セブ島のダイビングサービス独自の安全対策「スナイパー」とは?
今回、フィリピン・セブ島のダイビングサービス、ブルーコーラルでフォトツアーと取材を一度に行った。
毎回取材に来ていて、感心していた事が一つある。
それは、ブルーコーラルのちょっと変わった安全対策だ。
それはどんな事かと言うと、「スナイパー」の存在。
「スナイパー」って何?
直訳すると、「狙撃兵」。
どんな物なのか、ちょっと想像し難い。
このスナイパーという呼び方も、ブルーコーラルのフィリピン人スタッフが、かっこいいからと言うことで自らをそう呼んでいるだけなので、ダイビング業界で浸透している用語というわけでもない。
で、スナイパーとは何かと言うと、ダイビング中に常にそのダイビンググループの上の海面で、浮き輪を持ってフォローして泳いで付いて来ている、フィリピン人クルーの事。
ドリフトダイビングで潜っていて、もしエアが切れてしまったダイバーがいたら、浮上して彼と一緒にボートがピックアップしに来てくれるのを待つ。
ボート上からは、常にスナイパーがどこを泳いでいるかを確認しているので、何かあった場合には、すぐに船を動かせるようにしている。
何故そんな事をするかと言うと、セブのダイビングボートのほとんどが、バンカーボートと呼ばれる、アウトリガータイプ。
このボート、小回りが効かず、かなり幅も取るので、多くのダイバーが潜っているダイブサイトで、ダイバーの吐き出すエアを目印に移動しながらダイバーをフォローすることが困難。
しかも、バンカーボートが一つのポイントに多量に停泊していると、どこに自分たちのグループが潜っているのかを確認するのはかなり大変だ。
浮上しても、他のボートが邪魔で見えない事も。
その点、スナイパーが泳いでいれば、すぐにどこに自分のゲストが潜っているかを確認できるというわけ。
アシスタントダイバーが大きなフロートを持って潜ればいいのではと思う人もいるかもしれないが、バンカーボートが行き来しているポイントでは、ボートに絡まってしまう可能性だってある。
ビギナー向けのどんなに穏やかなポイントであろうが、逆に海が荒れている時であろうが、このスナイパーは、海面からしっかりとダイバーを確認してくれている。
今回も、フォトツアー中にバリカサグのギンガメアジの群れを撮影中、流れもあり、潮の流れを行ったり来たりする群れの移動についていくタイミングを逃した2名のダイバーが戻ることができずに潮に流されて、グループ本隊から離れてしまった。
しかし、この時は、過去にも同じポイントで何度もフォトツアーを行なった経験から、スナイパーも数名泳がせていたために、一人のスナイパーが本隊から離れて、離れてしまったダイバーと一緒に海面を移動し、ボートとスナイパーだけでなく、スナイパー同士でも確認を取り合っていた。
二人が見当たらないので、ガイドが海面にいる本隊付きのスナイパーに確認すると、「二人で向うにいる」という合図。
それを確認したガイドの一名が、2人が流された方へと向かい、すぐに合流した。
本隊グループの方には、別のガイドがいたので、そのままギンガメアジの群れの撮影を続け、最終的に両グループが合流して、そこにボートがピックアップに来てくれた。
後で、はぐれたダイバー二人にお話を伺った。
一人は、ダイビング経験3年弱の女性ダイバー。
もう一人は、ダイブマスターでもあるベテラン男性ダイバー。
ダイビング経験3年弱の方は、エントリー前のブリーフィングでガイドがスナイパーの存在を説明していたのだけど、はぐれてしまった事で不安になり、その存在を忘れていたのか、ブリーフィングの説明を聞き逃していたのか、「初めてロストして少し不安で、撮影を中止して浮上しようかとも思いました」と話していた。
一方、ダイブマスターの方は、「はぐれたけど、上に(スナイパーが)いたのに気づいていたので、一緒にいた女性ダイバーをフォローしながら、ガイドが合流するまでも、安心してそのまま自分でカメなどの被写体を見つけて撮影していました」と、一緒に流されていても、ダイビング経験によって感じ方も違っていた。
マクロではなく、ワイドな被写体をテーマにしたフォトツアーだけに、一カ所に留まる事が無いため、こういう状況が起こりえる。
だからこそ、ブルーコーラルとしては、「スナイパー」を普段より多く出して、ダイバーを海面から見守っていたというわけだ。
時には写真のように、スナイパーが撮影の邪魔(?)になっちゃうこともあるけど、安心してワイド撮影を楽しむために、頑張ってくれていたスナイパーとボートクルーたちには、とても感謝しています。
今度来るときは、日本の美味しいお菓子でも持ってこよう。