ocean+αヘッドラインHEADLINE

最高傑作“HyFlex”シリーズ誕生までの軌跡〜TUSAフィン開発者に聞く、樹脂フィンの挑戦と進化〜閲覧無制限

1

タバタの樹脂フィンを進化させて生まれた、ハイブリットフィン「TUSA HyFlexシリーズ」。

ラインナップされたVesnaとSWITCHには、こだわり抜いた素材が採用されているうえ、画期的な“分解システム”など、さまざまな工夫が施されています。発売以来、ダイバーの支持を受けているフィンです。

このフィンの開発者である藤本貴史さんに、このシリーズに込めた開発への思いからフィンの選び方まで、お話をお聞きしました。
※前半と後半の2回に分けてお届けしていきます。

■聞き手:寺山英樹(Office Divingman)
■写真:菊地聡美

ゴムフィンが主流の日本マーケットに
樹脂フィンの良さを伝えたい

2

寺山

20年以上、ダイビング業界を見てきましたが、日本のダイバーってなんとなく”ゴムフィンが好き”という、一つの神話みたいなものがあるじゃないですか。当然、タバタさんもその点は理解しているはず。

しかし、そこをあえて樹脂フィンに切り込んでいますが、なぜでしょうか?

藤本

TUSAというブランドで一番多く売れたフィンは、LIBERATOR X(リブレーターテン)という樹脂フィンです。

結構前の話ですが、樹脂フィンが市場を席巻(せっけん)した時期があったらしいんですね。私が入社したときよりも前の話です。

寺山

それだけ聞くと、成功体験が忘れられないとも聞こえてしまいますが(笑)、樹脂フィンにこだわりがあるということでしょうか?

藤本

いえいえ、しがみついているとかではなく(笑)、弊社は日本だけでなくワールドワイドに展開しているのですが、海外ではゴムフィンよりも樹脂フィンのほうが需要があります。ゴムフィンにはゴムフィンの良さがありますし、樹脂フィンには樹脂フィンの良さがあるんです。

樹脂にはさまざまな種類があります。その中からフィンに適した特性の材料を選定し、その特性を最大限に活かすよう弊社独自の技術でより良いフィンをつくる。そして、その良さを伝えたいということを常に考えながら開発しています。

素材としてはゴムに負ける部分がひとつもない
ハイブリットフィンのメリットと課題

3

藤本

一応このSWITCHも、プラスチックと言えばプラスチックなんですが、正確には少し異なります。やはり日本人は、プラスチックフィンというと、昔の下敷きみたいな板を蹴っ飛ばしているようなイメージをしてしまうんですよね。

寺山

確かに。正確には何フィンなんでしょうか?

藤本

SWITCHは「ウレタンブレードフィン」と呼んでいます。
また、SOLLAはプラスチックではあるものの日本人向けに軟らかくなっています。
プラスチックの中でも軟質のものと硬質のものがあって、SOLLAは軟質をメインで設計しているんですね。
どうしても強度が必要で補強しなければいけない部分だけに硬質のもので芯を入れ、自然にたわむゴムフィンに近い蹴り心地に仕上がっています。

そこで昔のプラスチックと区別するためにTUSAではエラストマー(軟質樹脂)のフィンを「ハイブリットフィン」と呼んでいたりもします。とにかくフィンに適した材料であれば積極的に採用してます。

寺山

単純にプラスチックではないけど、プラスチックと言わないと伝わらない部分もあるので、言葉のチョイスと発信の仕方も大事ですね。

藤本

開発者としては、シンプルに、ターゲットに求められる性能やフィンのコンセプトなど、目的に合った材料を選定してから、それを設計の中で活かすという考え方でやっています。

寺山

ゴムフィンに比べて、ハイブリットフィンのシリーズの良さはなんでしょうか?

藤本

ゴムフィンの場合、デザイン性を求めると、色を2色にするにしてもどうしてもマーブルっぽくなるなど、はっきりと印象的な綺麗さを出すことが難しい。その点、ハイブリットフィンはデザイン性にこだわれます。

また、ゴムというのは日差しなどによる耐候性が弱く、その辺でも樹脂の方が勝っています。

タバタではフィンを屋外に吊るして耐候性を確認している

タバタではフィンを屋外に吊るして耐候性を確認している

藤本

そして、ゴムで一番のメリットと言われているのは“反発弾性”ですが、実はゴムに比べて、ウレタンの方が1.2倍~1.3倍くらい高いんです。

だから、ウレタン素材に関してはいえば、材料特性という点では、フィンに採用してゴムに負ける部分というのが今のところないんですよね。

寺山

では、どうして他社がウレタンフィンを作らないかというと、コストの問題でしょうか?

藤本

その通りです。材料が高いというのもありますが、成形するときの粘度(ドロドロさ)のコントロールが難しいので、他の樹脂と比べて扱いにくいんです。

温度が少しでも高いとサラサラの状態になってしまい、パンク(色の境目のはみ出し)や、バリ(端部のはみ出し)が発生するし、温度が少しでも低いとドロドロの状態になって、ボイド(気泡)や、ショートショット(型全体に行きわたらない)といった問題が起きてしまう。

寺山

そこをあえてウレタンを採用する理由は、やはり素材の良さというところでしょうか?

