「日本水中フォトコンテスト」連載(第2回)

日本最高峰の水中写真フォトコンを目指して。発起人・大村氏と久野氏に取材【日本水中フォトコンテスト連載】

本年新たにスタートした「日本水中フォトコンテスト」。アマチュアであれば誰でも応募ができ、撮影地、機材、テーマは自由。第一線で活躍する写真家6名が審査、そしてグランプリの賞金はなんと50万円!この豪華な水中フォトコンテストの開催に際して、前回は日本を代表する水中写真家である古見きゅう氏に、フォトコンテストをきっかけにダイビングガイドから水中写真家に転身した経緯や、水中写真家としてフォトコンテストに抱く想い、そして「日本水中フォトコンテスト」の応募者に対するアドバイスなどを取材した。

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今回は、「日本水中フォトコンテスト」の連載記事第二弾として、本フォトコンテストの発起人で実行委員長である株式会社フィッシュアイの代表・大村謙二氏と、共同発起人で実行副委員長の株式会社エーオーアイ・ジャパンの代表・久野義憲氏に本水中フォトコンテストにかける熱い想いを語っていただいた。

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「日本水中フォトコンテスト」開催の背景には、雑誌社主催のフォトコンテストの中止が

まずは、本フォトコンテスト開催の背景や、開催に踏み切った理由について伺っていこう。

開催に踏み切った一番のきっかけは、多くのフォト派ダイバーの方々の目標でもあった、ダイビング雑誌社主催の日本を代表する水中フォトコンテストが廃止・中止となってしまったことです。

かつては、いくつかのダイビング雑誌社がそれぞれ開催する水中フォトコンテストがあり、アマチュアのフォト派ダイバーにとって、これらフォトコンへの応募が、一大イベントとして水中撮影を楽しむモチベーションにもなっていました。しかし、時代とともに、ダイビング雑誌社の減少と比例して水中フォトコンテストの数も減っていき、ついに昨年、最古参の雑誌社が主催する水中フォトコンテストも無くなってしまい、残念ながら雑誌社主催の水中フォトコンテストがゼロになってしまったんです。

雑誌社主催のフォトコンテストが無くなったことに加え、コロナウイルスの影響によるダイビング自粛などもあり、ダイビング業界全体が萎縮・収縮してしまうことは、なんとか避けたいという思いがありましたね。だから、業界全体の雰囲気を盛り上げていくような企画を何かやりたい!という意識が強くありました。

そういった背景があり、久野さんと「せっかくなら日本を代表するような水中フォトコンを立ち上げよう!」と意気投合した後、元月刊ダイバー編集の渡井さん、元マリンダイビング編集の鴫谷さんに声がけして実行委員会を立ち上げ、「日本水中フォトコンテスト」と名付けて、企画がスタートしました。

日本一の水中フォトコンテストを目指して

日本を代表するフォトコンテストにすべく、重視することや、目指す姿はどういったものなのだろうか。

一言で言うと、本フォトコンテストをアマチュアフォト派ダイバーにとっての“年に一度のチャレンジ目標”にしたいです。かつ、我々のような水中撮影機材の商社やメーカーが主催するからには、“日本最高レベル”の水中フォトコンテストにもしたいという思いが強いです。願わくは、アマチュアフォト派ダイバーがグランプリの受賞をきっかけに、世の中に名前と作品が広まり、プロの水中写真家となっていくこともイメージしています。実際に雑誌社主催の水中フォトコンテストでの受賞を機に、プロを志す方は多くいますからね。そういった意味でも、本水中フォトコンテストは、写真のクオリティーを重視していきたいと思っています。

さらに、本水中フォトコンテストの受賞作品集をきれいに印刷された冊子として制作し、全国配布していきたいと考えています。つい最近発表されたばかりですが、現在休刊しているダイビング雑誌「ダイバー」が来春に特別号として発売されることが決まりました!そして、そこに本フォトコンテストの受賞作品集を付録として同梱してもらい、全国の皆さんにお届けすることになりました。本企画スタート時より、ダイバー社に働きかけて、「なんとかこのフォトコンの発表時期に合わせて、まずは1冊復活させて欲しい!」と、実行委員会みんなで交渉を続けてきましたから、本当に良かったと思っています。
個人的には、こうした第三者の評価や、自分の受賞作品が多くの方々に見てもらえるということが、素晴らしい作品作り、撮影活動のモチベーションになることと信じているからです。というのも、私が水中撮影にハマり始めた、学生時代。関東学生潜水連盟という関東の学生ダイバーを中心とした組織が主催する水中フォトコンテストがあり、挑戦してみたら金賞をいただくことができたんですね。そのとき「ヒトに認めてもらうことってこんなに嬉しいんだ!」と感じました。さらにその写真と名前が各社のダイビング雑誌に記事として紹介されたのがとても嬉しかった…。だからこそ、今回も多くの皆さんに見ていただく機会を提供し、あの素晴らしい感動を絶やさないよう継続していきたいと思っています。

