パプアニューギニア連載コラム「千変万化」
第五回
写真家・岡田裕介
40年に数度の悪海況でもパプアニューギニアがおもしろかったわけ
世界でもトップクラスの元気さを誇ると言われているサンゴ礁。
多くの水中写真家や海洋研究家が通う魅力溢れる海。
そんな前評判に期待に胸を膨らませながら、2013年9月上旬、パプアニューギニアのキンベ湾沿いのリゾート「ワリンディプランテーションリゾート」に向かいました。
しかし、結論から言うと、滞在中6日間14本のダイビングで、メインのサンゴ礁はおろか、キンベ湾名物のバラクーダ、ギンガメアジ、メジロザメなどの大物、パプアニューギニアに沈んでいる中でも最も保存状態が良いといわれているゼロ戦の撮影にも至りませんでした。
原因は強風による高波で、安全を考慮してポイントまで行く事が出来なかったためです。
わりと風が強い日が多く、海の状態はめまぐるしく変化する時期とはいわれていましたが、まさかこんなにも強風が続くなんて。
この地に住んで約40年のリゾートオーナーも過去に数回しか経験していないことだったとか…。
しかし、そこはキンベ湾。
波の影響で遠出ができなくても近場のリーフ添いや島影で潜る事は可能なのでダイビングがキャンセルになる事はありませんでした。
こんな状況だったので、潜るポイントは限られていましたが、イソバナや ウミウチワ、ムチヤギが生い茂る海中の森に何種類もの魚が密度濃く生きていて、生命に溢れていました。
また、パプアニューギニアの固有種など、魅力的なマクロ生物は満載。
しかも、なぜか警戒心が薄く、驚くほど寄ることができるので、これはこれで撮影が楽しくて楽しくて、遠征できなかったことも忘れるぐらいの満足感。
そんな海が今も残っている理由は、パプアニューギニアは人口密度が極端に低く、工場なども少ないので海に流れる排水も少ない。
また漁業も底引きやダイナマイトなど海にダメージを与えるものはほとんどないからだそうです。
こんな海は世界中を探してもなかなかありません。
また5mmのウエットスーツでかなり熱かった海の水温は平均で29.5°あるのですが、サンゴは白化は見られないそう。
過去に白化しかけた時もあったそうなのですが、2ヶ月ほどで復活したので、耐性があるのではないかと言われています。
※
ここキンベ湾でのガイド歴13年の屋本恵子さんは、もともと大物が好きでパラオやタヒチの海に通っていた時に、ブルーコーナーのような海があると聞いてやって来てすぐに好きになってしまったそう。
その大物ポイントの特徴は、流れが少なく、魚も浅い水深にいる事が多いので、体に負担が少なく、ビギナーからベテランまですべてのダイバーに適している海とのこと。
今回初めてパプアニューギニアに行くまでに持っていたイメージは、“ラストフロンティア”や“秘境”と称される大自然や多数の奇抜な伝統衣装を持つ勇ましそうな部族の人々、そして、今も数多く残る第2次世界大戦時中の戦跡など。
ゆっくり過ごすリゾートとは程遠く、ちょっとした冒険旅行のようで覚悟を決めて行くところだと思っていました。
しかし、そんな予想は良い方に覆され、リゾートは安心で快適でした。
ワインディプランテーションリゾートは広い敷地に独立型の12棟のコテージと一棟4室のプランテーションハウスの計16室が点在し、コテージの周りにはうっそうと木々が茂り、隠れ家的雰囲気でのんびり過ごすことができます。
また朝に出すと夕方には帰ってくる洗濯物は毎日無料で、ダイビングも殿様スタイルでセッティングなどは無用。
毎朝、ウエットスーツが完璧に乾いているのも嬉しい。
ストレスなく快適に過ごすのに最適な環境が整えられています。
そして何よりも大きかったのはホスピタリティと笑顔溢れるホテルやダイビングのスタッフたちの存在。
彼らと過ごした毎日は、最高に楽しかった。
海はバッドコンディションだったものの、これはこれで充実した旅となったが、帰国後、ベストのキンベの映像を見たら、関係者に「もう一度、パプアニューギニアで潜ります!」と思わず電話をかけてしまいました(笑)。
今、リベンジを果たすべく日程を調整中。
ハマりそうな予感のするパプアニューギニアの海。
今度はワイドレンズが活躍するよう願うばかりです。
■ベストコンディションのキンベ
※最後に、パプアニューギニアで安全にダイビングを楽しんで頂くために、パプアニューギニアダイビング協会では首都ポートモレスビーに減圧治療のチャンバーを保持しています。
その際DANなどのダイバー保険に加入することで高額な治療も押さえられますので、旅行の前にはダイバー保険に入る事を強くお勧めします。
岡田 裕介(おかだ ゆうすけ)
大学在学中にアジア及び日本を放浪。
東京綜合写真専門学校を中退後、フォトグラファー山本光男氏に師事。
2003年よりフリーランスフォトグラファーとして活動開始。
1年間の沖縄 石垣島移住を経て現在は東京を拠点に水中、生物、風景、人物と幅広い分野で写真活動を続けている。
Yusuke Okada
■パプアニューギニアへのツアーはこちらをご覧ください!
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