藤本

そうですね。材料も高いし、成形も難しい。だけどフィンに適した抜群の性能(反発弾性、耐候性、意匠性)を持った素材というのは間違いないので。
あと、我々はSF-5(PLATINAplus)というフィンで培ったウレタンの成形技術を持っていたので採用できたんです。

寺山

そんなウレタン素材を活かしたフィンが、SWITCHということですね。

TUSA最高傑作“HyFlex”シリーズ
SWITCH&Vesna

寺山

TUSAのフィンには種類がいくつもあって、選ぶ際に迷ってしまうのですが、まず、今回のHyFlexシリーズの位置づけと特徴を教えてください。

藤本

まず、SOLLAやKAILに代表されるような比較的低価格帯のシンプルなフィンに対して、SWITCHとVesnaのTUSA HyFlexシリーズは、少しグレードの高い、高価格帯のフィンという位置づけになります。

そして、このTUSA HyFlexのわかりやすい最大の特徴は、ブレードとフットポケットが切り離せる分解システムです(※詳細は後述)。

あとこだわったのがフットポケットのフィット性。足(ブーツ)に当たる部分をかなり丸めるなど、足の形状を研究して作り直しています。脱ぎ履きがしやすいバンジーストラップも5段階のサイズ調整ができるというのは他社製品には無い特徴です。フットポケットとバンジーストラップでかなり快適な足回りに仕上がっているので、ぜひ試していただきたいですね。

寺山

VesnaとSWITCHの違いは何でしょうか?

藤本

Vesnaは海外市場をメインに、SWITCHは国内市場をメインに開発したフィンで、この2つのフィンのコンセプトは全く異なります。

まずVesnaは、根元から積極的にたわむ「ピボットフィン」です。
キックしたときに最大の推進が得られるブレード角度を広い面積でキープしようというコンセプトで、エラストマー(軟質樹脂)ブレードです。
一方SWITCHは、ブレード面をずらした「オフセットフィン」です。
キックが楽になるようブレード根元の面積を削ったりホールを大きく設けています。そしてウレタンの反発弾性を最大限に活かすようにキックの切り返しでスナップ感が感じられるように設計しています。オフセット形状で低抵抗、ウレタン材料で高推進というコンセプトです。

ギミックの利いた構造と蹴ったときのグンッと進む感触は、海外の方が好まれる傾向にありますし、ゴムフィンが多く使われている日本のマーケットにおいては自然な扱い方ができるSWITCHが好まれると思います。ただし当然のことながらフィンの好みは人それぞれなので、国内でもVesnaの需要は十分にあると思っています。

5

海外と日本でも異なる!?
自分に合ったフィンの選び方とは

寺山

フィン選びで素材までこだわる方は少ないと思いますが、そうなると、素材を活かした機能や見た目が大きな判断材料になると思いますが、その点、いかがでしょうか?

藤本

そういうのに飛びつくのはやはり海外の方。
日本は伝統に重きを置くというか、昔からあるものに延長されたものといった方を好まれる感じがありますね。

寺山

ゴムフィン神話が続くのもそういう背景もあるのかもしれませんね。

ただ、日本人でも、プロや潜り込んだダイバーになるとこの辺の違いに敏感ではないのでしょうか?

藤本

そうですね。ただ、日本でいうとほぼSWITCHが好みなのかなという感触はありますね。
普段ゴムフィンを使っている人が履き比べると、今まで使っていたフィンに対してVesnaは蹴り心地に多少違和感のようなものを感じるんです。
それが海外の方からすると「今までと違ってグンと進むぞ」となります。その違和感を楽しむか、嫌がるのかという違いは出てくるのかなと思いますね。

寺山

エラストマーとウレタンの違いも蹴り心地に出て、ウレタンのほうがゴムフィンに近いという感じなんでしょうかね。実はVesnaに合った蹴り方をすれば、今まで以上に合理的に推進力を得られるかもしれませんが、あえてそこまでしないというか。

藤本

そうかもしれませんね。ウレタンってゴムよりも反発弾性がいいので、ダウンキック、アップキックというタイミングだけじゃなく、その切り返し時もスナップを効かせて推進力を生もうというのがSWITCHで、ウレタン材料による推進力。一方Vesnaはどちらかと言うと構造に頼った推進力。

だから、SWITCHを蹴るのとVesnaを蹴るのとだと、体感の進み方が全然違うんですね。

Vesnaでいうとグンッ、グンッという加速感があって、SWITCHに関しては、スーッと常に一定のスムーズな加速感を味わえます。

6

寺山

両方使ったことがありますが、確かに、Vesnaだとここで力を入れるとグングン進むというポイントがあるし、SWITCHだと、泳ぎの延長でいける感じはありますね。

藤本

泳ぎやキックの上手い下手がカバーできるのがSWITCHです。どんな蹴り方をしても推進力を生んでくれます。Vesnaはダウンキックをうまく当てないと、強い推進力に変わらなかったりもするんですよね。

寺山

キックを最大化・最適化してくれるはずのフィンは、選択を間違えると、障害にすらなりえる。フィンによって、ダイビングの快適度は大きく変わる。

そういう意味では、ダイバーたちがそうした違いを体感できる機会がもっともっとあるといいですね。

※後半は、TUSA HyFlexシステムである”分解”という新しい形が生まれることになったきっかけをお届けします。

ページトップへ