発起人に詳細を取材
「日本水中フォトコンテスト」 第2回開催の舞台裏
昨年スタートした「日本水中フォトコンテスト」(以下、JUPC)の締め切りが、1月10日に迫っている。
審査員は第一線で活躍する水中写真家6名、グランプリ賞金は50万円。手探り状態で開催した第1回を踏まえて、応募規定などに変更が加えられている。参加者が楽しめてダイビング業界全体が盛り上がる水中フォトコンテストを目指してよりよいかたちにしていきたいと協議が重ねられた結果だ。発起人で実行委員長である株式会社フィッシュアイ代表の大村謙二氏と、共同発起人で実行副委員長の株式会社エーオーアイ・ジャパン代表の久野義憲氏に第1回からの変更点と開催の意気込みを聞いた。
新たな審査員4名が参加
まず、第1回から審査員の顔ぶれが変更になっている。名誉顧問の中村征夫氏と審査委員長の高砂淳二氏は引き続き就任したが、審査員4名は新メンバー。阿部秀樹氏、中村卓哉氏、むらいさち氏、上出俊作氏を迎えた。
名誉顧問の中村征夫さん、審査委員長の高砂淳二さんは継続して務めていただきますが、審査員は、視点に偏りが出にくいようにキャリアが異なる水中写真家の方々4名に交代で担当いただく形を取っています。これは当初から決めていたことで、実行委員会で協議して、ベテラン、中堅、若手と毎回選ばせていただきます。
第3回の審査員もすでに決まっていて、授賞式で発表する予定です。4回目をやるならお願いしたいと思っている方は複数いらっしゃいますし、多くの方に関わっていただきたいからこそ、開催し続けたいとも思っています。
審査員6名は多いと思われるかもしれませんが、個人の好みで賞が決まってしまわないようにするためです。できるだけ作風が異なるようにお願いしています。
ちなみに中村征夫さんと中村卓哉さんは親子で審査員を務めるのは初めてだとおっしゃっていましたので、ある意味貴重な共演かもしれないですね。
1人あたりの応募点数が半数に
応募要項で大きく変わったのは応募点数だ。第1回では1人10点まで応募可能だったが、第2回は5点に絞られた。
理由はいくつかあるのですが、まず、1人の応募点数を抑えることで、一次審査を通過するチャンスが多くの方に生まれる、ということです。
第1回では、作品レベルが安定して高い方は応募点数が多い傾向にありました。こうした特定の撮影者の写真が数多く一次審査を通過することで、応募点数が少ない方の作品が一次審査さえ通過できなくなっていたのではないか。第1回の場合、約2500点の応募作品から6名の審査員にそれぞれ60点ずつ一次審査通過作品を選んでいただきましたが、この60点の中に特定の方の作品が多く入っていました。
一次審査を通過した作品は、最終審査のために実行委員会で六ツ切りプリントします。このプリントは審査終了後に希望する応募者の手元にお届けしていました。仮に入賞はできなくとも、どの作品が一次審査を通過したのか確認いただけますし、プリントを手にして「次こそ頑張ろう」というモチベーションに繋げていただけると思っています。
他のコンテストに応募中や応募予定の作品、さらに過去のフォトコンに入賞した作品や雑誌・写真集などに掲載された作品の応募は禁止しているので、応募したい作品が10点もないという方もけっこう多くいました。
応募点数を減らしてはどうかという声は、審査員からもありましたね。
一方で10作品から5作品に減らしたことで、応募点数全体が減ってしまうのではないかという危惧はあります。第1回では応募者が461人で応募点数が2,512点でしたが、5点までしたことで2,000点以下となる可能性がないわけではありません。点数が多ければいいというものではありませんが、応募作品数は減らないでほしい、という想いはあります。ドキドキしながら5点にしました。
第1回のときは「コロナ禍で思うように撮影ができてないから応募は次からにする」という方も多かったのは確かです。コロナが終息し、以前より潜りやすい状況になりました。海外に作品撮りに行った方もいらっしゃるでしょうし、そういう人たちがたくさん応募してきてくださることを願いましょう。
入賞数は大幅増!
