空気の流量は変わらない!? 誤解の多いセカンドステージの吸い心地

吸い心地の「軽い・重い」を決めるのは空気量ではない!?

レギュレーターの“セカンドステージについているノブの機能”について誤認されている方が非常に多いので、今日はそれについて詳しくお話したいと思います。

レギュレーターの吸い心地を言葉でどう表現されますか?

一般に「軽い」「重い、渋い」と表現されることが多いと思いますが、どんなイメージを持たれているでしょうか?

「軽くする=空気の出る量を増やす」、「重く(渋く)する=空気の出る量を減らす」ではないでしょうか。

ですが実際には、セカンドステージにノブがついているタイプのレギュレーターは、ユーザー自身で「呼吸抵抗」を大きくしたり、小さくしたりすることができますが、「エアーの流量」を増やしたり減らしたりすることはできません。

ごく一部の機種に、水道の蛇口と同じ原理でニードルをねじこんで空気の量を制限したり、緩めて量を増やすことができるものがありますが、大半のレギュレーターのノブは、“エアーの流量を変える”ことはできないのです。

セカンドステージを解剖
吸い心地を左右するのは“呼吸抵抗”

どういうことか、画像と共に詳しくご説明をします。
まずは簡単にレギュレーターのセカンドステージの構造について。

吸った時、どのようにしてエアーが出てくるのかご存知でしょうか?

フェイスカバーをはずしたら、ダイアフラムという黒いゴムのシートがあり
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

ダイアフラムをのけると、その下にはレバーがあります。
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

これは講習用なのでマウスピースついていませんが、くわえて吸うと、ダイアフラムが引き寄せられてレバーを押し、レバーが下がります。
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

その際、ダイアフラムの下がどうなっているのか見てみましょう。  

レバーが下がる前は、LPシート(左の黒いゴム)とオリフィス(右の金属部品)の間には隙間がありません。
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

レバーが下がると、隙間ができているのがわかりますか?
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

この隙間がエアーの流入口となり、1stステージからホースを介して2ndステージに送られたエアーがケース内に入り込み、みなさんの口に入ってくるという仕組みです。

吐くとダイアフラムが押されてレバーが元の位置に戻、LPシートとオリフィスが接地することでエアーが遮断され、また吸うと隙間ができてエアーが入ってきます。
呼吸時はこの繰り返しです。

さて、問題のノブは左端のネジ部品。
これを締めれば呼吸抵抗が大きくなり(重く)、緩めれば小さく(軽く)なります。

ノブを締めこむ(時計回り)とスプリングがぎゅっと縮みます。
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

緩める(反時計回り)とスプリングが伸びます。
レギュレーターセカンドステージの構造(提供:高尾珠実)

かけられているバネ力が小さければ、軽く吸ってレバーが倒れますが、大きい力をかけられていれば、強めに吸うわないといけないという事になります。

そうやってスプリングの伸縮調整をすることで「抵抗」の大小を作るわけです。
それで吸い心地が決まります。

あくまで「呼吸抵抗」です。
「空気の流量」は変わりません。

ですが、一部メーカーの呼吸抵抗調節ノブは「流量調節ノブ」と名付けられていたり、一部メーカーの取扱説明書には、「マウスピースを口にくわえた状態で、反時計回りにノブを回すとエアーの流量が増え、時計回り(手前側)に回すとエアーの流量が減ります」と、事実と異なることが記述されていることもあり、取説を読まない、読んでもわからない
ことと相成り、このようなイメージが浸透してしまっているのかと推測されます。

空気消費を減らすために呼吸抵抗を大きくしても意味がない

これに関連してもう1点、誤解を解いておきたいことが。

「エアー消費が激しいので、エアーの量を絞りたい」というご要望があります。

「自分がたくさん吸ってしまうから、出るエアーの量を絞り気味にすればエアーが減りにくくなる」

一般的にそう認識されがちですが、それは解決にはならないのではないでしょうか。

逆に「呼吸抵抗を大きくすれば横隔膜の運動に負荷がかかり、カロリー消費が増え、身体が酸素を欲する、結果的にエアー消費量が増える」と言えると思います。

じゃあどうすればよいのか?

ご自身が最も自然に呼吸できていると感じるところに調節するのが最善といえます。 

ユーザー自身がノブで調節するのも一つですが、オーバーホールの際に、ご相談していただくとよいと思います。

ぜひ、器材の機能を理解し、適切に使ってください。
きっと今よりも快適なダイビングができると思いますよ。

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PROFILE
大学在学中、グアムで体験ダイビングをしたのを機にライセンスを取り、卒業と同時にダイビングの会社に就職。
その後、数店舗の都市型ダイビングショップで、スクールや器材販売、ツアーの企画・引率をし、2000年にインストラクターに。

数メーカーのメンテナンス講習を受けた後、ダイビング器材オーバーホール専門店「アイバディ」に10年間勤務。
現在はフリーインストラクターとして活動する傍ら、ダイビング器材・オーバーホールについて執筆活動中。

「器材の中身は見えない。だから伝えねばならない」がモットー。

ダイビング器材の中身は見えない。だから伝えねばならない~オーバーホールの現場から~ | オーシャナ
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