パラサイト・ラヴァーズ連載エッセイ~寄生虫を追い求めるマニアック道~
蟲くんとの出会い
「虫」とは書かず、あえて昔使っていた「蟲」を使いたくなる不思議な生き物に出会いました。
あっ、正しくは出会っていたですね。
2005年の夏、ナズマドでガイド中にイバラカンザシに囲まれたタテジマヘビギンポを見つけ、「おー!これはフォトジェニックな写真が撮れる」と思い、さっそく撮影に向かいました。
撮っている最中はまったく気が付かなかったのですが、現像が上がり(その当時は銀塩カメラ)、ルーペで写真を一枚一枚確認していくと、何かとても違和感のある写真になっていることに気が付きました。
そうです。口の中に黒い点が二つあり、目のようにこちらを覗いているのが、すべてのカットに写っているのです。
最初は何かくわえているのかなぁ~と思い拡大して見るも、そうではないようです。
ではきっとタテジマヘビギンポは、口の中に模様があるんだと思い、他の個体を確認してみたのですが、そんな模様はありません。
もちろん心霊写真のわけがなく、誰に聞いても分からず仕舞いとなってしまったので、お札を貼って封印することにしたのです。(笑)
その封印は解けることなくカメラは銀塩からデジタルに移行し、フィルムも買う必要ないし、何といっても撮った画像がその場で確認できて、パソコンで大きくして編集できるという画期的な変化に感動し、撮影か楽しくてしょうがない頃でした。
2007年の1月、この時はハマっていたのがシズミイソコケギンポです。
実はこの種類はシズミイソコケギンポではなく、もしかしたら別の種類になる可能性があると聞かされ、それだったら八重根の子たちをみんな撮って、その色彩の変異がどこまであるか調べることにしたのです。
その最中、一匹の子の口の中に、違和感を覚えたあの黒い目のようなものが見えました。
フィルムだったら現像に出して1週間後の確認となるんだけど、デジタルだからその場で画像を拡大して確認できます。
そしてその拡大された口の中に、あれがいたんです、あれ・・・。
口の中で体液を吸うウオノエという寄生虫です。
まぁその当時のダイバーは、この寄生虫はあまり知られていなかったようで、精々タイノエくらいが一部の釣り人に知られている程度でした。
実際私も、イシガキフグやブダイの口の中に入る大きなウオノエの仲間は知っていましたが、さすがに体長8cmのシズミイソコケギンポの近似種の1cmに満たない口の中に、こんなに小さなウオノエの仲間がいたなんて、本当に衝撃的な出来事でした。
思い起こせば数年前のタテジマヘビギンポ事件、これもさらに小さなウオノエの仲間が、口の中に入っていたんです。
封印っていうのはある日突然解けるものなんですね。
ちなみにウオノエの仲間の研究は進んでいないようで、種類やその宿主の組み合わせは分かっていない事の方が多いようです。
今この分野をやったら第一人者になれるチャンスです。是非手を上げてください。
但しホルマリン漬けとなったウオノエと宿主に囲まれた生活をする勇気がある人だけに限られますけど。
それとうわさですが、実はウオノエは宇宙人で、人間を操縦する前に、いろいろな種類の魚を操縦する練習をしているそうなんです。
うまくいけば、次は人間です。
ホルマリン漬けになるのはもしかして・・・。
おー、こわっ!
寄稿:レグルスダイビング・加藤昌一