沖縄県恩納村でダイビング事業者向け「リーフチェック研修会」開催 -世界一サンゴにやさしい村の実現に向けて-
沖縄県恩納村ダイビング協会が、協会正会員であるダイビング事業者向けに、サンゴ礁のモニタリング調査・リーフチェックを実施していくための「チームリーダー・チーム科学者養成講座」を開催した。この取り組みは沖縄県サンゴ礁保全再生地域モデル事業の一環として、恩納村役場と恩納村サンゴ礁保全再生活動地域協議会からもバックアップを受けて行われた。
恩納村にとってサンゴ礁は観光資源や豊かな漁場としてなくてはならない存在。2018年には「サンゴの村宣言」をし、持続可能な村づくりのために、村民や漁業関係者、ダイビング事業者のみならず研究機関や村外企業なども巻き込み、サンゴ礁保全の取り組みを推進。内閣府からはSDGsモデル都市として認定もされている。
オーシャナでは、今回3日間かけて行われたリーフチェック研修会の様子を取材させていただいた。
リーフチェックとは?
リーフチェックとは1996年に海洋生態学者らによって考案された、世界共通の市民参加型サンゴ礁モニタリング調査方法。アメリカを拠点に、世界95箇所以上の国と地域で12,000回以上の調査が実施されており、国内では67箇所のダイビングポイントなどで実施されている。この取り組みはサンゴ礁保全のため、統一された方法でデータの蓄積を行っていくことと、ダイバーが調査に参加することが目的。
一般ダイバーも参加できるシンプルな手法と役割分担がされており、参加によるサンゴ礁保全に向けた意識醸成や普及啓発も大きな目的となっている。オーシャナ読者のダイバーでもリーフチェックのボランティアを耳にしたり、参加したりしたことのある方も少なくないのでは。
このリーフチェックを行うためには、現場を統括する「チームリーダー」と、調査の精度を担保するために海洋科学者から認定を受けた「チーム科学者」が必要となっている。そのため、恩納村ダイビング協会は、村内のダイビング事業者の中からチームリーダーとチーム科学者を育成し、今後の自分たちのフィールドを自分たちの手でモニタリングしていく体制を整える目的で、この研修会を開催した。
リーフチェック研修会の様子
本来、4月の実施を予定していた研修会だが、新型コロナウイルスの影響により延期を余儀なくされた結果、7月14〜16日の3日間に渡り実施された。コロナ禍とはいえ、7月の繁忙期にも関わらず、村内の事業者からは各社代表の方を中心に9名が参加した。
初日は恩納村ダイビング協会・内原靖夫会長、恩納村役場企画課・喜久山隆課長からの挨拶に始まり、恩納村サンゴ礁保全再生地域活動協議会・山城正已会長から恩納村のサンゴ礁再生の取り組みについて詳しく説明がされた。
リーフチェックについては、初日と2日目の午前中、公益財団法人日本自然保護協会・リーフチェックコーディネーターの安部真理子さんを講師に迎え、サンゴ礁の生態系やリーフチェックに関する知識の座学が実施された。
専門的な内容も多かったせいか、「難しい」と不安の声もちらほら聞こえてきたが、初日午後のシュノーケリングによるサンゴ礁モニタリングや、2日目のリーフチェック実技テストなどをしていく中で、座学で学んだことがリンクしていき、楽しみながら研修を受ける参加者の様子が印象的だった。
最終日のリーフチェック本番終了後には、データの入力と学科テストを実施。無事9名全員が認定された。
参加者からは認定の喜びの声とともに、「普段ガイドするときには気にしていなかった生物や、意外とシャコガイが多いなど、新しい発見があった」といった感想や、内原会長からは「改めて自分たちが使っている海を見直すことができた。今回の知識を自分たちだけでなく、これからダイビング事業を続けていく若い方にも、自分たちのフィールドがどれだけ素晴らしい海なのかを伝えていくためにも、リーフチェックを継続して実施していければと思っている」といった想いをお話しいただいた。
「世界一サンゴにやさしい村」実現に向けて
継続的な取り組みに
恩納村ではサンゴ礁のモニタリングや保全活動の促進によるサンゴ礁保全再生意識の向上、主体的な保全活動の促進のために、年に1回のペースで今回チームリーダー、チーム科学者となったダイビング事業者を中心にリーフチェックを実施していく予定だ。世界一サンゴにやさしい村を目指して「サンゴの村宣言」をし、様々な施策に取り組む恩納村と恩納村ダイビング協会の動向に、今後も注目していきたい。