“無くなったものを自分たちで甦らせる“という意味でも、雑誌はぜひ出したいですね。

そうですね。デジタル全盛期となった今、20〜30代といったネット世代の方々にとっては紙媒体の必要性が薄れてきているかもしれませんが、私たち40〜50代の世代にとってはある種のノスタルジーかもしれませんが、やっぱり雑誌・紙面は欲しいんですよ。サーフィンや釣り、ランニングなど、多くのファンがいるメジャーなスポーツや趣味には、紙媒体の雑誌がまだ残っています。それなのに、ダイビングに雑誌がないと寂しいと思うんです。

過去にはさまざまな雑誌があった。 左上から1969年から2021年まで出版していた『マリンダイビング』(株式会社水中造形センター) 1975年から2006年まで出版していた『ダイビングワールド』(株式会社マリン企画) 1980年から出版し、現在休刊中だが来春に特別号として発売予定の『DIVER』(ダイバー株式会社) 1987年から1989年まで出版していた『スキンダイバージャパン』(株式会社オーシャン・クリエイト) 1988年から2015年まで出版していた『マリンフォト』(株式会社水中造形センター)

過去にはさまざまな雑誌があった。
左上から
1969年から2021年まで出版していた『マリンダイビング』(株式会社水中造形センター)
1975年から2006年まで出版していた『ダイビングワールド』(株式会社マリン企画)
1980年から出版し、現在休刊中だが来春に特別号として発売予定の『DIVER』(ダイバー株式会社)
1987年から1989年まで出版していた『スキンダイバージャパン』(株式会社オーシャン・クリエイト)
1988年から2015年まで出版していた『マリンフォト』(株式会社水中造形センター)

日本水中フォトコンテストには、思いを込めた作品を応募してほしい

本フォトコンテストには、応募費用がかかるという特徴がある。ここにも日本一の水中フォトコンテストを目指す想いが込められているという。

全員に最低でも1枚1,000円の応募費用をいただくことにしました。本当ならば、無料応募で裾野を広げた方が、より多くの方が気軽に応募できたかもしれません。実は、「コンデジ部門」のような無料の応募部門もつくろうかという話もありましたが、やはり日本一の水中フォトコンテストを目指すからには、皆さまに思いを込めた作品を真剣に選んで応募いただきたい。ここは我々の本気度もぜひ汲み取っていただければと思います。

ちなみに、応募作品を審査するときには、審査員の方々に作品のタイトルは見せますが、応募者の名前は見せません。なので、応募点数はわからないようになっています。なぜなら、審査員の方々の中には、普段お付き合いのある友人、知人、自身が主催するセミナー受講者さんなどがいらっしゃったりするので、先入観が入らないようにするためです。もし複数枚の写真を応募する場合は、傾向が異なる各審査員に対して、メッセージ的に毛色の違う作品を何点か応募してみるのもいいかもしれませんね。

グランプリには賞金50万円。こだわりの賞について

グランプリと準グランプリには副賞として賞金が授与される。シンプルだが、豪華な内容だ。この理由について伺った。

当初は、我々撮影機材メーカーの製品であるライトやハウジング、もしくは商品券を副賞として出すことも検討していました。しかし、さまざまなメーカーの撮影機材を利用されるフォト派ダイバーの方々がいる中で、授与された副賞が好みと違ったりするなど、提供側と受賞側のニーズが一致しないことも少なくありません。あとは、日本一の水中フォトコンテストに育てるためにも、メーカー色が出過ぎることは避けるべき。そういった意見を踏まえて、「誰もがもらって一番嬉しいものは何だろう」と検討を重ね、「賞金」にすることにしました。

日本一の水中フォトコンテストにしていくために、ある程度のステータスを得られる受賞にしたい。そういった意味でもわかりやすいのが、賞金である気がします。

また、グランプリ、準グランプリ、優秀賞にはそれぞれトロフィーを授与します。このトロフィーにもこだわりがあって、デザインからすべて自作しようと思っています。私は、水中ライト「RGBlue」を販売する株式会社エーオーアイ・ジャパンと並んで、インテリア照明メーカー・株式会社アンビエンテックの事業も行っています。だから、これらのノウハウを活かして、「さすがRGBlueがつくったトロフィーだ」と言われるようなものをつくりますよ。

コレクションとして、飾れるようなトロフィーにしたいとも仰っていましたよね。

そうですね。今までに無い、良いものにしたいです。まだ、どのようなデザインになるかは非公開なのでお楽しみに!

