そのレギュレーターの吸いづらさ、本当に故障? 基本構造を知ろう!
「水中で上を向くと、やや呼吸しにくいように感じます。」
「上を向いたときに呼吸抵抗が少し大きくなるので調整して欲しいです。」
上(水面)に顔を向けて呼吸したときの吸い心地について、調整のリクエストをいただくことがあります。
ですが、残念ながら調整でなんとかすることはできません。
物理的な自然現象なのです。
基本構造を理解しよう!
レギュレーターの基本構造を知っていますか?
もしイメージできなければ、こちらで空気が出る仕組みをご参照ください。
フェイスカバーを外すと、このようにダイアフラム(ゴムの膜)があります。
このダイアフラムの下の空間は、空気で満たされています。
この中の空気をダイバーが吸うと、このようにダイアフラムが内側に引き寄せられて、レバーを倒すことで、空気がセカンドステージのケース内に供給されます。
「吸いやすい」と表現される感覚は、“吸ったときにいかに早く口内に空気が到達するか“ または、”ぐっと吸わなくても軽い吸い口で空気が入ってくる“のどちらかです。
「上を向くと吸いづらい」というのはなぜ?
水中で吐いた息は気泡となり、水面に向って上昇していきますよね。
みなさまご存知の通り、空気は上に上がろうとする性質を持っています。
レギュレーターのセカンドステージケース内の空気も同様です。
正面を向いているときは、ケース内の空気は、ケース上部方向に力が働きますが、
上を見上げると、このようにダイアフラムの方向に空気の力が働きます。
呼吸をするときは、ケース内の空気を吸ってダイアフラムを引き寄せなければならない。
正面を向いた状態と、上を向いた状態で吸うのはどちらが楽に吸えるでしょうか?
そうなんです!
正面や通常ダイバーがとる姿勢(少し下向き加減)で呼吸する方が楽だといえますね。
上を見上げると、ダイアフラムを引き寄せるのと反対方向に空気の力がかかっているため、通常よりも多い呼気を要します。
「上(水面)を向くと吸いづらい」というのは、理論上このような理由からなるのです。
微々たる差なので、えっ? そうかな?? と思われるかもしれませんが、繊細な方はその微々たる差を感じ取られているのだと思います。
ダイアフラムの中心が鉄のプレートでできている機種はその重みで下がるため、上を向いても吸いやすいといえます。
ですが逆に下を向いたときは、吸い上げることになるため吸いにくくなるともいえますね。
今回何をお伝えしたかったのかというと
「それは故障や不具合ではないですよ。安心して使ってくださいね」
ということです。
少しでも器材のことを知っていただいて、不安やストレスをなくし、ストレスフリーで潜っていただけると幸いです。
これからシーズンに入り、潜る方が増えてくると思います。
安全にダイビングを楽しんでください!