「意地でも見せる」キャプテンの心意気。カンクン沖バショウカジキスイムweek4、初日からバショウカジキ

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昨日までで、week4の前半の2日間が終了した。
風が良いせいなのか、ヨープレートを毎朝飲んでいるからなのか、2日間ともバショウカジキの群れに遭遇することができた。

初日からバショウカジキの群れに遭遇できると、精神的にはとても楽になる。
しかし、連日激しく泳いだので体力的な疲労は蓄積される。

カンクン沖でのバショウカジキスイム(撮影:越智隆治)

week3とweek4の間でセノーテに行った日、コンディションも良く、バショウカジキも出ていたと聞いていた。
だから、風が北方向に変ってからは、これで5日間連続で確認されたことになる。

しかし、week4の初日もコンディションが良くて、島から一番近いエリアにグンカンドリたちの姿が多く見られた。
しかし、こういうコンディションの場合は、特にこのエリアには、ムヘーレス島からだけでなく、カンクンからもフィッシングボートやスイムのボートが多くやってくる。

キャプテンのロヘリオは、船で混み合う南は避けて北へと船を進めた。
北でグンカンドリを見つけられれば、他の船に邪魔されることなく、スイムをすることができる。
南に戻るのは、船が少なくなる午後遅くなってからでも良いという判断だ。
しかし、この日の北のエリアは、いつにも増して透明度が悪く、船の上から見ても水中の状況はわかるような感じだった。

それに、グンカンドリも見当たらない。
早々に見切りを着けて南に戻る。
しかし、すでに、そこには、30隻近くのフィッシングボートがいて、鳥山が立つと一斉にその鳥山めがけて船が集まって、バショウカジキ狙いのフィッシングが始まってしまう。

鳥山はどこで立ち上がるかわからない。
タイミング良くその近くにいれればいいのだけど、フィッシングボートの側で立ち上がると、当然そのボートや他のフィッシングボートが優先する。
目の前で5〜6隻、多いときには、10隻ほどの船が入り乱れてグンカンドリの群れをかき分けるようにフィッシングを行なう。
その下には、イワシの群れと、それを追い込むバショウカジキの群れがいる。

フィッシングボートがそれぞれ、釣り上げたいバショウカジキをヒットさせて満足するまでは、こちらは、順番を待たないといけない。
しかし、多くの場合、何隻もの船がグンカンドリの群れをかき分けていくうちに、鳥山はちりぢりになり、海中でもおそらくバショウカジキもイワシを放棄して、ばらばらになって、イワシたちは絶体絶命の危機から逃れて、海底へと逃げ延びているのだ。

わかってはいることだけど、目の前で、上空高く飛び去って行くグンカンドリたちを見るのは、悔しい。
この日はそんな状況に何度か遭遇した。

そんな時ロヘリオが、「ちょっと北の方でマンタがいるらしいけど行くか?」と聞いてきた。
しかし、この週のゲストたちは、西表でガイド経験のある女性だったり、タイや、パラオ、モルジブなどに良く行く人たちだったりして、マンタは見慣れていると判断。
「いや、いいよ。それより初日だからバショウカジキ優先しよう」と伝える。

しかし、なかなかタイミング良く鳥山が見つからなかった。
そんなとき、マンタの側にいたボートから「鳥山が立った」と連絡が入った。
それなら、とその場に急行したが、すでに鳥山は散った後だった。

せっかく近くまで来たのだから、とマンタと泳ぐことにした。
マンタは、このエリアでは、北と南の潮がぶつかる、潮目のラインに沿ってみられるのだそうだ。
そこにたまるプランクトンなどを捕食しているという。

エントリーしてみると、透明度の悪い海の中で、巨大なマンタ(オニイトマキエイ)が、無数のイワシを従えて、激しく捕食を行なっていた。
しかも、数は5匹程を確認した。

カンクン沖でのマンタの捕食(撮影:越智隆治)

潮目なので、プランクトンも豊富かもしれないが、透明度もめちゃくちゃ悪く、その他の浮遊物やゴミなども多くて、撮影には苦労した。
それにしても、イワシを従える巨大なマンタの姿は圧巻だった。

イワシを食べ尽くすバショウカジキ、そんなイワシを守る、守護神のごとく巨大なマンタ、弱肉強食と共生の姿を、この海で目の当たりにした。

マンタ撮影が終了して、また鳥山を探してゆっくり南に戻る。
先ほどより少し船の数は減った。
しかし、すでに時間は午後3時近くになっていた。
普通なら港に戻り始める時間だ。
どうしよう、こんなコンディションで、鳥山も立っているのに、見せてあげれないのは悔しいな。
そう思っていたのは、自分だけではなくて、キャプテンのロヘリオも同じように強く思っていたことだった。

「どうする?」と訪ねる僕に「まだ探す」とだけ答えるロヘリオ。
その言葉を受けて、双眼鏡を手に前方を眺める。
そこに鳥山が立った。
前方、肉眼では確認できない距離ではあったけど、その事をロへリオに告げると、双眼鏡を受け取ったロヘリオも頷いて、船のスピードを上げた。

近くに他のフィッシングボートがいたが、どうやらすでに釣り終わって、満足していたらしく、ロヘリオが無線で確認すると、泳いでいいとの連絡を受ける。
その船に手を振って、皆にエントリーを促す。

最初は移動を続けていたバショウカジキ約40匹の群れも、長く追跡しているうちに、皆も付いて来れるくらいのスピードに変った。
全員が初日から止まってバショウカジキの捕食シーンを見ることができた。
泳いだ時間は40分ちょっと。
ゲストの皆も初日から止まってみれて、大いに喜んでいた。

カンクン沖でのバショウカジキスイム(撮影:越智隆治)

港に凱旋したのは、午後5時過ぎ。
朝6時過ぎに出港しているので、約11時間。
その日の夜は、釣り上げた魚を、港の前のレストランでセビーチェとフィッシュアンドチップスにしてもらい、祝杯を上げた。

これで、16日間で10日間の遭遇。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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