カンクン沖バショウカジキスイムweek4、運の良い遭遇が続いた2日目&3日目

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メキシコのバショウカジキスイム(撮影:越智隆治)

week4の2日目も天気は良く、風向きも良好。
昨日程では無いけど、波も高くはない。

しかし、一つだけ問題が・・・。
北のエリアの透明度だ。

この日も北に行こうとしていたロヘリオに、「自分もこういうコンディションの日は、南は船も多いし、北の方が良いと思うのだけど、昨日の北の透明度の悪さを考えると、今日は船が多くても南にいた方がいいかもよ」と伝える。

トンガでもそうなのだけど、透明度の高いエリアとそうでないエリアがある。
スキッパーは海中には入らないので、状況がわからない。
だから、海中の状況を伝えて、捜索エリアを変更するというのは、良くあることだ。

ロヘリオもなるほどと思ったのだろう。
「じゃあ、南で釣りでもしながら、鳥山が立つのを待つか」と同意してくれた。
北の情報は、同じ会社のフィッシングボートからの無線連絡を待つことにした。

しかし、この日も午前中は何事も起こらないで過ぎた。
北でも何も見れていないとの無線。
たまに鳥山が立ち、急行するが、到着直前に散ってしまったり、多くのフィッシングボートが、フィッシュオンを狙って鳥山に集まってきて、あっという間に鳥山が崩れてしまったりしていた。

グンカンドリの数は多い。
しかし、そのほとんどが、カツオの捕食に群がっていた。
何日か前のように、その中にグンカンドリの鳥山が紛れていないか確認を続けるが、それらしき鳥山は見つからなかった。

釣りをしながら、どんどんと時間が過ぎていく。
最初は起きていた皆も、酔い止めによる睡魔に勝てず、睡眠を始めていた。

ずっと探し続けていたけど、見つからず、時間は2時を過ぎた。
ロヘリオに、「あと30分だけ探して見つからなかったら帰ろう」と告げると、今日は望みも無さそうに感じたのか、昨日見せれているからか、「了解。じゃあ、ゆっくり帰りながら何かあることに期待しよう」と言って、船をムヘーレス島に向けた。
皆にも、「30分探していなかったら、帰りますね」と告げた。
その時点でウエットスーツを脱ぎ始めた人もいた。

しかし、ロヘリオは双眼鏡での捜索は続けていた。
僕はリラックスしてイヤホンして音楽を聞いていたら、しばらくして突如スピードを上げた。
一気に帰るのかと思ったら、僕に双眼鏡を渡して、「鳥山だ、前を見てみろ」という。
覗くと、かなり先にグンカンドリの鳥山が立っていた。
それに他に船もいない。
まだ当分先だけど、皆に「すみません、準備して下さい」と告げる。

同時に、北に行っていた同じ会社の船から、鳥山が立ったからこっちに来いという無線連絡が入った。
しかし、ロヘリオは、「こちらでも鳥山が立ったから、こっちのにトライする」旨を告げて、船のスピードをさらに上げた。

(どうか飛び立ちませんように)僕はそう念じながら、カメラを用意し、フィンに足を通し、マスクを被る。
近くに来ると鳥山の下にイルカの背びれが見えた。皆が一様に落胆する。
ロヘリオも悔しそうな顔をしていた。
しかし、これまでの経験から、水中に入ると、イルカとバショウカジキが一緒に捕食している事も何度かあったので、ロヘリオに「チェックするから」と言って、鳥山に寄せてもらい、一人でエントリー。

海中にはイルカの鳴き声が響き渡っていた。
自分には、バハマでおなじみのタイセイヨウマダライルカたちだ。
しかし、ここの子たちは、愛想が無くて、近よって来ない。
蜘蛛の子散らすように、泳ぎ去っていく。

その後ろに、バショウカジキの群れを確認した。
イワシの群れは大きく、止まる感じは無い。
イルカが水面近くにいるためか、バショウカジキたちは、その少し下を泳いでいて、船上からでは確認できなかったわけだ。

船に戻り、「セールフィッシュいるよ!15〜20匹くらい」と告げて、皆でエントリー。
イワシもバショウカジキも泳ぎ続けていたので、ゆっくり見るという感じではなかったけど、40分ほど一緒に泳ぎ、2日連続の遭遇。

最後のスイムを終了して、鳥山を後にした瞬間に、グンカンドリたちが、空に散り始めた。
本当に運の良いタイミングだった。港に引き返したのは、午後の4時。

それにしても、島から8マイルしか離れていないエリアで遭遇とは本当にラッキーだった。

3日目は、海も荒れ始め、まったく青空の見えない曇天で、時に雨も降り続けた。
昨日鳥山を発見したエリアで、捜索することにした。

鳥は沢山いるのだけど、みな散っている。
カツオの鳥山かなと思ったら、ロヘリオが「キングフィッシュ(サワラの一種)だ」と言って、クルーのウァンにトローリングするように促す。
そして、釣れたのは、確かにキングフィッシュ。

どうしてわかるんだ?と疑問に思い、訪ねると、「カツオの場合は、捕食のときに、水しぶきが上がるだろ。でも、この鳥山の下では、まったく上がらない。キングフィッシュは水しぶき上げないけど、たまに、イワシを捕食したキングフィッシュが、水上にジャンプするのが見えるんだよ」と教えてくれた。
なるほど、確かに水しぶきはまったく見えなかった。

怪しいけど、バショウカジキのっぽい鳥山にチェックでエントリーしてみるが、イワシしか見当たらなかった。
しかも玉になっていなくて、捕食のために、バラバラな状態。

船はゆっくりと北へ。
しかし、無線を聞いていたロヘリオが急遽南へと猛スピードで戻り始めた。
フィッシングボート同士の無線のやり取りで、キングフィッシュを釣ったエリアで鳥山が立ったというのを確認したからだ。

現場に急行。
すでに6隻ほどのフィッシングボートとカンクンからのスイムボートが一隻。

状況確認すると、そのスイムボートのゲストに、15分間だけ譲ってくれているとのこと。
こちらもその後に入れ替えで15分だけ許可をもらい、入れてもらうことにした。
イワシの群れは十分に小さく、15分と短いながら、皆止まって、バショウカジキの捕食シーンを見ることができた。

メキシコのバショウカジキスイム(撮影:越智隆治)

この日は、その後も雨が降り続き、何も見れないまま、1時に帰路についた。
ロヘリオが、「こういう日はなかなか見つからないんだよ」と笑った。

それがわかっていたから、普段なら、午前中から他の船に譲ってもらうなんてあまりしないのに、この日は、譲ってもらう判断をしたわけだ。
ロヘリオの好判断のおかげで、3日間、連続で皆水中でバショウカジキを見ることができた。

これで、18日間(海に出たのは17日間)でバショウカジキに遭遇したのは、12日間。

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PROFILE
慶応大学文学部人間関係学科卒業。
産経新聞写真報道局(同紙潜水取材班に所属)を経てフリーのフォトグラファー&ライターに。
以降、南の島や暖かい海などを中心に、自然環境をテーマに取材を続けている。
与那国島の海底遺跡、バハマ・ビミニ島の海に沈むアトランティス・ロード、核実験でビキニ環礁に沈められた戦艦長門、南オーストラリア でのホオジロザメ取材などの水中取材経験もある。
ダイビング経験本数5500本以上。
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