パプアニューギニア連載コラム「千変万化」
第7回
伯父の眠る海底へ~パプアニューギニアのもうひとつの顔~
近年、“ラストフロンティア”の海として注目度が増しているパプアニューギニア。
タンクを背負い、心躍らせながら海へエントリーしていくダイバーたちの中、平井義一さん(64歳)だけは、しんとした心に、こみ上げる熱いものを感じていた。
※
小さいころ、平井さんの憧れは伯父の丹野二夫さんだった。
だが、憧れの伯父に平井さんは一度も会ったことはない。
丹野さんは昭和18年7月13日、パプアニューギニアのラビにして戦死。
戦後生まれの平井さんと交わるはずもなかった。
しかし、母親から聞く伯父の話は平井少年の心をときめかせた。
もともと飛行機が好きだった平井さんにとって、軍用機の最高傑作のひとつと称賛される偵察機「100式司偵2型」にカメラマンとして乗っていた伯父は、子供心に誇らしく、以後、ずっと心に残る存在となった。
時は過ぎ、大人になった平井さんはダイビングが趣味となる。
パラオが気に入り通ったが、素晴らしい海と共に戦跡に興味が引かれた。
ペリリューの戦跡を見ながら伯父のことが思い出され、いつかパプアニューギニアに行ってみたいという思いを持つようになる。
そんなとき、ふと見つけたダイビング雑誌主催のパプアニューギニアツアー。
なんでも、ポートモレスビー付近を潜ると聞き、地図を見ると伯父が戦死したラビにも近そうで、「伯父が死んだところはどういう場所か?」「水中で伯父に会いたい」という思いで参加することを決意した。
実際はずっとリゾートの滞在だったのでラビに行くこともなく、潜るエリアも大分違う場所にあったが、パプアニューギニアの空気に触れられたことで十分満足だった。
ただ、戦闘機が眠るポイントがあると知り、たとえ伯父の乗っていた飛行機でなくても、その目で見て、祈りを捧げたいという思いもあった。
願いは叶い、戦闘機が沈むダイビングポイントで潜るチャンスが訪れたが、海底に眠るのは、皮肉なことにアメリカの軍用機。
しかし、ポイントマップで戦闘機の形を確認すると、子供のころ思いを馳せ、プラモデルまで作った、伯父の乗っていた100式司偵2型に形がよく似ていて、敵味方関係なく慰霊したいという思いになった。
エントリーすると、この日はかなり透明度が悪く、ガイドとはぐれないように気を付けながら潜っていくと、突然、目の前に戦闘機のプロペラが姿を現す。
すぐに着底し祈りを捧げ、その後、悪透明度で全貌がわからない船体をなめるようにして一周すると、ふとむき出しになったコックピットが視界に入ったのでのぞきこんでみる。
人がやっと1人座れそうな座席を見つめていると、急に人の感触が感じられ、「皆、こんな遠いところまでお国のために戦いに来て、こんな海の底に眠っているのか」としみじみ思うと同時に、感謝、感動といった感情がこみ上げてくるのだった。
「水中で直接慰霊ができて、ダイビングをやっていて良かったと思います」という平井さんは、いつかまたパプアニューギニアを訪れて、今度はゼロ戦をその目で見たいと思っている。
※
第二次世界大戦の激戦地として知られるパプアニューギニア。
ダイビングやバードウオッチング、文化など、レジャーや観光のために訪れる人が多い一方で、慰霊で訪れる人も少なくない。
慰霊巡拝 パプアニューギニア トラベルガイド
ダイビングで訪れるのであれば、明るい気持ちでただ海を楽しめばそれでいいと思うのだが、パプアニューギニアを始めとする太平洋各地はダイビングのメッカであると同時に、かつての激戦地で、戦跡を見る機会も多い。
同じ旅行でも、まったく違った景色を見ている人もいるということを知り、少し、歴史に思いを馳せることも有意義なことかもしれない。
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パプアニューギニア・アンバサダー鎌田多津丸さんのゼロ戦写真と文も紹介されています
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