特集記事の裏側!空から海から、冬の奄美大島でザトウクジラの撮影

2022年2月12日から17日の6日間に渡り、奄美大島のザトウクジラを撮影してきた。大雪が降り雪の積もった寒い東京を出発し、無事に奄美空港へ向かう飛行機が飛び立った際にはひと安心したのも束の間、雨の多い奄美大島の冬は肌寒く、東京から着てきたダウンジャケットそのままで港町の古仁屋へ向かった。

今回、オーシャナのスペシャルコンテンツであるBlue Magの制作を託された私が撮影を共にするのは、フリーダイバーで写真家の篠宮龍三氏。ハワイ島や小笠原諸島への素潜りトリップなど、イルカやクジラを撮影する旅仲間でもある。

Sonyミラーレス一眼の最高機種であるa1を携えた篠宮龍三

SONYミラーレス一眼の最高機種であるa1を携えた篠宮龍三

連戦連勝!雨の日も波が高い日もザトウクジラの撮影に成功

ホエールウォッチングで船上からの撮影、晴れた日のドローン空撮、スイムでの水中撮影と、開始から5日間全てのシチュエーションで成功。連戦連勝百戦錬磨に撮影チームも船長も気分が良い毎日だった。

今回の旅程では、偶然にも最終日が満月。すなわちクジラたちの動きが活発になる日だ。実際に、満月前には奄美大島からさらに南の加計呂麻島と与路島の沖合で、4頭のザトウクジラが入り乱れるヒートランの撮影にも成功した。奄美大島の大自然生態系を間近で感じ、我々のハートもまさにヒートランだ。

ドローンで空から撮影したザトウクジラ

ドローンで空から撮影したザトウクジラ

最終日、天気は雨。

この日はホエールウォッチングのゲストも同乗するので、午前と午後の半日にわけてザトウクジラを探すことになった。古仁屋から出港して約30分間は内湾や海峡の浅海を走るのだが、この間にクジラと出会うことはあまりない。

つまり、行き帰りの往復1時間はチャンスが限りなくゼロに近いのだ。

午前と午後でゲストが入れ替わる場合、約2時間はザトウクジラのサーチができない。しかし、そのような日でも確実に、午前も午後もペアや親子のクジラを発見してきた。まだ奄美大島での経験は少ないが、サービス精神が高く視力の良い船長が、クジラのブローを見つけてアプローチする腕は確かだった。

「最終日は、親子のザトウクジラを撮りましょう」。

一致団結の目標をたて、意気揚々と準備をしたが、この日に限って9:00に集合しているはずのゲストが到着しない。道に迷ったのか…結局、出港できたのは10:00前で、午前中はザトウクジラを探す時間が少なくなってしまった。時間が迫る中、なんとか1頭の大人クジラを発見するも、すぐに水中へ潜ってしまい撮影はできなかった。

ホエールウォッチングに最適なカタマラン船

ホエールウォッチングに最適なカタマラン船の近くをクジラが通り過ぎる

ついに失敗か。発見できてもアプローチができないクジラたち

朝から少しピリピリしたムードの中、午後の出港。最後の3時間が始まる。

雨が降り続け、ドローンを飛ばすことはできない。撮影は水中に絞られる。奄美大島と瀬戸内町の海峡の出口に到着すると、午前中に1頭だけ発見した海域でザトウクジラの潮吹きがところどころに見えた。やはり満月の日はクジラたちが集結するのだろうか。船の周辺には4群8頭ほどのブローが確認できている。

しかし、それぞれの群れが散らばっており、贅沢な悩みだが、どのクジラにアプローチするかの判断が難しい。ホエールウォッチングに参加しているゲストには、大きなジャンプをするブリーチングや尾ヒレを上下させ水面に叩きつけるテールスラップなどの派手なアクションを見せてあげたい。撮影チームには、泳がずにリラックスして止まっているクジラにアプローチさせたい。

トンガや沖縄でのホエールウォッチングの経験を惜しみなく船長に伝える

トンガや沖縄でのホエールウォッチングの経験を惜しみなく船長に伝える

いつも穏やかな船長が、雨音や船のエンジン音でクルーへの指示が伝わらずに焦りが見える。

撮影チームは少しでも確率をあげるために、強く吹く冷たい北風の中で船の水しぶきをあびながら、少人数でのアプローチを待機する。

撮影した画像をチェックするフリーダイバー篠宮龍三

撮影した画像をチェックするフリーダイバー篠宮龍三

私は4K動画の撮影担当として準備をしていたが、まだ写真が1枚も撮れていないので入水せず、ウェットスーツ姿のままで船上のサーチをしていた。時に、写真の撮影と動画の撮影ではお互いのポジションが干渉してしまう。

朝の出港が遅れたときから「最終日のドラマが始まりましたね」と何かが起こることを想像していた。だが、それは良い結果を安易に期待した妄想だ。

正直、私は撮れずに終わってもいいと思っていた。

相手は地球最大級の大自然の生物。海の中では人間など見向きもしないほど偉大な存在だ。海に行けばいつも見られるもの、いつでも会えるものと思われるよりも、失敗することがある。ダメな日もあるということが伝えられればいい。

ホエールウォッチング前の和やかな古仁屋港

ホエールウォッチング前の和やかな古仁屋港

今日は水に入らずに終わるかもしれないな、と思った時だった。それまでずっと泳いでいただけのザトウクジラの1頭が、こちらを手招きするようにヒレを大きく振り回してペックスラップを始めた。激しい水しぶきに船上の全員が興奮する。

帰港のリミットまでは残り30分。遠くで吹きあがる別のザトウクジラのブローには目を向けず、近くにいるはずのクジラが海面に上がってくるのを待つ。最後の最後に意地を見せた船長と、素潜り写真家の篠宮龍三。

私も最後の1回は入水し、冬の奄美大島物語のクライマックスとなる3頭のクジラを動画撮影することに成功した。

スペシャルコンテンツにふさわしい最高品質の撮影機材

欧州、日本で3冠を達成したSONYのa1で撮るスペシャルコンテンツをお届けする

素潜りで撮影する海の写真。日本各地の旅をBlue Magでお届け

今回撮影した奄美大島のザトウクジラは、オーシャナのスペシャルコンテンツであるBlue Magで、フリーダイバー篠宮龍三の選ぶ写真ラインナップに入る予定だ。

一息で一枚の写真を切り取る素潜り写真家の特集を、楽しみにしてほしい。

撮影協力:apnea works/沖縄フリーダイビングスクール 篠宮龍三

アジア人最深記録である水深115mへのフリーダイビングを成功させたフリーダイバー。現在は沖縄県宜野湾市を拠点としてフリーダイビングスクールを開催している。後進育成のためAIDA(International Association for the Development of Apnea)インストラクターのトレーナーとしても活動しつつ、沖縄県北部や与那国島、小笠原諸島など秘境の海へのフリーダイビングツアーを開催している。

apnea works 篠宮龍三の沖縄フリーダイビングスクール 

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PROFILE
福岡県出身。18歳からスキューバダイビングを始め、翌年にプロ資格を取得。
22歳でPADIマスターインストラクターとなり、宮古島・沖縄本島・東京都内と拠点を変えつつダイビングスクールで15年間働いた後に観光業専門の広告代理店として独立。

現在はWebサイトのディレクション、Web広告運用、SNSの運用サポートなどデジタルマーケティングを主な生業としている。

オーシャナでは、取材時の写真撮影を担当。
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