ドラえもんもビックリ!? 人工エラTRITONはダイビングで使えるの?

どこでもドアにタケコプター、とくればドラえもんのひみつ道具ですよね。

ドラえもんが元いた世界といえば2112年と今から100年近く先の話ですが、日々ひみつ道具に近いものが開発されています。

そして今回は、我々ダイバーにも深く関係するものが開発されました!

その名もTRITON

TRITON

出典:TRITON

よく見るとマウスピースが付いていますね。

これは何かと言うと…

パパパ パッパ パーーン(あの音)

『エラ・チューブ』

どんな道具かというと、鼻の穴に入れることで、水中で呼吸を可能にするひみつ道具です。

冒頭でご紹介したTRITONも、海水中の溶存酸素を取り出し呼吸することが出来るのだとか。

まさしくエラ・チューブですね!

ちなみにやっぱりドラえもんの声は大山のぶよさんの声がしっくりきます。(笑)

さて、このTRITONの開発でダイバーは重たいタンクから開放されるのでしょうか?

答えは……

『今すぐにはNO』

です。

大きく分けて3つの問題が存在していると思います。

酸素中毒の問題

TRITONの使用可能水深は15フィート(4.572m)までとされています。

なぜでしょうか?

もちろん搭載されている部品等の問題もあるのでしょうが、仮にTRITONが進化していった時に見逃せないのが酸素中毒です。

レジャーダイバーの方々にはあまり馴染みが無いかもしれませんが、人間は酸素によって中毒を引き起こすことがあります。

細かい説明は割愛しますが、通常の空気だと水深57m付近から影響が出ると言われています。
そう。やはりレジャーダイバーには無縁の水深です。

しかし、36%のナイトロックスで39m、純酸素の場合は4mとなります。

4mといえばTRITONの使用限界水深にも近い値ですね。

やはり現在のTRITONは海水中から100%に近い酸素を取り出しているのかもしれません。

ナイトロックス

この問題を解決するには、酸素と同時に不活性ガス、具体的には窒素やヘリウムなどを取り込む必要があります。

そこで、ここでは窒素を生み出す2つのアイデアを出してみたいと思います。

海水中から取り出す

Newton別冊・地球大解剖に掲載されている海水の組成によると、現実的なのは、やはり窒素を取り出す事の様です。

海水中の窒素は亜硝酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンとして存在していると考えられます。

実験室的には亜硝酸アンモニウムを加熱すれば窒素と水が生成するので一件落着なのですが、あくまで亜硝酸アンモニウム単体を使用する反応なので…

睡魔を誘ってしまいましたでしょうか?(笑)

要するに、海水から窒素を取り出す新技術が開発されれば解決する、というお話です。

おしっこから取り出す

以前のアンケートでダイバーの過半数が水中でおしっこをする、という結果が出ました。

おしっこといえばアンモニア!
…は、実は入っていません。

しかし、アンモニアが変化した尿素という物質が入っています。

この尿素を加熱することでアンモニアを再生成し、そのアンモニアからゴニョゴニョ…

おしっこが出なければアウトなので、実現性は低そうですね(笑)

ウエイトの問題

なんとかして窒素は作り出したとして、あの重たいタンクから解放される!ことによる弊害がウエイトです。

人間の身体はほぼ中性浮力。

そして、ウエットスーツやドライスーツによって大きなプラス浮力となってしまっています。

ここで、あの重たいタンクには空気源としてだけでなく、このプラス浮力を相殺する役割があったことに気づきます。

つまり、空気源が小さくなればなるほど重たいウエイトを背負わなくてはならないわけですね。

これを解決するには浮力が0に近いスーツの開発が必要となりそうですね。

既にシェルドライがこれに近いとは思いますが、スーツスクイズを防ぐためのスーツ内給気で浮力がついてしまいます。

また、どうせ潜るなら水に濡れるというのも楽しみの一つだと思うので、ここはぜひ浮力の無いウエットスーツを…

シェルドライスーツ

BCに使用する空気源の問題

タンクの空気、そういえば呼吸だけでなくBCへの給気にも使用していましたね。

酸素や窒素が生み出せるのであればそれを使用すれば良いのですが、一石三鳥のアイデアをひとつ。

ポニーボトルの使用、です。

いくら安全だと言われても、機械仕掛けの呼吸源には故障などの不安が付きまといます。

その不安へのバックアップとして
さらにウエイト不足の助けとして
そしてBCへの空気源として

ポニーボトルを使用することで一気に解消しそうですね!

後半2つの問題はなんとかなりそうですが、まずは窒素をどうやって発生させるかがやはり最も大きな問題です。

ひとまず現実的な用途として、リブリーザーの酸素源として利用することで器材のコンパクト化が期待出来るのではないかと思っています。

そして、TRITONは新たなプロジェクトを始動させる様なので、更なる新技術に期待したいものです。

また、TRITONの進化も喜ばしいことですが、ぜひ日本からも革新的な技術が生まれてきて欲しいものですね。

(ライター/細谷 拓)

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