パラサイト・ラヴァーズ連載エッセイ~寄生虫を追い求めるマニアック道~

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「寄生」も「共生」のうちである

屋久島ダイビングサービス「もりとうみ」の原崎と申します。
少しでもパラサイト(寄生虫)のイメージを良くすべく、日夜頑張っております!

「(相利)共生」という言葉にはどこか惹きつけられるものがあって、多くの人の共感を呼ぶ。

「イルカと人間の共生」とか「自然と共に生きる」とか、様々なシーンで好んで使われるイメージの良い言葉だ。
響きもいいから誰もが賛同するし、何しろ美しい。(笑)

それに対して一方だけが得をして他方は損をする「寄生」という言葉は、「(相利)共生」とは相対する言葉として扱われている傾向があって、あまり良いイメージを持たれないようだ。

さらには、語尾に「虫」をつけた「寄生虫」なんて、嫌われ者以外の何者でもない。(笑)

しかし、生態系全体や進化の過程からみると寄生も大切な共生関係の一形態だ。
生物は寄生や共生(相利、片利)、捕食や競争関係などの相互作用を通じて、必要とあらば進化する。(共進化)

そうやって自然は絶えず変化し、存在し続ける。
つまり生態系の中では、仲良くすることだけが共生ではなく、競争することも含め「共に生きている」という事なのだ。

まぁ、人間社会でもそうであるように、2つのものの関係に相互に利益だけを受ける綺麗で単純な関係など存在するわけはなく、そこには片方だけが得をしている(もしくは片方だけが損をしている)といった関係も必ず一緒にあって、そういう様々な関係の仕方が混在するのが「共生」なのではないかと思う。

「共生」とは異なる生物が密接に関わり合って生活する事のすべてを意味する。
つまり「寄生」も共生なのだ。

屋久島のニザダイと寄生虫(撮影:原崎森)

そもそも海の中で寄生された魚はよく見るものの、それによってその種が絶滅しそうだという例自体がほとんどない。

冬になると、目玉にメダマイカリムシという寄生虫をつけたトラギス類をよく見るようになるのだが、それによってトラギス類が少なくなるなどという事はないし、目の下辺りにニザダイヤドリムシという寄生虫をつけたニザダイをよく見かけるけど、それによってニザダイが少なくなるなどという事もない。

屋久島のニセタカサゴと寄生虫(撮影:原崎森)

ニセタカサゴという中層で群れる魚がいる。
屋久島ではだいたいどこのポイントでも通年見られ、数百から数千の群れをつくる。

屋久島で見られるこのニセタカサゴにはたいてい胸の辺りに大きな寄生虫がついている。
その割合はかなり高く、群れによっては8割方この寄生虫がついていたりするのだ。

それでも、このニセタカサゴは変わらず、毎日中層で群れ、数が減っていくことはない。。。
しかも、寄生虫をつけていても、みんな元気に泳いでいる。

投稿者プロフィール

屋久島ダイビングサービスもりとうみ・原崎森

原崎 森(はらざき しげる)

自然をガイドする仕事に憧れ、ダイビングのインストラクターとなる。
2004年4月、当初からの夢であった屋久島にて念願の独立を果たす。
1年365日カメラ片手に毎日海に入り、1年を通して屋久島の海とその四季を記録し続けている。

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