応募点数は半減したが、逆に入賞点数は大幅に増えている。第1回では25だった賞が、第2回では34に。優秀賞が5点から6点に、入選は12点から20点になった。
これは、賞に値する作品が多く集まった、もっと多くの方に賞を差し上げたい、というシンプルな理由です。
第1回の審査では、「え! これが入賞できなかったのか」という作品がけっこうありました。そう感じたのは我々だけかと思っていたら、審査員の皆さんも感じられたようで、「最終審査に残したかったが、やむなく落とした作品が多かった」「次回は入賞点数を増やしてはどうか」というご意見が審査中からありました。
だからといって最終審査を通らなかった作品が上位に入賞できたかというと、そこには歴然と差がありましたね。たとえばグランプリを受賞した作品は一次審査の段階から全審査員に選ばれていました。審査員それぞれの考え方もあるので多少のばらつきはありましたが、上位受賞の作品に関しては、軒並み評価が重なりましたね。
審査前は、第1回はグランプリに該当する作品が出ない可能性があるかもしれないと思っていました。コロナ禍で思うように作品が撮れていないのではないか、第1回は様子見する方もいるのではないか。そうであれば無理やりグランプリを選ぶのはやめましょう、という暗黙の了解が我々の中にはあったんです。
しかし、蓋を開けてみるとすばらしい作品が数多くありました。ネット上で開催されているフォトコンテストの入賞作品は、作風や構図が似通っていると感じていたのですが、JUPCの応募作品は多様で、プロの写真家が見てもおもしろい作品が多かったようです。実際そうした作品が入賞していました。
応募作品のクオリティが非常に高かったということですよね。今年は海外で撮影した作品も増えるでしょうから、傾向もまた変わってくると思います。ますます楽しみです。
授賞式後には親睦会も予定
授賞式は第1回と同様に4月6日(土)に「マリンダイビングフェア2024」会場内特設ステージで行われる。ただし、開催時間はフェア終了後の18時から開場時間内の15時に変更になる。
授賞式は厳かな雰囲気で行いたいという想いがあり、第1回はフェア終了後に行いました。開催中だとゆっくり作品を鑑賞していただく環境がつくりにくいのではないか、という理由でした。
しかし、フェア期間は遠方からダイビングガイドさんたちが集まり、夜に馴染みのお客さまたちと懇親会を行うのが恒例化しています。終了後だと授賞式に出席できる方が限られてしまうんですね。第1回では、関係者の方に授賞式を優先していただいたのですが、お店の会にも出席したいという方も当然いらっしゃいます。そこで思い切って時間を変更することにしました。
終了後だと会場の関係で、授賞式を見学できる人数を制限しなくてはいけなかったのですが、今回はどなたでも見学可能です。多くの方に見て盛り上がっていただきたいです。
まだ確定ではありませんが、授賞式の後に、審査員と受賞者・関係者だけの懇親会を1時間程度行う予定です。過去に行われていた雑誌主催のフォトコンテストでは、授賞式後に審査員や業界関係者、そして受賞者で懇親会が行われていました。交流が深められる大切な機会でした。昨年は終了時間が遅かったこともあり行いませんでしたが、今回は1時間だけでも懇親会をやりたいと思っています。懇親会では、審査の様子などもモニターで上映する予定です。
入賞作品は雑誌企画として全国へ
第1回は入賞作品集を制作し、雑誌「DIVING TOUR 2023」の付録として全国の書店などで販売された。第2回も雑誌誌面での作品発表を予定している。
作品集については、第1回は雑誌付録となりましたが、第2回は復刊予定の雑誌『DIVING WORLD magazine』の企画として誌面発表することになりました。
作品集制作はJUPCのひとつの特徴ですが、やはり作品を「紙」で残したいという想いが強いですね。オンライン上(Web)だけで審査し発表する水中フォトコンも多いですが、私たちの世代は雑誌・紙面が欲しいんですよ。ある種のノスタルジーかもしれませんが(笑)。
