左間の海に住み続けているというコブダイだ。

波左間のダイビングスポット一帯に住むコブダイのグループの中では最も立派なコブを持ち最大級のサイズなのだが、コブがあるのはオスのはず。なぜ女性の名前を思わせる頼子なのだろうか?

コブダイの歴史を語る波左間海中公園のオーナーガイドの荒川さんに話を聞くことができた。

昔々、波左間の海には頼朝という強いコブダイがいたんです。そして、彼といつも一緒にいるメスのコブダイを、頼子と呼んでいました。百戦錬磨だった頼朝も、ついに他のオスとの争いに敗れてしまい、今でいうダイビングスポットの“高根”から追い出された頼朝は、コンクリート漁礁のダイビングスポット“ドリーム”のある辺りでひっそりと暮らすようになったんです。生涯を共にしていたと思われる伴侶の頼子は、敗れてしまった頼朝について行かず、居心地の良い場所に残りました。

時代は移り変わり、いつしか頼子は他のコブダイをしのぐ強さを手に入れ、なんと波左間の王座を手にした(頼朝はどうなった…?)そしていつの日か立派なコブの冠を持ったボスコブダイ(オス)になったというわけだ。

まるで人間社会のようなエピソードに、胸が熱くなる。30年以上という長い期間に渡ってダイビングを通じ、水中生物の観察を続けてきたダイバーだからこそできるこういった話を次世代に伝えていくことも、ガイドとしての大切な仕事なのではないだろうか。

波左間海中公園のオーナーガイド荒川さんとコブダイの頼子さん

波左間海中公園には港に隣接したダイビングサービスがあり、駐車場、温水シャワー、更衣室、トイレ、休憩&ログ付け用のテラス、器材洗い場、ダイビングボートのすべてが提供されている。ここでは、ボートダイビングがメインになり、平均水深が深い場所や潮の流れが強いこともあるので、ある程度のダイビングスキルをスクール等で身につけてからチャレンジして欲しい。

シリンダー(タンク)は国内ではあまり見ないスチールの12リットルがメインだ。通常使用する10リットルよりも空気量が多くなるので水中でのエア切れリスクが下がり安全度は増すが、長さや重さが大きくなる分、器材をセッティングする際の位置やウェイト量の調整を自分で判断できるようになっていたい。初めて利用する際は、インストラクターやガイドに必ずアドバイスをもらおう。

波左間海中公園のダイビングサービス。タンクのサイズが大きい。

コブダイが見られるダイビングスポットは、サービスの真横からボートに乗って3分程度で到着する。伊豆や神奈川のボートダイビング同様、乗船前に器材を着て出発するので、沖縄や海外でのダイビングがメインの方は不慣れなスタイルだ。時間に余裕を持って、早めに準備を始めよう。

波左間海中公園のダイビングボート。ヘリが低いのでエントリーが楽。

日帰りダイビング、日帰り温泉、日帰りスキー、デイキャンプ…「日帰り」というレジャーの楽しみ方は、国土の狭い日本には欠かせない。実は、日本の首都・東京には日帰りで訪れることができるダイビングスポットがたくさんある。ダイビングインストラクターとして活動していた時にはお客様へ「先進国の首都で、こんなにダイビングスポットが身近な国なんて中々ないですよ」とよく言っていたことを思い出す。東京、いや関東に住んでいる方は、ぜひ千葉の海でもダイビングを楽しんでみてほしい。

今回は知人の紹介で千葉県流山市のダイビングショップ「スクープ」さんに陸から海までガイドをお願いした。他にも、千葉市内のダイビングショップやダイビングスクールでは一般ダイバーさんのファンダイビングツアーや現地集合でのファンダイビングガイドを受け付けているので、近場の海でローカルダイビングを楽しみたい方は、ぜひ一度問い合わせをしてみてほしい。

館山・波左間の海は青かった。そして安全停止はバーがあって楽だった。

 

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PROFILE
福岡県出身。18歳からスキューバダイビングを始め、翌年にプロ資格を取得。
22歳でPADIマスターインストラクターとなり、宮古島・沖縄本島・東京都内と拠点を変えつつダイビングスクールで15年間働いた後に観光業専門の広告代理店として独立。

現在はWebサイトのディレクション、Web広告運用、SNSの運用サポートなどデジタルマーケティングを主な生業としている。

オーシャナでは、取材時の写真撮影を担当。
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