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パラサイト・ラヴァーズ連載エッセイ~寄生虫を追い求めるマニアック道~閲覧無制限

カテゴリ:楽しむ

「寄生虫は宿主を殺さない」は本当なのか?

みなさんこんにちは。
大好評連載「パラサイト・ラヴァーズ」今回担当させていただきます「きんすけ」と申します。

「パラサイト・ラヴァーズ」には著名なカリスマガイドが多数在籍しておりますが、私は生物好きのただの素人、週末ダイバーなので、幸いなことにお店の評判とか集客を一切気にする必要がありません。
あるとしたら、「あ、あの人、寄生虫好きの人よ(ひそひそ)」と後ろ指を指される程度でしょう。

ですので、今回はガイド業の方が書きにくい寄生虫の暗黒面(笑)について触れたいと思います。
素人丸出しの駄文と妄想ですが、よかったら最後までお付き合いください。

パラサイト写真展ではマリングが飲食店ということで抑えましたが、今回の写真はグロ注意です。

寄生虫と宿主にまつわる「通説」

寄生虫について語られる時(どんな時だそれは)、よく出てくる所謂「通説」があります。
「寄生虫は宿主(しゅくしゅ:寄生されている側の生物)を殺さない」というものです。

「宿主を殺してしまうと寄生虫自身も死んでしまうから」というのがその「通説」の根拠とされています。
みなさんもどこかでお聞きになったことありませんか?

なるほど、もっともらしい説です。
また、寄生された宿主を見てかわいそうと感じた方も、こう言われるとすこし救われたような気になりますね。
「ああ、よかった、宿主は殺されないのか」と。

でも、空気の読めない私は言います。
「ほんとにそうですか?」
私はこの「通説」に疑問を抱いているのです。

そこで今回、反証を試みることにしました。

宿主は痩せ細り病的な外見へ

フィールドで観察していると、痩せ細って今にも死にそうな宿主を見ることがあります。
また、その宿主がいつの間にかいなくなることがあります。

宿主は寄生虫に奪われる以上にエネルギーを得ているうちは健康を維持できているのですが、そのバランスが崩れると弱り始めると考えられます。

そのきっかけは十分な餌を得られなかったり、加齢による衰えであったり、その他体調不良、新しい寄生虫の付着等々、様々な要因が推測できます。

弱り始めた宿主は痩せ細り、頭だけ大きく病的な外見になります。

寄生虫とタテジマヘビギンポ

左:ウオノエに寄生されたタテジマヘビギンポ(撮影:平川猛)右:健康体

これは時間の経過とともに進行していきますので、とても寄生虫が宿主に手加減しているとは思えません。

宿主を殺さず寄生し続けるのには高度な能力が必要

一方、そもそも宿主を殺さず寄生し続ける為には、寄生虫が高度な能力を持たないと実現不可能なのではないでしょうか?

例えば同じ宿主に二匹の寄生虫が寄生していた場合、寄生虫Aが宿主を殺さない為に宿主の体液を吸うのをやめたとき、同じタイミングで寄生虫Bもやめる必要があります。

ニザダイヤドリムシに寄生されたナンヨウハギ

複数のニザダイヤドリムシに寄生されたナンヨウハギ

こんな事が本当に起きているのでしょうか?

これを実現するには、彼ら(寄生虫)が仲間との意思疎通が可能なコミュニケーション能力と、宿主の健康状態を知り得る能力を持っている必要があります。
彼らにそんな高度な能力が備わっているのでしょうか?

もちろん可能性は否定できませんが、限られた資源(宿主のエネルギー)を寄生虫の中で常に奪い合っていると考えたほうが妥当なのではないでしょうか?

「自己」が消滅するデメリットよりも「子孫」を多く残せるメリット

次に「宿主を殺してしまうと寄生虫自身も死んでしまうから」が、その「通説」の根拠たり得るのかを考えてみます。

まず自力で動けるニザダイヤドリムシなどは新しい宿主に移るだけなので根拠になりません(次の宿主が見つからないというリスクはありますが)。
では自力で動けない種類の寄生虫はどうでしょうか?

確かに動けない種が宿主を殺してしまうのは自分自身の首を絞めることになるでしょう、しかし生物の生きる目的は自分自身の寿命を延ばすことだけでしょうか?

彼らは頻繁に産卵しているようです。
メダマイカリムシやコペポーダなどは卵を持っていない個体を探すのが難しいくらいです。

左:メダマイカリムシ、→:コペポーダ

左:メダマイカリムシ、→:コペポーダ

生物の生きる目的は考え方によって多々あると思いますが、自分の子孫を残すことは重要な目的の一つと考えて間違いないでしょう。
つまり宿主から奪ったエネルギーを使い出来るだけ産卵を繰り返し、子孫を多く残せていれば、たとえそれで自分の命が短くなっても、自己のDNAの保存、拡散という目的は果たしていると言えないでしょうか?

細々と自分の寿命を延ばすより、より多くの子孫を残した方が生物の戦略としては正しいように思えます。

「寄生虫は宿主を殺さない」は本当なのか?

  • 1.フィールドで観察する限り、寄生虫が宿主に対して手加減をしている様子が感じられない。
  • 2.宿主を殺さずに長く寄生するためには、寄生虫間でのコミュニケーション能力や宿主の健康状態を知り得る能力が必要となるが、現時点でそれがあるとは思えない。つまり現実的に無理である。
  • 3.宿主を殺してしまうことで寄生虫自身も死んでしまうことがあるが、それまでに子孫を残せていれば、自己のDNAの保存、拡散という目的は果たしていると言える。

上記より「寄生虫は宿主を殺さない、宿主を殺してしまうと寄生虫自身も死んでしまうから」は成り立たないとし、「寄生虫は宿主のエネルギーを奪い過ぎて宿主を殺し、そのために自分も死んでしまうことがある。しかし、死ぬまでに産卵を繰返し、自己のDNAの保存、拡散を行う」という仮説を立ててみました。

今後も素人ながらフィールド観察を重ね、この仮説を証明していきたいと思います。

さて、この仮説が正しいとなると、寄生虫は宿主に一片の情け容赦をかけることなく、死ぬまで寄生し、卵を産み、子孫を残しているということになります。

宿主がかわいそうですか?
そうですね、私もそう思います。
痩せ細った魚を見ると心が痛みます。

しかし私は宿主に同情するのと同時に、この小さな生き物の「情け容赦無い生き様」に暴力的なむきだしの野性を感じ、単純確実な戦略に驚き、生命の逞しさに「すごいな~」と素直に感心するのでした。

アミの仲間?に寄生するエビヤドリムシ

体長5mmのアミの仲間?にまで寄生するエビヤドリムシと思われる個体

最後まで読んで頂いてありがとうございました!^^
貴重な機会を与えてくださったオーシャナさん、ありがとうございました。

Profile

「きんすけ」
1968生れの水瓶座。
九州の港町で育ち、幼少の頃より素潜りで海に親しむ。
社会人になりスクーバを始め「なんて楽に写真が撮れるんだ!」と感動、以後はまる。
写真の腕はフォトコンでたまに入賞する程度のレベルなのに、ダイバーの集まる店「琉球酒房菜酒家FU-KU」にて今年の二月に写真展を開催。
それなりに受けたことで以後勘違い中。
ブログでダイビングのログを公開しています。
マメマクラの記憶2

FaceBookやってます。
「きんすけ」で検索すると出てくるそうです。

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