モニター越しに見るのと、誌面として落ち着いてじっくり作品を眺めるのでは、インパクトも含めて楽しみ方が違います。我々はかつてのフォトコンテストのよさを再現したい。だから作品集という形にこだわっています。受け取る皆さんは、どのようなかたちで手に取ることができたらうれしいのか、考えを巡らせているところです。
発起人のお二人から皆さまへメッセージ
最後に応募を迷っている方、応募しようとしている方々へメッセージをいただいた。
まずは、とにかく応募してみてほしいです。とりあえず何でも出してみよう、というのは違うかもしれませんが、「すごく気に入ってる」という写真が自分の中に1点でもあったら応募してみてほしいです。応募することで、結果が発表になるまでの約2か月間は、普段得られないドキドキ感が得られると思います。「このドキドキのために応募費用を払おう!」というのがあってもいいと思うんですよね(笑)。さらに自分が応募することで、JUPC自体を主体的に見られるので、より楽しめるのではないかと思います。
第1回の入賞者を見ると、クオリティは非常に高かったです。しかし、応募者のほとんどが「がっつり水中写真をやっています」という方だったかというとそうでもなくて、水中写真はビギナーに近いという方からの応募も多くありました。
グランプリは水中写真のプロである6名が「これぞ」という作品に票を入れるので、偶然の受賞は起きにくいと思います。しかし、審査員賞は好みがはっきりと出る傾向にあります。ですからビギナーであっても、審査員の琴線に触れる何かが作品として表現できていたら入賞できるかもしれません。チャンスは案外どなたにでもあるはず。「自分なんて無理だ」と言わずに、ぜひチャレンジしてみてください。
▶︎昨年の受賞作品、授賞式の様子はこちら
▶︎第1回日本水中フォトコンテストの発起人・審査員へのインタビューはこちら(日本水中フォトコンテスト連載)
日本水中フォトコンテスト概要
応募期間:2023年11月1日(水)〜2024年1月10日(水)
発表:2024年4月6日(土)(東京・池袋サンシャインシティで開催される「マリンダイビングフェア2024」会場内特設ステージにて授賞式および懇親会を実施予定)
審査員(敬称略)
・名誉顧問:中村征夫(写真家)
・審査委員長:高砂淳二(自然写真家)
・審査員:阿部秀樹(写真家)、中村卓哉(水中写真家)、むらいさち(写真家)、上出俊作(水中写真家)
賞
・グランプリ:1点
・準グランプリ:1点
・審査員賞:6点
・優秀賞:6点
・入選:20点
*授賞は1人1賞(審査員賞との重複は除く)
副賞
・グランプリ:賞金50万円、賞状、トロフィー、記念品
・準グランプリ:賞金10万円、賞状、トロフィー、記念品
・審査員賞:賞状、トロフィー、記念品
・優秀賞:賞状、トロフィー、記念品
・入選:賞状、記念品
応募資格
アマチュアの方に限ります。プロの写真家はご応募いただけません。
・応募者の居住地は問いませんが、サポートは日本語のみです。
・応募者が未成年(18歳未満)の場合、保護者の承諾が必要です。
※プロの写真家とは、
-水中、陸上問わず、写真撮影、撮影された作品を販売することなどを生業とされておられる方
-自身が「写真家」と公にわかる形で自称し、活動しておられる方など
(ダイビングインストラクター・水中ガイドなどを生業とされておられても、上記に当てはまらない方は、ご応募いただけます)
対象作品
水中写真(半水面も含む)
・撮影地は、日本国内、海外、問いません。
・使用撮影機材の種類、メーカーは問いません。
・撮影年月日は問いません。
応募方法
「日本水中フォトコンテスト」公式サイトより、応募フォームに必要事項を入力して応募。
応募点数
1人、最大5点まで
応募費用
・1点につき1,000円(税込)。
・クレジット決済になります。
・決済後の返金はありません。
主催:日本水中写真コンテスト実行委員会
日本水中写真コンテスト実行委員会が新たにスタートする水中フォトコンテスト。より多くの方々に水中撮影を楽しみながら、受賞を目指し作品作りに励んで欲しいという想いから、日本を代表するフォトコンテストを目指し、企画された。