また、優秀賞・入選・審査員賞には記念品が授与されます。この記念品は私の方で、オリジナリティあるコレクター意識が高いものにしたいと思っています。ここも当初は、1万円の賞金を授与する話もありました。しかし、「少額よりは、ここでしか手に入らない限定ものの方が嬉しいのではないか」という話し合いで、オリジナルの記念品を用意いたします。

そして、我々が本気で日本一の水中フォトコンテストにしていきたいからこそ、もしかしたらグランプリは該当作品無し、という可能性もあります。審査員である写真家の中村征夫さん、高砂淳二さんをはじめ、6名の写真家の方々が話し合って決まることになりますが、「これは間違いなくグランプリに相応しい」というものを選出したい、真剣勝負の場にしたい、と想いを持っています。

これは、決して、高飛車な思いからではなく、審査員が唸るほど素晴らしい作品をグランプリとして、殿堂入りさせていただきたいと思っているからこそなんです。

応募を迷っている方、応募しようとしている方々へメッセージ

迷っている方がいたら、とにかく応募してみてほしいです。応募費用はかかりますが、これは「お金を払ってでも応募したい」と思っていただけるように、我々が本水中フォトコンテストを来年、再来年も必ず継続し、本気で育てていきたいという気持ちの表れでもあります。応募をためらわず、ぜひ自信作で応募して、ドキドキする気持ちを味わってください。写真を仕事としていない方であれば、ダイビングガイドやインストラクター含め皆さま応募していただけるので、ぜひ、日頃撮影している写真を応募してほしいです!ご応募お待ちしています。

本フォトコンテストは、何よりフィジカル(オフライン)であることにこだわりを持っています。応募はオンラインですが、結果発表はオフラインで行い、最終的には紙媒体にします。実際、すべてをオンラインでやることも可能ですが、今の時期まさに、どこまでをオンラインで行い、どこからをオフラインでやるのかという調整が各所でされています。ダイビングや水中写真は、もともと海で自然を相手に、フィジカルで楽しむレジャーですから。だからこそ、本フォトコンテストでもフィジカルを大切にしたい、という想いがあるんですよね。
何はともあれ、まずは自分が良いと思うものをどんどん応募してほしいです!ダイビング業界一丸となって、本水中フォトコンテストを育てていきましょう!

日本水中写真コンテスト実行委員会が新たにスタートする水中フォトコンテスト。より多くの方々に水中撮影を楽しみながら、受賞を目指し作品作りに励んで欲しいという想いから、日本を代表するフォトコンテストを目指し、企画された。

  • ●応募期間:2022年11月1日〜2023年1月10日
  • ●発表:2023年4月8日
  • ●賞
    グランプリ 1名
    準グランプリ 1名
    優秀賞 5名
    入選 12名
    審査員賞 6名
  • ●副賞
    ・グランプリ:賞金50万円、賞状、トロフィー、記念品
    ・準グランプリ:賞金10万円、賞状、トロフィー、記念品
    ・優秀賞:賞状、トロフィー、記念品
    ・入選:賞状、記念品
    ・審査員賞:賞状、記念品
  • ●主催:日本水中写真コンテスト実行委員会
  • ●協賛:Fisheye、RGBlue、SEA&SEA、nauticam、AOI
  • ●後援:SNSI、TDI、NAUI、PADI、SSI、JP
  • ●協力:ocean+α、DIVER、Marine Diving Web

詳細や応募については以下をご覧ください。
▶︎日本水中フォトコンテスト公式HP

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PROFILE
0歳~22歳まで水泳に没頭し、日本選手権入賞や国際大会出場。新卒で電子部品メーカー(広報室)に入社。同時にダイビングも始める。次第に海やダイビングに対しての想いが強くなりすぎたため、2021年にオーシャナに転職。ライターとして、全国各地の海へ取材に行く傍ら、フリーダイビングにゼロから挑戦。1年で日本代表となり世界選手権に出場。現在はスキンダイビングインストラクターとしてマリンアクティビティツアーやスキンダイビングレッスンを開催。
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